魔族と組んで異世界無双 2

夜夢

文字の大きさ
5 / 39
第1章 始まりの章

05 集落の問題点

しおりを挟む
    一先ず、問題点を聞いた枢はラピスの家に向かっていた。

「長もかなりの無茶を言いましたね。聞く必要は無いと思いますよ?」

「いや、殆どは解決出来る自信がある。」

「へ?」

    枢が聞いた問題点、それは…。

①集落の安全確保
②集落の快適度向上
③安定した素材確保
④少子化問題解決

    …だった。

「集落と素材に関しては何ら問題は無い。ただなぁ、少子化問題解決って…どうすりゃ良いのやら。」

「随分簡単にまぁ…。本当に何とかなりますの?」

「お、信じちゃいないな?宜しい、力を見せてやろうじゃないか。ラピスは家で待っててくれ。夕方には帰るからさ。」

「いえ、見せて貰いますわ。気になりますもの。」

「ん~?まぁ…大丈夫かな。じゃあ…先ずは新しい集落を作る事から始めますかね。」

「え?あ、ちょっと?」

    枢は一旦集落を出て森を見渡した。

「さて、始めるか。ラピスは集落の入り口で見ててな。行くぜっ!!はぁぁぁぁぁぁっ!!!」

    枢は集落の前に広がる森を一瞬で切り開き、大地を魔法で平らに均す。

「え?も、森が一瞬で!?ゆ、夢!?」

「広さはこんなもんか。さて、次はと…。」

    枢は地面に手を当て水脈を探る。

「見つけた!はぁっ!!」

    土魔法で地面を水脈まで掘り進め、泉を作りあげた。その後、泉を中心に用水路を作り、地下に戻る仕組みを作りあげた。

「み、水場が出来ちゃった…は、はは。」

「次は家だな。集落にあったのは10世帯だったか。ほいほいほいっと。」

    枢は物質創造で家を10軒作り出す。勿論、日本のスタンダードな一軒家だ。そして空いた土地に畑を作り野菜の種を蒔いた。畑の土に成長速度を上げる効果を付与し、凡そ10日で収穫出来る様にした。

「あ、新しい集落が…ど、どんどん…。」

    やがて、集落の人々がどんどん集まって来て見学していた。

「ラピスさん、彼は何を?」

「分からないわ…。ただ、長に言われて集落の問題を解決してるとしか…。」

    枢の町作りは佳境を迎えている。

「最後に…魔物避けの外壁を建ててっと…。」

    集落を囲む外壁が出来上がった。

「よし、完成だ。」

「「「「おぉぉぉぉぉぉぉっ!!?」」」」

    パチパチパチパチパチパチ…。

    拍手と歓声が上がった。

「お母さん!」

「あ、ポプリ。」

「な、何あれ!?」

「さぁ…。幻かしらね。あは、あははは。」

    ラピスは今一夢か現実か分かっていない様子だった。

「幻じゃねぇぞ?今日からあれが新しい集落だ。そっちの魔族も!好きな家を使ってくれ!」

「ま、マジで?」

「お、あんたは門の所に居た…。」

「ああ、【ダレン】だ。お前、どうなってんのコレ。何をした!?訳が分からない内に新しい集落が出来ちまったぞ!?」

    枢はダレンに言った。

「長との約束でな、この地に魔族の楽園を作ろうと思ってたんだよ。で、出された条件を解決してたんだ。」

    そこに長がやってきた。

「ほっほ、やはりの。主に任せて良かったわい。」

「来たのか、丁度良い。見てくれ。長の言った条件の3つを解決したぞ?」

「うむ!見事じゃ。見んでも分かるわ。枢、主に長の座を譲るぞ。して、最後の条件は解決出来そうかの?」

    枢はそれを一番悩んでいた。

「…直ぐには無理だ。安心して暮らせる環境は整った。後は住人次第じゃないかな?」

    ダレンが枢に話し掛けた。

「長になるのかアンタ。で、最後の条件って?」

「少子化問題だとよ。」

「「「「少子化問題?」」」」

    集落の住人が揃って頭を傾げた。

「そうじゃ。我ら魔族がその数を減らし続けて最早数百年…、今や魔族は絶滅の危機に瀕しておる。絶滅を防ぐ為にも何とか数を増やしていかなければならんのじゃ!ダレン、お前も早く子を作らんか!いつまで独り身でいるつもりじゃ!」

