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第1章 転生
第03話 神託の儀
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このジアースに生を受け十二年。リクトはすくすくと成長し、現在ありえないレベルになっていた。
「……やり過ぎたか。この世界での平均レベルは知らないけど……俺のレベル多分ヤバいだろこれ」
村にあったあらゆる物を図鑑に登録し続けた結果、リクトのレベルはすでに千を超えていた。
「リクト~、準備出来たか?」
「あ、うん! 今行くよ!」
今日はいよいよ神託を授かりに行く日だ。リクト自体はあまり必要性を感じていないが、両親は子どもの将来のために気合いを入れていた。
「リクト、スキルを授かっても授からなくてもリクトは私達の子どもだからね! 授からなくても村で暮らせば良いからね?」
「うん、母さん。ってなんで母さんがそんなに緊張してるのさ」
「だ、だって~。今日でリクトの人生が決まるのよ? リクトには貧しい生活を送って欲しくないもの」
リクトはこれまでスキルをひた隠しにしてきた。使っていれば貧しい生活など無縁の日々になっていただろうが、十二歳前にスキルを使える人間などいないし、見た事も聞いた事もない。そのため、これまで人前でのスキル使用は控えてきた。
「よし、じゃあ町まで行こう。リクト、ちゃんとついてこいよ?」
「うん、父さん。母さん、行ける?」
「はいはい、大丈夫よ。戸締まりオッケー、貴重品も持った! じゃあ行きましょ!」
そうしてリクトは両親と共に徒歩で半日ほど歩いた先にある小さな町を目指した。その道中でもアイテム図鑑になかったものをいくつか登録していく。
「あ、あの花は村になかった種類だ!」
そんなリクトの様子を見た両親はまたかと呆れていた。
「お前のそれは相変わらずだな。そんな知らない物を探す事が楽しいか?」
「別に楽しくてやってるわけ──いや、楽しいかな。知らない物を知る事は」
「リクトは学者に向いてるかもしれないわねぇ。幼い頃から頭も良いし」
「けどよぉ……いくら向いてても家には金がねぇ。学者の素質があっても学者にはしてやれん。すまんなぁリクト……」
リクトは申し訳なさそうにする父親に励ましの言葉を掛けた。
「大丈夫だよ。学者にはならないし」
「そうなのか?」
「うん。俺あの村が好きだし、どんなスキルを授かってもあの村にいるよ」
「リクト……。あなた、リクトの事どう思う?」
母親は未だに親離れできていないのではと心配していた。
「ん~……。まあ、決めるのはリクトだからな。村にいたければいればいいし、村を出たけりゃ出れば良い。それによ、成人までまだ三年あるんだ、今から先の事考えても仕方ないだろ」
「そうかしら。将来は早く決めた方が良いと思うんだけどね」
「ま、リクトにも何かやりたい事あるんだろ。とりあえず明日の儀式が終わってからまた考えれば良いさ。もしスキルがもらえなかったら村に住む事になるんだろうしな」
「ちょっと、不吉な事言わないでよぉ~」
両親の会話を聞きながらも、リクトはスキルを得られる事を確信していた。今回スキルを与えるのはこの星の神ミュルニクスだ。
《地球の神とギャンブルしてまで地球人の魂を欲しがってたんだ。こんな危険な世界で俺にスキルを与えないわけがない。恐らくミュルニクスの目的は俺の知識を使ってこの星の文化レベルを上げる事だろう。なら……きっと何か便利なスキルがもらえるはずだ。何くれるんだろうな》
実はすでに宿っているとは知らず、リクトは町に向かい移動を続けた。そして夜、町の門が閉まる直前にようやく隣町へと到着した。
「だぁぁぁっ、間に合ったか! リクト! お前がトロトロしてるから間に合わないかと思っただろ!」
「ご、ごめん父さん。村の外珍しい物多くて……」
「ほらあなた、早く町に入りましょ。すぐに宿をとらないと」
「あ、ああ。そうだな」
そして三人で門の前にいた門番に話し掛けた。
「すまない、町に入れてくれ」
「ギリギリでしたね。身分証はありますか?」
「ああ。俺と妻のはな。あと、こいつはまだ未成年で俺の子だ」
そう言い、両親はカードを門番に見せた。
「確認しました。未成年者は税がいりませんのでどうぞ」
「っし、行くぞ」
「お~!」
無事外壁に囲まれた町の中に入る事ができた。
「うわぁ~……中世だ……」
リクトが覚えたのは感動ではなく、予想通りの光景を見た安堵だ。
《やっぱりそんなに発展してないんだな。車もないし、電気もない。さらに言えば自転車すらない。でも街灯はあるんだな……。あれ、電気がないのにどうやって光らせてるんだろ?》
「お~いリクト! 何してる! 置いてくぞ」
「あ、今行くから待ってよっ!」
道は石畳、家屋は煉瓦、水道は井戸。村に比べれば発展はしているが、リクトにしてみたら映画の中にある世界だ。
そして町に入った三人は真っ直ぐ宿に向かい、部屋を取った。
「どうやら町の外から儀式受けにくる奴らはあまりいないようだな。部屋が空いててラッキーだ」
「そうねぇ~。町の中で野宿はしたくないわ。でも、明日は何人儀式を受けに来るのかしら」
「さぁなぁ~。この周辺にはあまり村もねぇし、子どもも少ないからな。もしかしたらリクト一人だけってのもありえるかもな」
「それなら早く済むから町を見て回れるわね。久しぶりの町だから服とか買っちゃおっかな~」
「おいおい、金あるのか?」
「あるわよ? あなたのヘソクリ」
「あっ!? な、なななななんでそれをっ!?」
