『真実の愛』謝罪会見

miyumeri

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「本日はお足元の悪い中、お集まり頂きまして誠にありがとうございます。
 只今より『真実の愛』著者レディ・モブテックによる謝罪会見を
 始めさせていただきます。
 この後モブテック本人が壇上に上がりますが、野次・物を投げる等は
 ご遠慮頂けますようお願いいたします。」



「この度は、私レディ・モブテックが書きました『真実の愛』の内容で
 各方面に多大なるご迷惑をおかけしたことを謝罪致します。
 本当に申し訳ありませんでした。

 今、子息令嬢の間で“真実の愛”による婚約破棄が正当化され
 非常に問題になっております。
 婚約破棄を口にする子息令嬢の多くは、
 私が書きました『真実の愛』の熱烈な読者であると調べでわかっております。
 私はあくまでもフィクションとしてこの『真実の愛』を書き上げましたが、
 まだ未成熟な少年少女に、悪影響を及ぼし行動をさせてしまったことは
 偏に私の配慮の足りない文章による影響であったと大変反省しております。

 言い訳にはなってしまいますが、 
 あくまでもこの作品は平民を対象とする雑誌連載からの書籍化でしたので、
 貴族の皆様に読んでいただけるような作品だと言う認識は
 全くございませんでした。
 しかし、販売に関して平民のみと言う制限はかけておらず、
 貴族の皆様に対する配慮や注意書きもしておりませんでした。

 この度の婚約破棄多発状態に影響を与えてしまった責任を痛感し、
 私レディ・モブテックはこの『真実の愛』の書籍販売を停止・絶版とし、
 収益は婚約破棄で心に傷を負った子息令嬢の皆様の心のケアに使っていただく為
 基金を設立し、その活動費用とする事にいたしました。
 この基金の創設には王家・貴族院からもご賛同とご支援をいただいており、
 近々貴族の皆様にご説明のお手紙を送らせていただきます。
 この度の婚約破棄騒動で傷ついたお子様のいらっしゃるご家庭には優先的に
 説明のできる職員を派遣いたしますので、ぜひお問い合わせをお願いします。

 長々とご説明いたしましたが、最後にもう一度
 本当に申し訳ありませんでした。」

「皆様に先程お配りいたしました用紙の中に、基金の概要もございます。
 ご興味のある方はぜひお読みいただき、お問い合わせください。
 
 では、ここからは質疑応答とさせていただきます。
 ご質問のある方は、挙手いただきご発言の際にはお名前をいただけますよう
 お願いいたします。 
 
 はい ではそちらの最前列右の方、ご質問をどうぞ。」

「はい 自分はシャイン伯爵家当主であります。
 この度の婚約破棄連鎖の影響で、当家次男の入婿先が破談となりました。
 相手方令嬢の『真実の愛』の影響で破談になったのですが、
 幼い少女の妄想を加速させるような文章を書いたことについて
 責任を取り、断筆をするおつもりはあるのかをお聞きしたい。」

「シャイン伯爵様、この度はご迷惑をお掛けする事態の発端になっていますこと
 非常に反省しております。
 出来ましたら、お話しできる範囲で構いませんので、
 婚約破棄の内容を教えていただけないでしょうか?」

「よろしい 当家次男は10歳の頃より同い年のお相手令嬢と婚約を結んでいた。
 相手の氏名に関してはここでの発表は遠慮させていただく。
 
 家同士共同事業の話が持ち上がった時に、
 より良い関係を長く保つために結んだ婚約だったが
 結婚まで後1年となった今年、相手令嬢から
 ”真実の愛を見つけたので婚約を破棄する”と唐突な申し出があった。
 その真実の相手とやらにも婚約相手がいたらしく 
 そちらの相手令嬢は絶望で修道院に入ってしまった。
 当家の次男も家を出て冒険者になるなどと言い出しており 
 将来的に共同事業の責任者とするつもりだったのに
 その共同事業すらも 家同士の慰謝料裁判等の揉め事で先行きが怪しくなってきた。
 真実の愛のせいで 当人達以外の多くの人間が人生を狂わされている。
 
