仲間に裏切られた勇者、事実を知り奮い立つ! ~世界を救う勇者アインの物語~

夜夢

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第1章 はじまり

第01話 裏切り

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 ここは世界最難関といわれている欲望渦巻くダンジョンの最奥。このダンジョンでは地位、名声、宝—―あらゆる物が手に入る。それ故に、地上にある町には世界中から腕に覚えのある者達が集う。

 その中でも世界最強の勇者である【アイン】の率いるパーティー【紅蓮の焔】はダンジョン攻略に一番近いパーティーといわれ、この地に集まっている者達から大きな注目を浴びていた。

 そして現在、ダンジョン最奥にある最後のフロア前。ここで俺は仲間達から裏切られた。

 アインの前を歩くのはアインが最も信頼を寄せている仲間であり、共に数々の苦難を乗り越えてきた親友、とある国の皇子【リヒトー】だ。リヒトーは最後のフロアへと繋がる巨大な扉の前で振り返り、アインにこう告げた。

「アイン、ここまで俺達を率いてくれてありがとう。だがお前はもう邪魔だ」
「え? な、何を言って—―」

 我が耳を疑うアインの背後で目が眩むような光が走る。

「我が敵に神の戒めを。【神の縛鎖ゴッドオブパラライズ】」
「ぐあっ!?」

 アインは背後から聖女の魔法が放たれ、行動の自由を奪う。

「ハハハッ! よくやったぞマーリン! アイィィィン、お前のスキル【全状態異常耐性】は意識していない範囲からの攻撃は防げない。ようやく弱点を見つけたよ」
「ぐっ!?」

 リヒトーの蹴りが動けないアインの腹部に入り、アインはダンジョンの地面に転がった。リヒトーは転がったアインの頭を踏みつけながら嗤う。

「アイィィン、俺はお前が憎くて憎くて仕方がなかった!」
「な、なんだよそれっ!」
「お前はよぉ……俺より力もあり、憎たらしい事に俺よりもわずかに顔も良い。その強さをひけらかさないせぃか、民からの人気も絶大だ。だがな、生まれは地図に名前もないような小さな小さな集落だ!」
「ぐあぁぁっ!」 

 リヒトーの剣がアインの手のひらを貫いた。

「ふざけるなよ、なぁアイン。民から称賛されるべきはこの俺、【シュバイン帝国第一皇子】リヒトー様だろう? お前が邪魔なんだよアイン。【ミューズ】、アインの装備を剥ぎ取れ」
「—―はい」

 パーティーの魔法使いであり、アインの恋人でもあるミューズがアインの鎧を外していく。

「ミューズ! なんでリヒトーの言いなりにっ!」
「……」

 ミューズは言葉を発さず、ただ黙々とアインの装備を解除していく。それを見たリヒトーが下衆な笑みを浮かべ表情を歪ませる。

「ハハハハッ! お前には言ってなかったか。これは俺のスキル【完全なる傀儡オーダーマリオネット】だ。操られている者は決して俺の命令に逆らえない。アインよぉ……お前の女、良い具合だったぜ? ハハハハッ!」
「リヒトォォォォォォッッ!!」 

 アインはリヒトーを睨みつけ叫ぶ。

「勇者もこうなっちゃ終わりだな。このダンジョンは俺が最初に攻略してやるよ。盾も二枚あるしな」
「リヒトォォォォォォッッ! マーリン! 麻痺を解いてくれっ!」
「ハハハッ、無駄だ。そいつも俺の操り人形だ。さて、時間がもったいない。今トドメをさしてやろう。やれ、ミューズ」
「……」

 ミューズの手には短剣が握られており、それが今地面に転がるアインの背に深々と突きたてられた。

「がぁっ!? ミ、ミュー……ズッ!」
「ハハハッ、恋人に殺される気分はどうだ? まぁ、今は俺の女だがな?」
「ごふっ! ごほっごほっ!」

 アインの口から鮮血が飛び散る。ミューズの突き立てた短剣による攻撃は内臓を傷つけていたようだ。

「アイン、お前はここで死ね。お前の全ては俺がいただいていく。じゃな、元親友。正直、お前との親友ごっこには吐き気をもよおしてたぜ? ハハッ、ハハハハッ!」
「リヒ……トー……!」

