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第二章
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しばらく話したあと、蓮見は「そういえば……、さっき鷲沼君の名前が出てきて思い出したんだけど」と前置きをして、「僕、鷲沼君と同じ小学校だった」と続けた。
「マジ? 千尋と? どこ?」
「えっと…あの、大学附属の…」
「あー。フゾクとか、聞いたけど知らね。私立?」
「あ、うん、私立」
「いわゆる『お坊っちゃま学校』だ」
「まあ、うん、そう、なのかな多分…」
じゃああいつ、金持ちなのか。あいつの家はかなり近いが、たしかにでけえもんな。
「あいつどんなんだった?」
「あ、クラス被ったことなくて、あまり知らないんだけど…。名字が珍しいなって思った記憶があるから、一緒だったのはそうだと思う」
「へえ。でもさあ、そういう『お坊っちゃま学校』って、大学までエスカレーター式なんじゃねえの?」
俺がそう聞くと、蓮見は頷いて、
「うん、そうなんだけど…。僕は…その、ちょっと嫌で…。中学までそっちに通って、高校は、ここに…」
と言った。ちょっと嫌か。少し気になる言い方だ。
「なんかあったのか。別に話しづらいことなら聞かねえけど」
まあ無理に聞き出すことではない。そう思って言ったが、蓮見は笑って、「そんな深刻な話じゃないよ」と言った。
「えっと、すごくざっくり話すと、僕…7個上に兄がいて」
7個上に兄ってことは、24歳。社会人か。
「同じ学校に通っていたんだけど…。お兄様は、なんでもできる人だから…。なんていうのかな、尊敬してるんだけど、何をしてもこう…比べられて、それが、ちょっと嫌で。違う道に進めば比べられないと思って、違う高校に行くことにしたの」
「なるほどな」
「まあ、でも結局、『凛太郎はできたのに』って、比べられるんだけど…」
そう言いながら、眉を下げて笑う蓮見。
「でも、仕方ないよね。お兄様は本当になんでもできる、すごい人なんだよ。頭もよくて、真面目で…」
「お前も頭いいし真面目じゃん」
「え? あ、でもね……お兄様には敵わないよ。お兄様は本当に格が違う。……小学校でも、中学校でも、高校でも、大学でだって、お兄様は首席。友達もたくさんいて、いつもいろんな人の中心にいて、みんな、みんなお兄様が好き。僕と違って、顔もかっこいいし、背も高くて、モデルさんみたいなんだ」
蓮見は自慢するように兄について語る。かなり尊敬していることがわかるが、伏し目がちに、口もとにはうっすらと笑みをたたえて話す様子はどこか悲壮感が漂っていた。兄を尊敬しているが、絶対に敵わない、雲の上の存在だと、それこそ比べてしまっているのだろう。ずっと比べられてきたらこうなるか。
こうやって吐き出すことで少しでも楽になればいい。そんなことを思いながら黙って聞いていると、蓮見は笑いながら言った。
「…本当に、何もかもが真逆で、お兄様と比べたら僕なんか、──ゴミ、みたいな」
あ、それは許せねえ。
「蓮見」
「あ、ごめん、ね? 僕ばかり話して…。つまらなかったよね」
「俺のダチ馬鹿にすんの、お前でも許さねえから」
「……え?」
「ゴミとか、二度と言うな」
「……え……?」
「おら、返事は」
「……え? は、い、…。」
「ん。次言ったら、コロ……。後悔させるから」
「……」
「……。そういや兄弟と言えば、俺も、千尋も、天音も一人っ子で──」
話を強引に変えてやった。少し強く言ったせいか、蓮見はなかなか話に入って来なかった。俺はしばらく一人で適当なことを話していた。
「マジ? 千尋と? どこ?」
「えっと…あの、大学附属の…」
「あー。フゾクとか、聞いたけど知らね。私立?」
「あ、うん、私立」
「いわゆる『お坊っちゃま学校』だ」
「まあ、うん、そう、なのかな多分…」
じゃああいつ、金持ちなのか。あいつの家はかなり近いが、たしかにでけえもんな。
「あいつどんなんだった?」
「あ、クラス被ったことなくて、あまり知らないんだけど…。名字が珍しいなって思った記憶があるから、一緒だったのはそうだと思う」
「へえ。でもさあ、そういう『お坊っちゃま学校』って、大学までエスカレーター式なんじゃねえの?」
俺がそう聞くと、蓮見は頷いて、
「うん、そうなんだけど…。僕は…その、ちょっと嫌で…。中学までそっちに通って、高校は、ここに…」
と言った。ちょっと嫌か。少し気になる言い方だ。
「なんかあったのか。別に話しづらいことなら聞かねえけど」
まあ無理に聞き出すことではない。そう思って言ったが、蓮見は笑って、「そんな深刻な話じゃないよ」と言った。
「えっと、すごくざっくり話すと、僕…7個上に兄がいて」
7個上に兄ってことは、24歳。社会人か。
「同じ学校に通っていたんだけど…。お兄様は、なんでもできる人だから…。なんていうのかな、尊敬してるんだけど、何をしてもこう…比べられて、それが、ちょっと嫌で。違う道に進めば比べられないと思って、違う高校に行くことにしたの」
「なるほどな」
「まあ、でも結局、『凛太郎はできたのに』って、比べられるんだけど…」
そう言いながら、眉を下げて笑う蓮見。
「でも、仕方ないよね。お兄様は本当になんでもできる、すごい人なんだよ。頭もよくて、真面目で…」
「お前も頭いいし真面目じゃん」
「え? あ、でもね……お兄様には敵わないよ。お兄様は本当に格が違う。……小学校でも、中学校でも、高校でも、大学でだって、お兄様は首席。友達もたくさんいて、いつもいろんな人の中心にいて、みんな、みんなお兄様が好き。僕と違って、顔もかっこいいし、背も高くて、モデルさんみたいなんだ」
蓮見は自慢するように兄について語る。かなり尊敬していることがわかるが、伏し目がちに、口もとにはうっすらと笑みをたたえて話す様子はどこか悲壮感が漂っていた。兄を尊敬しているが、絶対に敵わない、雲の上の存在だと、それこそ比べてしまっているのだろう。ずっと比べられてきたらこうなるか。
こうやって吐き出すことで少しでも楽になればいい。そんなことを思いながら黙って聞いていると、蓮見は笑いながら言った。
「…本当に、何もかもが真逆で、お兄様と比べたら僕なんか、──ゴミ、みたいな」
あ、それは許せねえ。
「蓮見」
「あ、ごめん、ね? 僕ばかり話して…。つまらなかったよね」
「俺のダチ馬鹿にすんの、お前でも許さねえから」
「……え?」
「ゴミとか、二度と言うな」
「……え……?」
「おら、返事は」
「……え? は、い、…。」
「ん。次言ったら、コロ……。後悔させるから」
「……」
「……。そういや兄弟と言えば、俺も、千尋も、天音も一人っ子で──」
話を強引に変えてやった。少し強く言ったせいか、蓮見はなかなか話に入って来なかった。俺はしばらく一人で適当なことを話していた。
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