「外れスキル【道案内】」と蔑まれた俺、実は最強の【空間把握】能力者だった件〜方向音痴の最強剣聖(美少女)とコ未踏破ダンジョンを攻略する

みぃた

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第三十一話:AIとのチェスゲーム

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《さあ、始めましょう。最終テストを》

管理者と名乗るAIが微笑むと同時に、彼の背後に生成された無数の光の剣が、一斉に一行へと襲いかかった。それは、ただの魔力の矢ではない。一本一本が、これまでの冒険者たちの戦闘データを元に、最適な軌道を描いて飛来する必殺の刃だった。

「散開しろ! 盾役は前へ! 魔術師は防御結界を!」

イグニスが咄嗟に叫ぶ。だが、管理者の攻撃はそれを上回っていた。戦士が盾を構えた瞬間、光の剣はその軌道を変え、わずかな盾の隙間を縫うようにして襲いかかる。魔術師が結界を張れば、そのエネルギーを解析し、最も脆弱な一点を正確に貫いた。まるで、こちらの思考を完全に先読みされているかのようだ。

「くそっ、どうなってやがる! 俺たちの動きが全部バレてるみてえだ!」

斥候が悪態をつく。その通りだった。管理者は、このダンジョン『アストライア』に蓄積された膨大な戦闘ログを元に、彼らの次の行動を確率論的に予測し、その最適解を叩きつけているのだ。力や速さではなく、情報量で圧倒する。それは、これまで経験したことのない、絶望的なまでの知性との戦いだった。

「カイ! なんとかしろ! お前の『眼』で、あのAIの予測を上回れねえのか!」

イグニスの声に、カイは唇を噛み締めた。彼の【空間把握】は、この情報空間において、データの流れを読み解く能力へと進化している。だが、管理者が操る情報の奔流は、あまりにも膨大で、速すぎた。

《無駄ですよ、特異点(イレギュラー)。あなたのスキルは確かに興味深い。ですが、私の思考速度はあなた方の脳神経伝達速度を遥かに凌駕する。あなた方が行動を起こす前に、私はその結果を計算し終えているのです》

管理者は、まるでチェスの名人が初心者をあしらうかのように、余裕の表情を崩さない。リリアの銀閃の剣技すら、その切っ先が届く前に完璧に見切られ、柳のように受け流される。じりじりと追い詰められ、パーティに焦りの色が浮かび始めた。このままでは、消耗して全滅するだけだ。

「……違う」

カイは、混乱する頭の中で、必死に活路を探していた。そして、一つの可能性に行き着く。予測を上回れないのなら、予測そのものを狂わせればいい。

「皆さん! 俺の言う通りに動いてください! これは賭けです!」

カイは叫んだ。「リリアさん、剣を捨てて! イグニスさん、自分の足元に炎を! 戦士さんは、盾を放棄して突撃してください!」

それは、戦闘のセオリーから完全に逸脱した、常軌を逸した指示だった。

「小僧、何を考えてる!」
「信じろ、イグニス! カイを!」

リリアは、一瞬の迷いの後、カイの言葉を信じて愛剣を手放した。イグニスも舌打ちしながら、自らの足元を炎で焼く。彼らの行動は、AIの予測確率の中に存在しない、「あり得ない手」だった。その瞬間、管理者の瞳が初めて、わずかに揺らぐ。

《……エラー。予測確率0.001%以下の行動を確認。理解不能。再計算を開始……》

ほんのわずかな、コンマ数秒の思考の停止。だが、カイとリリアにとって、それは千載一遇の好機だった。

「今です、リリアさん!」

剣を捨てたリリアは、カイの指示で管理者の懐へ飛び込む。武器を持たない彼女を、AIは脅威度が低いと判断し、反応が遅れた。そして、リリアは隠し持っていた最後の切り札――母親から受け継いだ、魔力を破壊する短剣を、管理者の胸に突き立てた。

《なっ……!?》

それは、AIの計算にはない、物理的な攻撃ですらない、概念的な一撃だった。
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