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第四章 迷子編
第76話 思わぬ所に
席に座ると女の子がメニューを持ってきた。
「はいっ、メニューですっ」
「あ、ありがとう。どれどれ……ん?」
メニュー表にはズラリと料理名が並んでいた。
「え? カリー以外にも料理あるんだ」
「はいっ! お母さんは料理上手な元冒険者なのです」
「へぇ~」
「こ、こら! すみません、昔の話です。それに……料理といっても野営した時に覚えた雑な料理ばかりで」
確かに並んでいる料理は全て簡単な料理ばかりだ。だがそれよりも気になることが一つ。
「あの、米も扱ってるんですか? ジパン特産の」
「はいっ。昔立ち寄った個所ですのでいつでも行けるんですよ」
「んん? どういう意味ですか?」
店主は頬を掻きながら言った。
「私……こう見えて引退した時空魔導師なんですよ」
「え? はっ!? じ、時空魔導師!?」
「はい。ランクはA級でした。そこそこ有名だったんてすよ」
いくらなんでもこんな場所にいていい人物じゃない。いや、元冒険者と言っていたんだ、何かしら理由があるのだろう。
「そうでしたか。あ、とりあえず肉野菜炒め。あとエールを」
「は、はい。すぐに!」
店主はキッチンに立つと空間にホールを開いた。
「な、なんですそれ?」
「これですか? 次元収納です。なんでも入れられて便利なんですよ。中は時間も停止してるので食材も腐りませんし便利ですよね~」
「は、はぁ」
目の前にかつて喉から手が出る程欲しかったスキルがある。さらに先ほどの会話からおそらく転移スキルも持っているはずだ。
「温度も変えられるんですか?」
「はい。あ、エールですよね? 別の冷蔵空間でキンキンに冷やして保管してありますのでお先にどうぞ」
出されたエールはキンキンに冷えていた。
「くぅぅぅぅぅっ! キンッキンに冷えてる! あぁ、砂漠の暑さにこのエール……沁みるっ!」
「ふふふっ。はい、肉野菜炒めです」
「いただきます!」
少々味が濃い目の肉野菜炒めを頬張りエールで胃に流し込む。昨日からカリーしか食べてなかったので箸が止まらなかった。
「美味かった……。でもなんでこんなに美味しいのにお客さん入ってないんですか?」
「それは……わからないんですよね」
「わからない?」
「はい。開店した時も呼び込みとか頑張ったんですよ。最初は何人か物珍しさで来てくださったんですけど、初回だけで次に繋がらなくて」
「ふむふむ……」
芋オンリーのカリーに比べたら野菜も多く摂れるし外観のボロさに目を瞑れば全然リピートしてもおかしくない。
「ん? あの、もう一度メニュー表見せてもらえます?」
「あ、はい」
店主からメニュー表を受け取り目を通す。先ほどは料理にばかり目がいっていたが、今度は隣の数字に目を向けた。
「肉野菜炒め……金貨五枚!? エールは一杯金貨七枚!?」
「あの、なにか」
「わかりました。めちゃくちゃ高いんですよ」
「え? え?」
俺は他の店で食べたカリーの値段を告げた。
「え? 一食金貨一枚? そんなに安かったら赤字では!?」
「いや、スパイスは自家栽培だろうし芋は安く買える。ここはメニューこそ多いけど高いんだよ。何せ物価は大陸の半分だからね。あと、メニュー多いけど酒場も負けてないね。カリー味だけど」
「そ、そんな……。ジャスティと同じ料金設定にしたのが間違いだったなんて」
「買い付けは自分ですよね? なら輸入代金も必要ないだろうし、まず原価プラス手間賃くらいで提供してみては」
「は、はい!」
「それと、わかりやすいようにメニュー表を看板にして店の入り口に設置するのも手です。それと、冷えたエールありますとか水飲み放題とか」
「あ、あなたは経営の神様か何かですか!? なぜそうポンポンとアイデアが!」
「素人考えですよ。客目線でこんなのあれば入りやすいって考えたら口に出てました」
店主はカウンターから身を乗り出し手を握ってきた。
「ありがとうございます! そうですよね、私なら水なんていくらでも手に入れられますし!」
「あ、やり過ぎたら変な連中に目をつけられるかもしれないので一日何杯までとか二杯目からは有料とか制限入れた方がいいかも」
「はいっ! あぁ、やる気出てきた! ありがとうございますお客様!」
後にこの店はサラハ王国一の食事処になるのだが、それはあとでまた語るとしよう。
時刻は夕方、陽が落ちかけ少し肌寒くなってきた。
「お礼をいうのはこっちだな。まさか時空魔導師のジョブが手に入るなんて」
宿についた俺はマスターに食事は食べてきたと伝え部屋に籠もった。そしてベッドに腰掛けハローワークを開く。
「いける! 時空魔導師になれるみたいだ。よし、迷わずジョブチェンジだ」
俺は一切躊躇することなく時空魔導師にジョブチェンジし下に降りた。
「どうした? やっぱ飯食うのか?」
「いえ、ちょっと魔物と戦ってきます。しばらく町の外にいるので」
「あ、おい!」
俺はすぐにでもジョブレベルを上げたくて宿を飛び出し町の外へと向かった。
「あ、あなたは! あの! 夜の砂漠は危ないですよ! 擬態してた魔物が動き出しますので!」
「知ってます! じゃ!」
「あ! 行っちゃったか。ま、Sランク冒険者だし大丈夫か」
微かに聞こえた門番のセリフなどすぐさま聞こえなくなるほど全力で走り夜の砂漠へと向かうのだった。