「私に隠れてお金貯めてるなんて何かやましい事しようとしてたんでしょ? これは没収ですから」
「んぁぁぁぁっ!? お、俺の酒代がぁぁぁぁっ!?」
父親はガックリと崩れ落ちるのだった。
「……やり過ぎたか。この世界での平均レベルは知らないけど……俺のレベル多分ヤバいだろこれ」
村にあったあらゆる物を図鑑に登録し続けた結果、リクトのレベルはすでに千を超えていた。
「リクト~、準備出来たか?」
「あ、うん! 今行くよ!」
今日はいよいよ神託を授かりに行く日だ。リクト自体はあまり必要性を感じていないが、両親は子どもの将来のために気合いを入れていた。
「リクト、スキルを授かっても授からなくてもリクトは私達の子どもだからね! 授からなくても村で暮らせば良いからね?」
「うん、母さん。ってなんで母さんがそんなに緊張してるのさ」
「だ、だって~。今日でリクトの人生が決まるのよ? リクトには貧しい生活を送って欲しくないもの」
リクトはこれまでスキルをひた隠しにしてきた。使っていれば貧しい生活など無縁の日々になっていただろうが、十二歳前にスキルを使える人間などいないし、見た事も聞いた事もない。そのため、これまで人前でのスキル使用は控えてきた。
「よし、じゃあ町まで行こう。リクト、ちゃんとついてこいよ?」
「うん、父さん。母さん、行ける?」
「はいはい、大丈夫よ。戸締まりオッケー、貴重品も持った! じゃあ行きましょ!」
そうしてリクトは両親と共に徒歩で半日ほど歩いた先にある小さな町を目指した。その道中でもアイテム図鑑になかったものをいくつか登録していく。
「あ、あの花は村になかった種類だ!」
そんなリクトの様子を見た両親はまたかと呆れていた。
「お前のそれは相変わらずだな。そんな知らない物を探す事が楽しいか?」
「別に楽しくてやってるわけ──いや、楽しいかな。知らない物を知る事は」
「リクトは学者に向いてるかもしれないわねぇ。幼い頃から頭も良いし」
「けどよぉ……いくら向いてても家には金がねぇ。学者の素質があっても学者にはしてやれん。すまんなぁリクト……」
リクトは申し訳なさそうにする父親に励ましの言葉を掛けた。
「大丈夫だよ。学者にはならないし」
「そうなのか?」
「うん。俺あの村が好きだし、どんなスキルを授かってもあの村にいるよ」
「リクト……。あなた、リクトの事どう思う?」
母親は未だに親離れできていないのではと心配していた。
「ん~……。まあ、決めるのはリクトだからな。村にいたければいればいいし、村を出たけりゃ出れば良い。それによ、成人までまだ三年あるんだ、今から先の事考えても仕方ないだろ」
「そうかしら。将来は早く決めた方が良いと思うんだけどね」
「ま、リクトにも何かやりたい事あるんだろ。とりあえず明日の儀式が終わってからまた考えれば良いさ。もしスキルがもらえなかったら村に住む事になるんだろうしな」
「ちょっと、不吉な事言わないでよぉ~」
両親の会話を聞きながらも、リクトはスキルを得られる事を確信していた。今回スキルを与えるのはこの星の神ミュルニクスだ。
《地球の神とギャンブルしてまで地球人の魂を欲しがってたんだ。こんな危険な世界で俺にスキルを与えないわけがない。恐らくミュルニクスの目的は俺の知識を使ってこの星の文化レベルを上げる事だろう。なら……きっと何か便利なスキルがもらえるはずだ。何くれるんだろうな》
実はすでに宿っているとは知らず、リクトは町に向かい移動を続けた。そして夜、町の門が閉まる直前にようやく隣町へと到着した。
「だぁぁぁっ、間に合ったか! リクト! お前がトロトロしてるから間に合わないかと思っただろ!」
「ご、ごめん父さん。村の外珍しい物多くて……」
「ほらあなた、早く町に入りましょ。すぐに宿をとらないと」
「あ、ああ。そうだな」
そして三人で門の前にいた門番に話し掛けた。
「すまない、町に入れてくれ」
「ギリギリでしたね。身分証はありますか?」
「ああ。俺と妻のはな。あと、こいつはまだ未成年で俺の子だ」
そう言い、両親はカードを門番に見せた。
「確認しました。未成年者は税がいりませんのでどうぞ」
「っし、行くぞ」
「お~!」
無事外壁に囲まれた町の中に入る事ができた。
「うわぁ~……中世だ……」
リクトが覚えたのは感動ではなく、予想通りの光景を見た安堵だ。
《やっぱりそんなに発展してないんだな。車もないし、電気もない。さらに言えば自転車すらない。でも街灯はあるんだな……。あれ、電気がないのにどうやって光らせてるんだろ?》
「お~いリクト! 何してる! 置いてくぞ」
「あ、今行くから待ってよっ!」
道は石畳、家屋は煉瓦、水道は井戸。村に比べれば発展はしているが、リクトにしてみたら映画の中にある世界だ。
そして町に入った三人は真っ直ぐ宿に向かい、部屋を取った。
「どうやら町の外から儀式受けにくる奴らはあまりいないようだな。部屋が空いててラッキーだ」
「そうねぇ~。町の中で野宿はしたくないわ。でも、明日は何人儀式を受けに来るのかしら」
「さぁなぁ~。この周辺にはあまり村もねぇし、子どもも少ないからな。もしかしたらリクト一人だけってのもありえるかもな」
「それなら早く済むから町を見て回れるわね。久しぶりの町だから服とか買っちゃおっかな~」
「おいおい、金あるのか?」
「あるわよ? あなたのヘソクリ」
「あっ!? な、なななななんでそれをっ!?」
「私に隠れてお金貯めてるなんて何かやましい事しようとしてたんでしょ? これは没収ですから」
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