「げっ。だ、だってよぉ。」

「回りはこんな独り身の女ばかりじゃと言うのに…。だらしないぞ!男なら張り切らんかい!」

「む、無理無理!見ろ!このヒョロイ身体を!一角兎を何とか狩るのが精一杯だ!こんなんじゃ嫁も来ねぇよ!」

    集落の女達はうんうんと頷いていた。

「と、言う訳じゃ枢殿。ここは1つ頼みましたぞ?」

「何をだよ!?」

「えぇい!何が不満なのじゃ!皆を見ろ!プリプリでピチピチじゃ!今が旬じゃぞ!?」

    枢は住人を見る。男はダレンと長のみ。他は若い?女だけであった。ラピスが見かねて長に言った。

「長、無理強いは良くありませんわ。」

「ならラピス!お主が先ず孕まんかい。病は治ったのじゃろ?」

「な、ななな何を言って!?子供も居るんですよ!?」

「お母さん、枢さんと結婚するの?良いよ?昨日も一緒に寝たみたいだし?」

「ポプリ!?」

    それを聞いてダレンががくんと崩れ落ちていた。

「うっ、ちくしょぉぉぉぉぉ…。」

    どうやら惚れていたらしい。可哀想な事をしたな。

「じゃあラピスさんが最初として、次誰いく?」

「あ、次私でも良い?彼…格好良くない?」

    枢はラピスに話し掛けた。

「なぁ、ラピス。」

「は、ははははいっ?な、なにか?」

「お前はさ、嫁が複数いても大丈夫派?」

「え?何を言ってるのですか?生活力がある男性が複数嫁を娶るのは当たり前では無いですか。立派な男性は沢山の女性を幸せにする義務があります。逆に結婚出来ない男性は問題ありと思われ、敬遠されますね。」

    ダレンが聞いていた様で地に伏して泣いていた。

「…そうか。じゃあ取り敢えず一緒に暮らす事から始めようか。構わないか?」

「あ、は、はいっ。不束者ですが…宜しくお願いします…。」

「新しいパパだっ!ポプリも嬉しいっ!良かったね、お母さん!」

「「「「おめでとう、ラピスさん。」」」」

「ありがとう皆。私、頑張るからね?待ってて。」

    ラピスは女の子達と何やら相談し始めていた。

「ほっほ。最後の条件も何とかなりそうじゃな。」

「ジジィ…、わざとか?」

「ほっほ。こうでもせんと主はまた何処かに流れるじゃろ?力がある魔族はそれだけで義務が生じるモノじゃ。頼む、魔族を救ってくれぃ。儂は…主ならそれが出来ると確信しておるのだよ。」

「はぁ…。いきなりこんな事になっちまって…。前途多難すぎるぜ…。」

    その日の内に住人達の引っ越しは完了した。住人達に家具や設備の使い方を説明し、別れたのは夕方になってからであった。枢はラピスとポプリの家で暮らす事となった。

「この家凄いね、お母さん。風が全く入って来ないし雨漏りも無さそう。それに…此所からお水も出るし。」

「そうねぇ…。あのお風呂って言うのも初めて見たわ。何もかも凄すぎて訳が分からないわよ。」

    枢は笑いながら2人に言った。

「ははっ、今まで酷かったもんな。あれじゃ体調も崩すさ。大丈夫、暫く使っている内に慣れるさ。さて、今日は引っ越し祝いだ。何でも好きな物を食べさせてやろう。2人は何が食べたい?」

    ポプリが枢に高速接近し叫んだ。

「肉っ!分厚いステーキ肉っ!」

「ぽ、ポプリ。ごめんなさないね?枢さん。」

「いや、ステーキ位なら問題ないよ。ラピスは?」

「へ?えっと…じゃあ…焼き肉…かな。」

「焼き肉か…。ふむ、なら外でやるか!」

「「外で??」」

「ああ、庭に出てバーベキューだ。天気も良いし丁度良いだろう。さ、行こうぜ。」

    枢は2人を庭に連れ出し、庭の真ん中にバーベキューコンロを置き火を起こした。2人をテーブルセットに座らせ準備を整える。

「そろそろ良いかな。じゃあ今から焼くからなー。肉はファングボアとフォレストバードかな。あ、昔採ったオーク肉もあるな。どれが食べたい?」

「「全部(ですわ)っ!」」

「そ、そうか…。じゃあオーク肉はステーキにして、他はスライスして焼こうか。」

    枢は次々と肉を焼き皿に載せて2人に出した。

「ラピス、酒は飲める?」

「お酒…ですか?あんな貴重な物、そうそう飲めませんが…イケますわ。」

    ラピスは少し期待する様な眼差しを枢へ向けた。

「やっぱり焼き肉にはエールだよな。これが無きゃ始まらん。ほら、エール…イケるか?」

「あ…。冷たい…美味しそう…。…ごくっ。で、では…。」

    ラピスはエールを一口口に含む。そして、ゆっくりと喉を通して一息吐いた。

「…美味しいです。 とても…。ごくっごくっ…。」

「ら、ラピス?そ、そんな一気にだ、大丈夫か?」

「大丈夫っ!エールは水と変わりません♪あ、おかわりあります?」

「お、おう。」

    ポプリがこっそり枢に告げ口してきた。

「ダメだよ、枢さん。お母さん…お酒飲むと人が変わるから。ああなったら止まらないよ?これは聞いた話なんだけど…成人の日にお酒を飲む慣習があるんだけどね、お母さん…一杯だけの所を樽ごと空けちゃったみたいなの。」

    …やらかしたか。俺は何てモノを出してしまったんだ…。

    枢は嬉々としてグラスを傾けるラピスを見て、早くも後悔するのであった。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

卒業パーティーのその後は

あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。  だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。   そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

処理中です...