シンジュウ

阿綱黒胡

文字の大きさ
19 / 75
第1章

<18話>犬VS鴉(其の3)

しおりを挟む
『世離』がその特性を兼ね備えている
ということに気がついたのは、
発現後3日目のことだった。

ーーー「へえ、これが僕の
かあ。」
その日の夜も、
僕はベットの上で胡座をかきながら、
『世離』を手にとって
まじまじと眺めていた。

本物の日本刀を
手に取れるってだけでも珍しいのに、
さらに特殊能力まで付いてる刀だ。
男として興味が湧かなきゃ嘘だ。

『それそんなに珍しい?
までは、君ら人間は
そんなもの普通に腰に
帯刀してたじゃないか。』
「・・・一体いつの時代の話?」
この世の存在ではないフセは、
どうやら時代感覚が鈍いらしい。

・・・ん?
てことは、こいついつから
人間と接してきたんだ?

🗒シンジュウに寿命の概念はない (?)

しかしそんな疑問も気にならないくらい
僕は興奮しきっていた。
「すげー!すげー!すげー!
こんなの漫画でしか見たことない!」
『流石14歳の子供だね・・・って、
うおあ!危ないな、振り回さないで!』
僕は興奮のあまり、思わず刀を
ブンブン振り回し、
フセはそんな危険な僕から距離をとる。

『・・・ん?何これ。』
僕を冷たい目で見ていたフセは、
退避した先にあった本棚に目をやった。
『そうそう、ここにある本、
前から読んでみようと
思ってたんだっけ。』
などと言いながら、
一冊の漫画の単行本を引っ張り出す。

それは父さんから譲り受けたもので、
随分と古びた
某剣客浪漫譚の内の一冊だった。

フセはページをパラパラとめくりながら
『こんなに面白いものが読めるなんて、
やっぱり君についてきて、
正解だったなあ!』
と嬉しそうに叫んだ。

その言葉で僕も急に懐かしくなり、
世離を片手に握りしめたまま、
思わず別の一冊を手に取る。

そうそう、これに影響されて、
爺ちゃんにチャンバラごっこなんて、
付き合ってもらったっけ・・・。
僕は主人公より、
主人公の相棒的存在の、
喧嘩屋が好きだった。
自分とは違う無骨な生き方に、
憧れを感じたのだ。

何より前半で使っていた
『斬馬刀』という巨大な刀、
あれにはロマンを感じた。
いつかあんなものを振り回して、
誰かを守るヒーローになりたいと、
心の中で密かに思ってたっけ・・・。

最も、『斬馬刀』という刀は、
実在はしたものの、
大きすぎて扱える者は
ほぼいなかったらしいし、
まあ、
僕も今日本刀を振り回しているから、
半分位は叶っているのかもしれない。

その時、僕はふと、
右手が脱力したように感じた。
それと同時により重くなった気もする。

長いこと剣を持っていたから
疲れたのだろうか。
そう思いながら、
僕は右手に握りしめた
『世離』に視線を投げーーー

ーーーそしてそのまま固まった。

60cm程の日本刀だったはずのそれは、
2mを超える巨大な大剣に
姿を変えていた。
「ど・・・どゆこと・・・?」
さらによく見ると、
右手からポタポタと鮮血が垂れ、
その血はギュンギュンと音を立てながら
『世離』に流れ込んでいる。
しかし、刀に付着すると、
一瞬にして蒸発してしまった。

「・・・吸収してるのか?
僕の血を?」

しかしここで僕は、
この巨大な刀をという事実を思い出した。

「お、重いいいいいい!」
斬馬刀と化した『世離』は、
その本来の重さまで馬鹿正直に再現して
僕の右腕に容赦のない負担をかける。
身体能力強化があると言っても、
いくらなんでも両手剣を
片手で支えるとか無理がある。
左手を添えるのも間に合わず。
僕は思わず手を離してしまった。

僕の手から離れた『世離(斬馬刀ver )』は
その巨大な刃から
自重に従って、ベットに倒れこむ。

やばい!ベットが非物質化する!
僕は大慌てで拾おうとするが、
時すでに遅しだった。

いや、結果から言うと、
非物質化することはなかった。
しかし、そっちの方が遥かに良かった。

ベットに突撃した刃は、
素晴らしい切れ味で、
僕が10年間愛用したベットと布団を
真っ二つにしてしまった。

ううう、そりゃそうだよなあ・・・。
こんなに馬鹿でかい刀だもん、
柔らかい木や綿入りの布なんて、
紙屑と大差ないだろうしなあ・・・。
そりゃ切れるよなあ・・・。

・・・ん?

そこで僕は思い出す。
最初にこの刀で小早川を、切った時、
非物質化は発動したが、

と言うことを。

どう言うことだ!?
『世離』には、この刀の刀身には、
!?

僕はまた呆然とするしかなかったが。
フセはいち早く
状況を理解したようだった。
『・・・今、情報が、
頭に流れ込んできた。
加護の追加だ、赤斗。
メモの準備しときなよ。』
そして続けた。
『『世離』の能力は、
物の非物質化だけじゃない。

宿り主の血を取り込むことで、
本来の非物質化能力と引き換えに、
刃を『非物質』から『物質』にして、
切断力を持つこと。
そして、
私の宿り主の記憶の中の、

この力もあるんだ。』













しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...