心の居場所

紅子

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先生との会話

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心ってどこにあるんだろう、と先生がこぼした。

心が晴れたとか、心がスッキリしたとか。心が折れたとか、心が痛むとか。心、という言葉を使うけど、果たしてその"心"というものはどこにあるんだろうか。考えたことなかったなあと電車の窓の外を眺めながら思った。心は心臓の近くにあるんじゃないか、なんて適当なことを言ってはみたものの、全くしっくりこなかった。しかし、アリストテレスは、心は胸にあると言ったらしい。私の適当な意見と同じだった。またある哲学者は、心は脳にあると言ったという。分からなくもない、なんせ心というのはやはり感情と同じようなもので、それを感じるのは脳だからだ。だがしかし、もっとぴったりな表現があるのではないかと考えていたら、英単語なんか1つも覚えてないのに最寄駅に着いてしまった。 

楽しみなことがあると、心がウキウキする。好きな人のことを想うと、胸がドキドキする。悪口を言われると、心がチクチクする。人間にはたくさんの感情があり、それによって心の動作も変わるみたいだ。肉眼で"心"を見たことがある人はこの世に存在しない。ということは、心というもの自体が必ずしも存在しているとは限らないのだ。友達とスタバのフラペチーノを飲みながら、少しこの話をしてみた。友達は少し悩み、そして、心ってものはそもそもないんじゃないか、と答えた。心というものの存在、それはきっと誰にも分からないし、これからも謎なままなのだろう、と心で呟きながら、私は甘い新作のフラペチーノを口にした。

心ってものを見ることができないのは、心というものは体外にあるからではないのか。これはある作家が口にしていた言葉だ。今のところ私はこの人の意見が1番しっくりきている。そして、心は僕らを見下ろせる位置にいるのでは、という彼の意見が私の頭に残っている。ああ、なるほどなあと感じた。心の動きは自分の思い通りにいかない。それはやっぱり体外にあるからで、そして私のことを見下ろしているからなのだと考えた。

素直になれないというのは、自分の上に浮かぶ心というものとうまく対話できていないという事。頭では分かっているのに、心がまだ理解できていないのだろう。だから、素直である人は、心との対話が上手な人である、と考えた。好きなら好きだと、嫌いなら嫌いだと。脳から心に問いかけ、心がそれに応答してくれるまで身体は動かない。緊張したときに動きがぎこちなくなるのは、脳からの信号が緊張というものによって乱れて、心がうまく受け取れないのだという、あくまで自分の意見だが、その考えが頭に浮かんだとき私はすっきりした。だとすれば、私は心と対話することが苦手である。距離の取り方も、話し方も、うまくいっていないのだろう。

しかし、心の存在を、心の居場所を自分の中で見つけた今、真っ直ぐに向き合えるかもしれない。思ったよりも心は上の方に居なくて、すぐそこにぷかぷかと浮かんでいて、いつでもコミュニケーションが取れる位置にいるのかもしれない。

そう考えたらなんだか素直になれる気がしてきた。
先生、心はきっと、ほら。
先生は、私が指差した先をチラッと見て、ふっ、と笑った。
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