 このような事例は当家のみではない。
 婚約破棄連鎖で多くの貴族が迷惑を被っているのだ。」

「ちょっと良いだろうか。」

「はい お、王弟殿下 どうぞお話ください。」

「途中で割り込むようで申し訳ない。
 この度の『真実の愛』のモデルとなっているのが
 王と王妃であることは、みなも感づいておるだろう。
 
 当時の状況は新聞等でかなり話題にもなり
 王家と子爵家の婚姻ということでかなり貴族院でも問題になった。
 それを息子可愛さにごり押しし、法を逸脱してまで婚姻させたのが、
 現皇太后である。
 その影響で 一時期は辺境伯が当国離脱を宣言する等 国家的危機にも瀕した。
 しかし、当時婚約破棄された辺境伯令嬢は国を憂い、辺境を憂い
 辺境伯を説得してくださり、何とか事が収まった。
 その後、辺境には当国髄一の猛者が入婿となり
 辺境伯令嬢とは仲睦まじく過ごしておられる。
 
 今回、モブテック女史が書いた『真実の愛』の内容は、
 まさにこの”婚約破棄された者も幸福になった”という逸話の影響が
 子息令嬢に婚約破棄を加速させることになった要因に違いないと考えている。
 たとえ、自分と破談になったからと言って
 相手にも真実の相手が出てくるであろうという幼い者のおとぎ話のような妄想、
 そこをしっかりと正せなかった王家にも責任の一端がある。
 
 当時、現皇太后の後押しによる婚姻を 悪しざまにいう貴族はほぼいなかった。
 王も王妃も国中の祝福を受け、婚姻は正当なものと捉えるような状態であった。
 しかし、王家はそこを正さなければならなかった。
 どうしても婚姻をしたいのであれば、口幅った言い方ではあるが
 現王は王家を離脱し、子爵家に婿入りすべきだった。
 しかし、当時王太子であった彼は非常に優秀であり、
 かつ子爵家令嬢は貴族学園一の才女と呼ばれる女性であったため、
 国益を考え 辺境伯に多大なる迷惑をかけてでも、婚姻がなされた。
 この部分を小説にするには、少々無理があったのであろう。
 政治的判断などの説明を小説に持ち込むのは無粋であったため、
 夢見がちな少年少女に合わせ、柔らかな表現になってしまった。
 
 たしかに作者モブティック女史に責任があることは間違いないが、
 その夢見がちなおとぎ話のようなストーリーを連想させる婚姻を
 押し進めてしまった王族・貴族院の責任も軽くはないと思っている。
 なので、今回の被害者救済基金に 王家・貴族院も賛同・出資し
 今後の子息令嬢の社会復帰に協力していくつもりである。
 
 ちなみに、モブテック女史はこの『真実の愛』出版後、
 まったく真逆な『ざまぁ宣言いたしますわ』という恋愛小説も執筆している。
 この物語のストーリーは
 王太子他上位貴族子息たちが 一人の男爵令嬢の毒牙にかかり、
 卒業記念パーティーにて彼女の嘘の告発を理由に、次々と婚約破棄を叫ぶが
 全て証拠なし、逆に男爵令嬢の嘘だという証拠を突き付けられ、
 王太子他バカ者どもに 廃嫡・追放等重い罪が課せられる。
 そして、婚約破棄を宣言された令嬢たちは みな新しい婚約者を見つけ
 幸せになる。というものだ。
 このようにモブティック女史は、前作とは真逆のストーリーを書くことによって、
 夢見がちな少年少女に因果応報を教えているとも思える。
 実際、そのような嘘の告発による婚約破棄事件などがあれば
 関係者はみな廃嫡・追放になるであろう。
 前作の『真実の愛』が楽観的おとぎ話であるとすれば
 次作の『ざまぁ宣言いたしますわ』は教訓的おとぎ話である。
 平民間では この次作のほうが前作よりも売り上げが多く、
 貴族に対するレジスタンスに影響があるのではとも懸念されていたが、
 平民のほうがはるかに現実的で、あくまでも読み物として楽しまれている。
 このように、平民のガス抜きができる書物を書く才能がある彼女には、
 今後も創作活動を続けていただき 
 王家・貴族に対するレジスタンスを薄めてもらう方が得策ではないか。
 自分はそう考えている。」

