転生?召喚?ー勇者(クズ)を屠る者ー

夜夢

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第7章 神界と神々の章

38 タイマン

 西を平定し終えたガゼルに対し、東を破壊しつくした勇者。

 勇者はその魔の手を西の大陸へとのばす為、今空を飛び西の大陸へと向かっていた。その勇者がついにガゼルにより捕捉される。

「……きたか。さて、サクッと殺って神界に帰ろうか。【転移】」

 ガゼルは捕捉した勇者の通り道へと転移した。

「っ! テメェ……何モンだ? タダモンじゃねぇな」
「……答えてやる義理はないな。【スキル消去】」
「んなっ!? お、落ちっ……うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 ガゼルによりスキルの全てを消された勇者はなすすべなく地面へと落下していった。

「いっ……てぇぇぇぇぇぇっ! クソがっ! なんで飛べなく……っと。その前に治癒だ。【エクストラヒール】」

 勇者の傷が癒える。どうやら魔法はまだ使えるらしい。ガゼルは余裕の笑みを浮かべ勇者の前へと降り立った。

「お前が勇者とやらで間違いないな?」
「あぁ? テメェはなんだよ?」
「質問に答えろ。お前が勇者だな?」

 勇者は嗤う。

「ああ、そうさ。俺様が勇者よ!」
「……東をどうした」
「あぁん? 女全部食っちまったから人間全部消したけど?」
「……そうか。ゴミクズだな。ああ、勇者とはゴミクズの総称だったな。俺とした事が忘れていた」
「誰がゴミクズだって? 調子くれてんじゃねーぞごらぁぁぁぁぁっ! 【フレアバースト】!!」
「【リフレクト・バースト】」
「なっ!? ぐあぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 ガゼルは勇者の放った爆炎を倍にして返してやった。

「オマケだ。【サイレント】」
「なっ!?」

 これで勇者は魔法すら使えなくなった。

「この野郎……。俺様の魔法を封じただ? 俺よりレベルたけぇのか?」
「さてな。これでお前に攻撃手段はなくなった。スキルもない、魔法も使えないお前はスライム以下だ」
「だっ! 誰がスライム以下だっ!! まだ剣があんだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 勇者は忘れていた。すでに剣術スキルは消えていた事を。

 ガゼルは勇者の剣を余裕で躱わし、その顔面に拳をめり込ませた。

「ぶふっ!? て、テメェ……!」
「テメェ? そりゃこっちのセリフだ!」
「あぁっ!? うごっ!?」

 ガゼルは勇者の腹に重い拳を打ち込む。

「お前のせいで俺は神から人間に戻っちまったんじゃねぇか! お前みたいなゴミクズのせいでなぁぁぁぁぁっ! 苦労したぞ、一からスキルを揃えるのによぉ……。お前のようなクズがいるから世界から悲しみが消えんのだっ!! 東の人間に代わり俺がお前を殺す! その命で詫びろっ!!」
「うっせあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! お前が死んどけやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ガゼルは両手に剣を構える。そして素人同然の動きとなった勇者を次々と斬り刻んでいった。

「く、くそがっ!! 俺はこんな所じゃ終わらねぇっ! 異世界にきてやっと好き放題出来るようになったんだ! こんな所で終われるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「終わるんだよ。勇者なんてシステムは世界には必要ない。死ね」
「し、死んでたま……る……か……」

 勇者の首が地面に転がった。胴体からは鮮血が噴き出している。ガゼルは刀に着いた血を振り払い鞘に納めた。

「……おかしい。これで目的は果たしてはずだ。なぜ神界に帰れない……」

 その時だった。

「ぐっ……!」

 ガゼルの右肩に激痛が走る。

「な、なん……」
《くくくく……くははははははっ!!》
「……は?」

 ガゼルは傷を癒しながら落ちた勇者の首に視線を向ける。

《よくぞ勇者を殺してくれた! 感謝するぞ、名もなき者よ!》
「首が喋……お前……まさか魔王か?」
《いかにも!》

 忘れていた。悪に傾いた勇者は魔王の魂も持っていたのだ。そしてその勇者が死んだ今、勇者の身体は魔王に乗っ取られていたのだった。

 首が空中を漂い、身体に繋がる。すると勇者の身体は禍々しく変化し、人の身とは到底思えぬ怪物へと変わっていった。
   
《勇者を屠りし者よ。我と過ごす話をしようか》
「話だ?」
《そうだ。我と勇者は同格だった。その勇者をああも簡単に殺したお前には勝てそうにもないのでな。ここは一つ取引と行こうではないか》
「取引ね。俺が受けるとでも?」
《受ける。そのために我は東を更地に変えたのだからな》
「話が見えん」

 魔王はガゼルにこう告げた。

《お前に世界の半分、つまり西側の大陸をやる。我は東の大陸だけで良い。そこに魔族の暮らす楽園を築きたいのだ。西側には決して手は出さぬと約束しよう。どうだ?》
「バカか。受けるわけないだろう」
《まぁそう急ぐな。魔族の女は良いぞ……?》

 ガゼルがピクリと反応した。

《我のスキルで望む魔族を幾らでも生み出せる。もし……この取引を受けてくれたらお前には魔族の女を……》
「まぁ……魔族は嫌いじゃない。実際抱いた事もある」
《……な、なに?》
「こことは違う世界でだがな。だから魔族の女が美しいのは知っている。だがな、それがお前を生かしておく理由にはならないだろ」
《な、何故だ……。魔族の女を抱いた者ならわかるだろう! あの人間にはない美しさに危なさ、そして何より我の生み出す魔族は一週間で子を産み落とす! やりたい放題だ!》

 ん? 一週間?

《なぁ、お前が憎いのは勇者だろう? 我も我ら魔族を滅ぼした勇者が憎い! さらに言えばあの勇者を召喚した人間も憎い! だから勇者に滅ぼさせたのだ! 我はただ同胞と静かに暮らしたいだけなのだ! 頼む……! 聞き入れてはもらえんか!》

 そう言い、魔王はガゼルに頭を下げるのであった。
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