 そこでアインの意識は暗闇に包まれた。

 それからいくつ時が流れただろうか。暗闇に包まれたアインの意識が不思議な空間の中で覚醒した。

「……俺、生きてる?」

 アインは貫かれた手のひらを見る。だがそこには傷一つなかった。不思議に思っていると背後から声が掛かった。

《いいえ、勇者アイン。あなたは死にました》
「えっ?」

 アインは驚き声が聞こえた背後を振り返る。そこには真っ白な衣装に身を包んだ、この世の者とは思えないほど絶世の美女が立っていた。

「あ、あなたは?」
《私はあなたの守護神【フレキシオス】。勇者アイン、あなたは仲間に裏切られ死にました》
「あ……そうか……。死んだのか俺」

 アインは悔しさに拳を握りしめた。

《勇者アインよ、あなたはまだ死ぬには早すぎます。あなたにもう一度機会を与えましょう》
「機会?」
《これを御覧なさい》
「え? こ、これはっ!」

 フレキシオスとアインの間に巨大な水晶体が出現し、その水晶にアインを裏切った仲間の映像が映し出された。その映像は勇者の死を悲しむ民に、それでもダンジョンを攻略したリヒトーを称賛する民、そしてダンジョンを完全攻略したリヒトーが民の前で演説している映像だった。

《勇者アインという多大な犠牲を払いはしたが! 我ら紅蓮の焔は世界最難関といわれるダンジョンを攻略したっ!》
《《》》
《そして俺は今回のダンジョン攻略で勇者をも凌ぐスキル【不死】を手にしたっ!》
《ふ、不死だって!? す、すげぇ!》
《この力で俺はシュバイン帝国を世界一の国に変えて見せる! まずは……貴様ら冒険者の排除からだ》


 ミューズの杖が巨大な炎を巻き起こす。

《今後貴様ら冒険者はこの国に立ち入るべからずだ。このダンジョンから出る宝は全て我がシュバイン帝国の物! この宝を使い世界を我が物とする! やれ》
《全てを焼き尽くす紅蓮の炎よ、我が敵を滅せ。【フレアエクスプロージョン】!》


 民衆や冒険者達が紅蓮の炎に焼き尽くされていく。

「な、なんという……! リヒトー!」

 憤るアインにフレキシオスが語り掛ける。
《勇者アインよ、あなたに今一度命を与えます。しかし、肉体は別のものとなります》
「別の……?」
《はい。あなたには彼の地より遠く離れた場所に転生してもらいます。そこで再び力をつけ、あの欲望の神に取り憑かれた哀れな者を滅してもらいます》
「欲望に……取り憑かれた?」
《はい。あの者の魂はダンジョンにいる間に少しずつ浸食されていきました。そして、ダンジョンコアに触れたところであの者の魂は完全に掌握されました》
「えっ!? じ、じゃああれは何なんだ!?」
《あれはあのダンジョンに封印されし欲望の神【ディザーム】です。ディザームは強き肉体と暗き感情を持つ者を求めていました。あの者はダンジョンを攻略などしていません。あれはディザームが乗り移っているのです》
「な、なんという事だ……!」

 リヒトーはアインに対する醜い感情を利用され、ディザームの生贄に選ばれていた。

「じ、じゃあ……リヒトーは俺を裏切っては……」
《いえ。ディザームに触れる前は確かにあの者の魂でした。ですが、あの裏切りの一部にディザームの能力が関与していたことだけは伝えておきましょう》

 リヒトーは確かにアインを裏切った。だがそこにはリヒトーだけの意思ではなく、欲望の神も関与していたと知った。アインはこの事実を知り怒りに震えた。

「欲望の神ディザーム!! 俺は絶対に許さないっ!」
《そうです。あれを野放しにしておけば地上は滅びを迎えるでしょう。勇者アインよ、もう一度、今度は清き心を持つ仲間を集めなさい。そして、ディザームを完全に消滅させるのです。そのための力をあなたに与えます》

 アインの身体を眩い光が包み込む。

《勇者アインよ、この世界を頼みますよ……》

 アインの意識は再び暗闇に包まれていくのだった。
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