「王弟殿下、率直なお考えをお伝えいただき 誠にありがとうございます。

 はい、王弟殿下のお隣の方 どうぞ。」

「うむ、自分は今期貴族院代表 辺境伯当主である。
 ちなみに先ほど話に出た、辺境に入婿したのは自分だ。

 確かに自分は、奥と婚姻し幸福になった。
 しかし、彼女は婚姻前は非常にナーバスになり 一時は修道院行きも考えていた。
 それほどまでに婚約破棄は、やられた者に傷を残す。
 王都での王太子結婚式にも出席せず、
 辺境という地で貴族の悪意ある噂にさらされることのなかった環境だったからこそ
 立ち直れたとも奥は言っていた。
 
 そんな状況で当時貴族院は配慮するべき相手を間違え、現皇太后の配慮ばかりをし
 辺境伯家にきちんとした謝罪がなされ賠償がされたのは、自分の婚姻後であった。
 王太子・王太子妃から王・王妃になられたお二人は辺境までお見えになり、
 現皇太后の手前 謝罪に来ることもままならず遅きに逸したこと
 心より謝罪くださった。
 そこでやっとわが奥は立ち直れたのだ。

 その謝罪すら 王が辺境に赴くべきではない と貴族院から反対意見も出たという。
 そのような無慈悲な貴族院を改革したく、自分は今期代表に立った。
 いつでも自分の身に降りかかりえる不幸、
 それを王家を阿りおもねりすぎ 目を瞑るのではなく、
 しっかりと意見が出せる院とするため、誠心誠意努めている。
 そんな自分が代表になった今期に このような事件が多発しているのも因果かな。
 当事者としての経験を踏まえ言わせてもらえば、少々乱暴ではあるが
 そのような小説に影響されるような甘い教育しか施さなんだ保護者にも
 責任の一端はあるのではないか?
 婚約とはどのようなものか、なぜ重要なのか それをきちんと理解させるのも
 親の務めであると自分は考える。
 モブティック女史には申し訳ないが、恋愛小説ごときで揺らぐ婚約など
 他の些細な要因でも 結局破棄になるのではないかな。
 解消や白紙という手段があるというのにそれを取らず、
 ただわがままな幼子のように駄々をこねる。貴族としてあるまじき行為。
 たとえ成人前といえども 平民を束ねるものとして不適格なのは明らか。

 貴族院としては、今後 婚約破棄を重大なる理由無くして宣言し
 相手の名誉を傷つけた者は、降格処分にすべき と王に進言している。
 王も自分の行いを省み、その案を承認しておられる。
 みなには 次の貴族院全体会議にて通達を出す予定であるから
 出席しじっくりと内容を確認してほしい。以上だ。」

「辺境伯様、ありがとうございます。他にご質問のございます方は・・・

 はい、そこのお若いあなた。どうぞおねがいします。」
 
「はい、自分は今期貴族学院生徒会会長 デューク公爵家嫡男サクシードです。
 この度の件でモブティック女史に謝罪に参りました。

 この婚約破棄多発状態の発端となったのが、
 我が生徒会役員どもの 男爵令嬢贔屓でありました。
 彼女は、今年から当貴族学院に編入してきた令嬢で、
 元平民が男爵家に養女として引き取られた女性でした。
 彼女は、多くの男性生徒を誘惑し、
 その中に 当生徒会書記の伯爵家次男と会計の侯爵家嫡男 が入っておりました。
 彼らは、真面目過ぎるゆえか誘惑に勝てず 
 彼女の嘘の告発で婚約破棄をしでかしました。
 そうです。まさに『ざまぁ宣言いたしますわ』の劣化版状態です。
 もちろん今、彼らは当学院を退学し それぞれの家で改心教育を施されています。

 この事件に酷似していると『ざまぁ宣言いたしますわ』が生徒内で話題になり、
 前作『真実の愛』も注目を浴びることとなりました。
 その際、どこからか『真実の愛』は王と王妃の実話であると噂が立ち、
 下位貴族生徒たちには『真実の愛』のほうが人気を博し、
 貴族としての厳格な教育を施されていない1年生や不勉強な生徒たちが
 あこがれを持って、この『真実の愛』探しをはじめ
 このような事態になってしまいました。

 生徒会としては、モブティック女史の小説が最初に注目を浴びた時点で
 生徒たちにしっかりと注意喚起し、無差別に『真実の愛』を探さないこと
 婚約破棄などとバカげたことをするデメリットを忠告すべきでしたが、
 遅きを逸し、モブティック女史が謝罪会見を開くような事態に
 至ってしまいました。
 女史は、創作活動を精力的になさっただけで、
 貴族子息令嬢に婚約破棄をほのめかしたわけではありません。
 考えの浅いバカ者どもが 物語に影響されたと言い訳をしながら、
 契約である婚約を破棄するという悪行を行っただけです。

