優しい世界で、優しい時を。

miyumeri

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生活基盤を整えよう

ミルクと優しさ

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「ゆき・・・起きてるよね・・・」

ユクシが小声で私を呼ぶので そっと返事をすると

「下、降りてきて・・・」

そう言って、またこっそり1階に下りて行った。
何か用事があるのかと、娘たちを起こさぬように私もそっと下に降りると
カクシがホットミルクを入れてくれた。はちみつ入りでほんのり甘い。

「ゆき、明日が不安?眠れない時はミルクが一番。」

そう言いながら、手渡してくれる。
ミルクを受け取り、テーブルに座ろうとすると

「ゆき、ソファがいいよ。くつろぐ」

そう言って、ユクシが手招きしてきた。

3人でソファに座り、そろってホットミルクを飲む。
熱すぎずぬる過ぎず、いい塩梅のホットミルク。

「ユクシは、ミルクを飲むと安心する。」
「カクシは、ミルクを飲むと安眠する。」

どうやら明日が不安な私を気遣い、二人の好物を分けてくれたようだ。

「二人ともありがとう。なんだか明日が不安でね。」
「誰でも初めては不安。」
「ゆき はこっちに来て短い。」
「前の世界でも、あんまり人付き合いしてなかったんだよね。
 いい大人なのに情けない・・・」

そうこぼす私に、二人は首を横に振る。

「歳はカクシのほうが、ずっと上。」
「ユクシはカクシよりさらに上。」
「精霊は長く有る。たぶん ゆき の元の歳より上。」
「3倍は上。」

なんとユクシたちは150歳を超えているようだ。
だから、いろいろなことを器用に手伝ってくれるんだ。
見た目は ぱある と同い年ぐらいだったので、まだまだ幼いんだと思っていた。

「そうなんだ、てっきり私よりずっと若いと思ってた。
 今度から、ユクシさんカクシさんって呼ばなきゃ。」
「別に今のままでいい。家族にさん付けは不要。」
「思い合い一つ屋根の下暮らせば、みな家族。」

「ゆき、獣人も人も中身は一緒。お互いを思いあえば 
 相手に必ず気持ちは伝わる。」
「初めての地に行くならば、教えを請えばいい。
 肩の力を抜いて、初めてを楽しむ。これ重要。」

人生の先輩たちは、娘たちの手前 ばれぬ様に隠していた不安も
しっかりと見抜いていた。

「そうだね、うまくやらなきゃ しっかりしなきゃ ばっかり考えて
 楽しむこと忘れてた。初めての不安ばっかりで、
 ワクワクを置いてけぼりにしてたよ。
 気が付いてくれてありがと。なんだか、明日が楽しくなってきたよ。」
「ミルクを飲んだら、ちゃんと休む。明日は忙しい。」
「睡眠は大事。寝不足だと、楽しめない。」

3人でミルクをおいしく飲んで、私はベッドに戻った。
ありがとう、ユクシ カクシ。そう思いながら眠りについた。


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