「はいっ、メニューですっ」
「あ、ありがとう。どれどれ……ん?」
メニュー表にはズラリと料理名が並んでいた。
「え? カリー以外にも料理あるんだ」
「はいっ! お母さんは料理上手な元冒険者なのです」
「へぇ~」
「こ、こら! すみません、昔の話です。それに……料理といっても野営した時に覚えた雑な料理ばかりで」
確かに並んでいる料理は全て簡単な料理ばかりだ。だがそれよりも気になることが一つ。
「あの、米も扱ってるんですか? ジパン特産の」
「はいっ。昔立ち寄った個所ですのでいつでも行けるんですよ」
「んん? どういう意味ですか?」
店主は頬を掻きながら言った。
「私……こう見えて引退した時空魔導師なんですよ」
「え? はっ!? じ、時空魔導師!?」
「はい。ランクはA級でした。そこそこ有名だったんてすよ」
いくらなんでもこんな場所にいていい人物じゃない。いや、元冒険者と言っていたんだ、何かしら理由があるのだろう。
「そうでしたか。あ、とりあえず肉野菜炒め。あとエールを」
「は、はい。すぐに!」
店主はキッチンに立つと空間にホールを開いた。
「な、なんですそれ?」
「これですか? 次元収納です。なんでも入れられて便利なんですよ。中は時間も停止してるので食材も腐りませんし便利ですよね~」
「は、はぁ」
目の前にかつて喉から手が出る程欲しかったスキルがある。さらに先ほどの会話からおそらく転移スキルも持っているはずだ。
「温度も変えられるんですか?」
「はい。あ、エールですよね? 別の冷蔵空間でキンキンに冷やして保管してありますのでお先にどうぞ」
出されたエールはキンキンに冷えていた。
「くぅぅぅぅぅっ! キンッキンに冷えてる! あぁ、砂漠の暑さにこのエール……沁みるっ!」
「ふふふっ。はい、肉野菜炒めです」
「いただきます!」
少々味が濃い目の肉野菜炒めを頬張りエールで胃に流し込む。昨日からカリーしか食べてなかったので箸が止まらなかった。
「美味かった……。でもなんでこんなに美味しいのにお客さん入ってないんですか?」
「それは……わからないんですよね」
「わからない?」
「はい。開店した時も呼び込みとか頑張ったんですよ。最初は何人か物珍しさで来てくださったんですけど、初回だけで次に繋がらなくて」
「ふむふむ……」
芋オンリーのカリーに比べたら野菜も多く摂れるし外観のボロさに目を瞑れば全然リピートしてもおかしくない。
「ん? あの、もう一度メニュー表見せてもらえます?」
「あ、はい」
店主からメニュー表を受け取り目を通す。先ほどは料理にばかり目がいっていたが、今度は隣の数字に目を向けた。
「肉野菜炒め……金貨五枚!? エールは一杯金貨七枚!?」
「あの、なにか」
「わかりました。めちゃくちゃ高いんですよ」
「え? え?」
俺は他の店で食べたカリーの値段を告げた。
「え? 一食金貨一枚? そんなに安かったら赤字では!?」
「いや、スパイスは自家栽培だろうし芋は安く買える。ここはメニューこそ多いけど高いんだよ。何せ物価は大陸の半分だからね。あと、メニュー多いけど酒場も負けてないね。カリー味だけど」
「そ、そんな……。ジャスティと同じ料金設定にしたのが間違いだったなんて」
「買い付けは自分ですよね? なら輸入代金も必要ないだろうし、まず原価プラス手間賃くらいで提供してみては」
「は、はい!」
「それと、わかりやすいようにメニュー表を看板にして店の入り口に設置するのも手です。それと、冷えたエールありますとか水飲み放題とか」
「あ、あなたは経営の神様か何かですか!? なぜそうポンポンとアイデアが!」
「素人考えですよ。客目線でこんなのあれば入りやすいって考えたら口に出てました」
店主はカウンターから身を乗り出し手を握ってきた。
「ありがとうございます! そうですよね、私なら水なんていくらでも手に入れられますし!」
「あ、やり過ぎたら変な連中に目をつけられるかもしれないので一日何杯までとか二杯目からは有料とか制限入れた方がいいかも」
「はいっ! あぁ、やる気出てきた! ありがとうございますお客様!」
後にこの店はサラハ王国一の食事処になるのだが、それはあとでまた語るとしよう。
時刻は夕方、陽が落ちかけ少し肌寒くなってきた。
「お礼をいうのはこっちだな。まさか時空魔導師のジョブが手に入るなんて」
宿についた俺はマスターに食事は食べてきたと伝え部屋に籠もった。そしてベッドに腰掛けハローワークを開く。
「いける! 時空魔導師になれるみたいだ。よし、迷わずジョブチェンジだ」
俺は一切躊躇することなく時空魔導師にジョブチェンジし下に降りた。
「どうした? やっぱ飯食うのか?」
「いえ、ちょっと魔物と戦ってきます。しばらく町の外にいるので」
「あ、おい!」
俺はすぐにでもジョブレベルを上げたくて宿を飛び出し町の外へと向かった。
「あ、あなたは! あの! 夜の砂漠は危ないですよ! 擬態してた魔物が動き出しますので!」
「知ってます! じゃ!」
「あ! 行っちゃったか。ま、Sランク冒険者だし大丈夫か」
微かに聞こえた門番のセリフなどすぐさま聞こえなくなるほど全力で走り夜の砂漠へと向かうのだった。
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