 自分は、女史が最近執筆されました当国の初代ファウンダー王の建国物語
 『その王猛者也』を読了し いたく感動いたしました。
 歴史考察もしっかりとなされ、ファウンダー王の性格や行動も
 表現豊かに文章にされた女史に 尊敬の念を抱いております。
 この本は、当学院暦学教師も非常に感銘を受け、
 来期の副読本として採用される予定です。

 そんな女史に、汚点を背負わせてしまった自分はどう責任をとれるだろう・・・
 と自問自答してきましたが、この場で女史に謝罪することしか思いつかず
 本日学院を代表して謝罪に参りました。
 浅はかな学生の行動により すばらしい作家であるモブティック女史に
 大変なるご迷惑をおかけし、本当に申し訳ございませんでした。
 謝ってすむことではありませんが、未成人の自分には
 このような方法しか思いつかず うぅぅぅぅ(涙」

「サクシード様、どうかお座りください。
 私こそ、生徒の皆様にご迷惑をおかけし申し訳なく思っております。
 後書きなり書評帯びなりで、しっかりと注意喚起していれば
 防げていたと思います。
 たとえ0にはできなくとも、数はずいぶん減らせたことでしょう。
 それを怠ったのは執筆者である私の至らなさ故です。
 ですから、どうかお若いあなたがそんなにお心をお痛めにならないでください。」

「サクシード様、ほんとうにありがとうございました。他にご質問のございます方

 はい、後ろのあなた。どうぞ」

「王都新聞記者 マスメと申します。
 モブティック女史にお伺いしたい。
 あなた、実は元男爵令嬢というのは本当ですか?」

「・・・はい、すでに家を出され 名を名乗ることを禁じられておりますので
 家名は控えさせてください。」

「やはりそうでしたか。
 その勘当された恨みから 今回このような書籍を執筆し、
 実家を貶めようとしているのではないですか?」

「おい、なんて卑劣な質問だ。女史!答える必要なんかありませんよ!」

「サクシード様、今は自分が質問しております。黙っててください。」

「・・・特には実家を貶めようと考えて創作した意図はありません。
 『ざまぁ宣言いたしますわ』の悪女を男爵令嬢としたのは、
 自分が貴族であった時の立ち位置等が 経験上良く分かっておりましたので
 真実味を出すために その設定にしたまでです。
 けっして元家を貶める等の意図はありません。」

「では、なぜあなたはご実家を勘当されたのですか?」

「それは・・・」

「言えないんですか?後ろ暗いことがあるからですか?」

「・・・我が家は厳格な家庭で、
 女子は家のため子を産み育てるのが最上の仕事といわれ育てられました。 
 しかし、12の時 事故で腹部を強打しその時の処置の遅れと投薬間違いで 
 子を望めなくなってしまいました。
 子を産めぬ女は、家のためにはなりません。
 親には修道院に入るよう言われましたが、当時の私は物を書くことに希望を見出し
 作家になりたいと申しましたが理解が得られず、結果家を出ることとなりました。
 その後は、出版社頭取のご配慮でペンネーム“レディ・モブティック”として
 創作活動をさせていただき 今に至ります。
 
 第三者から見れば、実家に恨みがあると思われるかもしれませんが 
 私にとって創作活動は生きる光。
 恨みつらみを原動力に創作をしているわけではないのです。
 ただ、いろいろと詮索されるのが煩わしい と過去を隠しているのも事実。
 その疑念は今後の創作活動で解消していけたらと思っています。」

「マスメ君 君の勤務先は王都新聞と言ったね?」

「は? 王弟殿下?   はい、王都新聞芸能部であります。」

「そうか。王都新聞とは女性に対して随分と冷たい会社なのかな?」

「いえ、そのようなことはございません。民の知りたい情報をまんべんなく網羅し
 もちろん婦女子の読者にも好評を得ております。」

「では、今モブティック女史に無理やり暴露させた件、
 婦女子読者は喜ぶと思うかい?」

「それは・・・しかし事実ならば報道されても仕方ないと」

「そうかい。では君の明かされたくないこともすべて記事にするんだね?」

「それは・・・」

「いいんだよ、それが記者魂だというのであれば 人それぞれの信念。
 責めはしないよ。
 しかし、人のことは暴露して相手や読者に悲しい思いをさせても仕方がないのに
 自分のことは絶対暴露されたくない。そんなことは通らないと思わないかい?」

