俺のスキル『アイテム図鑑』が優秀すぎる!

夜夢

文字の大きさ
9 / 17
第1章 転生

第09話 レベルアップ

しおりを挟む
 学園に入学して一ヶ月。リクトは勉強をやめ、アイテム図鑑を埋める事に力を注ぎ、レベルは1500になっていた。これは世界の平均レベルのおよそ五倍。この時点でリクトは世界最強の座にいた。

「なぁなぁリクト~、夏休みどないする?」
「夏休みまであるのかよ」

 夏の間は暑く授業もままならないため、生徒は秋になり涼しくなるまで実家で過ごす。ルーシアは夏の間教会に戻り、司祭になる試験を受けるのだそうだ。

 相変わらず低レベルな教育にやる気が出ないリクトはキャルとの大人の勉強にばかり力を注ぎ注いでいた。

「キャルはどうするんだ?」
「ウチは実家に帰るで~。ほんで実家の帳簿見たりして今の状態を確認するんよ」
「王国一の商会の帳簿か。そりゃ商人には喉から手が出るほど見たいだろうな」
「リクトならええんよ? 夏休み一緒にウチにこん?」

 ルーシアがいない今、キャルの暴走を止める者はいない。リクトは特にやる事もなかったため、キャルの提案に乗る事にした。

「俺は商人にはならないけど帳簿は気になるな。キャル、夏休みの間世話になって良いか?」
「もちろんやっ。あはっ、今年の夏は楽しくなりそうやな~」

 そして夏休み。リクトは王都にあるキャルの実家に世話になる事にした。学園から馬車に乗り、二日かけて王都に到着した。

「……すっげぇ屋敷だな」
「そう? 大したことないんちゃう? ほら、行くで~」
「あ、ああ」

 キャルはリクトの腕に抱きつき屋敷の中に入った。

「ただいま~! 彼氏連れてきたでっ!」
「……は?」
「「お帰りキャル!」」 

 恰幅の良い中年男性とモデルのような美女が二人を出迎えた。

「お帰りキャル。そちらが手紙にあったリクトくんかい?」
「うん。彼が先生より優秀で滅茶苦茶頭良いリクトやで~」
「キャル、勉強はどう?」
「バッチシやで~。毎晩リクト先生相手にヒィヒィ言ってたわ~」
「あらあら、後で詳しく教えてね」
「高いで~おかん」

 母と娘がなにやら不穏な会話をしている脇で恰幅の良い男性がリクトに話しかける。

「私は当商会の会長をしている【ミゲル】だ。リクトくん、ウチの娘が面倒をかけてるようですまんね」
「いえ。学園では特に学ぶ事がないので。キャルさんとは楽しくやらせてもらってますよ」
「ヤらせてもろとるってリクト~。ウチも毎晩楽しんどるよっ」
「あらあら、仲が良いわね~」
「そら若いからなぁ~」

 そこでキャルは突然真面目な顔になった。

「で、おとん。リクトを連れてきたけどなんの用なん?」
「うむ。ここじゃなんだから執務室にきてもらえるかね、リクトくん」
「は、はあ」

 そして全員で執務室に行き、リクトが呼ばれた理由が語られた。

「……春くらいから売上が下がってますね。王都周辺は例年通り。問題があるとすればここ、隣国と接してる町ですね。軒並み売上が下がってる事から見て……恐らくこの町に隣国の商会が進出しているかと」
「ち、帳簿を見ただけでそこまでわかるのかい!?」
「もちろんです。さらに言えば、この敵は儲け度外視でこっちを潰しにかかってます。採算は他の支店で合わせているのでしょう。目的はこの町を手に入れる事でしょうね。もしかすると国まで絡んでいるかもしれません」
「……やはりか」

 キャルの父はドサッと椅子に身体を放り投げた。

「私の商会も限界まで売値を下げてはいるのだがな。いくら下げても翌日には向こうがさらに下をいくのだよ。しかしこれ以上下げたらうちは商売にならん。恥を忍んで頼む! どうにか解決する方法はないだろうか?」

 ここでリクトは初めて自分が招かれた理由を知った。

「なるほど。ここから売値を下げるためにはより多くの物資を投入すれば何とかなりそうですが」
「無理だ。その町に回せる物資はもう増やせんのだよ」
「なら……相手が扱ってない商品を売るしかないですね」
「う……む。しかしなぁ……それを売ったら向こうが真似をしないか?」
「なら真似できない商品を作れば良いのでは? あと、ここはどんな町か教えてもらえますか?」

 キャルの父は町について詳しく語った。

「この町は【ニュータウン】と言ってな、町の中心部にダンジョンがあるのだよ」
「ダンジョン……ですか」
「うむ。客層は冒険者、売れ筋はダンジョンで使える便利アイテムだ。テントや寝袋、火打ち石や回復薬が飛ぶように売れる」
「なるほど」
「他には酒場に卸す酒やら食料品、宿屋に卸す寝具類だな」

 これらの情報を聞き、リクトは考え始めた。 

「ダンジョンを潰したらどうなります?」
「ニュータウンからゴーストタウンになるだろうなぁ」
「ダメか。なら……助っ人レンタル業とかどうです?」
「助っ人……レンタル?」
「はい。品物は強い冒険者。それを町にいる冒険者にレンタルするんですよ。冒険者は安全に稼げるようになるし、助っ人にはここの商会から物資を買わせる。強い助っ人さえ揃えれば稼げそうじゃないですか?」
「──それだっ! すぐに王国内から手練れを集めるぞっ! リクトくんっ、ありがとう! 進捗具合も相談したいから夏の間はキャルとここにいてくれっ」
「はい。お世話になります」

 それからキャルの父は新たに助っ人派遣業を構築し、ニュータウンに支店を建てさせた。そしてリクトはというと。

「リクトはほんま凄いなぁ。ウチの売上が一気に数倍らしいで」
「そっか」
「おとんな、リクトにどんなお礼したらいいか悩んどるらしいわぁ……。リクト、リクトは何か欲しいもんとかあるん?」
「……今は特にないなぁ。毎日キャルと一緒にこうして楽しめてればな」
「リクトは獣やからなぁ~。毎日こんなんされてぇ……、ウチ完全にリクトの女やないかぁ~」

 リクトは屋敷に来てからアイテム図鑑を埋めつつ、キャルにも埋めていた。それは毎日毎晩行われ、キャルは完璧にリクトにまいってしまっていた。

「頭良いから真面目やと思うとったんに……リクトはすけべぇやなぁ~」
「誘ったのはキャルだろ。つーわけで礼はキャルで良いわ」
「……ウチわがままやで?」
「知ってるよ。ほら、続きしようぜ」 
「にひひっ、優しくしてなぁ~」

 それは夏休み中盤、キャルの父が屋敷に戻るまで続けられるのだった。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...