「・・・・」

「人はだれしも 秘密を持っているものだ。
 それが犯罪であれば、しっかりと公表し罰を受けさせるべきだとは思うが、
 彼女の秘密は犯罪なのかね?
 傷ついた心にナイフをねじ込む行為とは思わないかい?」

「はい・・・申し訳ございません。配慮が足りませんでした。
 
 女史、謝罪いたします。どうかこの質疑はなかったものとしていただきたい。
 もしどこかから記事になったとしたら、私は全力でその記事を潰しますし
 編集部から記事にしろと強要されたら、ペンを折ります。」

「王弟殿下、マスメ様、ご理解いただきありがとうございます。
 今後、誠心誠意創作活動に精進してまいりますので、どうか見守ってください。」

「ご意見ありがとうございました。
 ただいまの質疑応答は 議事録から削除させていただきます。

 他にご質問がある方はいらっしゃいませんか?
 いらっしゃらなければ、そろそろ謝罪会見を終了させて」

「あの!」

「はい、ご質問ですか?どうぞ」

「質問じゃないんですが・・・自分は第3騎士団副団長ナイツと申します。
 第3騎士団はほぼ平民で構成されている騎士団ですが、
 自分は先日騎士伯を賜りました。
 自分は・・・女史の初期作品『騎士の本分』からのファンで
 女史が騎士団に取材に来ていらした頃から、ずっとお慕い申し上げておりました。
 今回、このような騒動で女史がどれだけ傷ついていらっしゃるかと考えただけで
 いてもたまらず・・・。

 どうか、自分に女史を守る権利をお与えいただけないでしょうか?
 絶対幸せにします。泣かせたりなどいたしません。
 自分のほうが年下ではありますが、年下では心許ないでしょうか?」

「おいおい、こんな場で告白するとは。若いなぁ。

 先を越されてしまったが、
 私も彼女と会見を重ねるうちに 創作活動に対する熱意に惚れてしまったんだよ。
 王弟と平民では婚姻はできないが、元男爵令嬢であればどうとでもなる。
 モブティック女史、私と婚姻を前提にお付き合いをしてくれないだろうか?
 私には前妻との間にすでに嫡男がいるので、その点の心配は無用だよ。
 騎士の彼と違い 年はかなり上だが、その分不自由はさせないし
 創作活動にも十分理解を持っているつもりだ。どうだろう?」

「ぼ、ぼくもまだ学生の身分ですが、女史を尊敬しております。婚約者もいません。
 デューク家も王弟殿下ほどではありませんが、苦労させない自信はあります。
 若い自分なら、女史のお考えに寄り添いついていくことができます。
 どうか自分をお導きください!」

「えー、皆様。落ち着いてください。この場は謝罪会見でございます。
 結婚申込会場ではございません。
 
 それから補足となりますが、
 モブティックは、先日当出版社頭取と婚姻いたしました。
 今回の騒動で傷心の彼女に 寄り添い、愛情を注いだ頭取との結婚。
 どうか皆さま、拍手をもって祝福ください。
 (パチパチパチパチ)ありがとうございます。
 式は、基金運営が軌道に乗った後 行う予定でございますので
 その際には記者の皆様、ぜひ取材にお越しください。

 では、今回の謝罪会見は この辺で終了させていただきます。
 最後に、レディ・モブティックより皆様に再度謝罪させていただきます。」

「皆様、本当にご迷惑をおかけいたしました。
 そして、結婚のご報告も遅くなり申し訳ございませんでした。
 今後は基金・創作に全力を注ぎ、彼と二人三脚で人生を進んでいきたい
 と思っております。ご理解よろしくお願いいたします。
 これで終了させていただきますが、どうかお気をつけてお帰り下さい。
 ありがとうございました。」








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みんなの感想(1件)

道産子
2021.07.04 道産子

面白かったです(*≧∀≦*)

miyumeri
2021.07.04 miyumeri

ありがとうございます(喜
励みになります。
御縁が続きますよう
作品更新頑張ります(๑•̀ㅂ•́)و✧

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