「外れスキル【道案内】」と蔑まれた俺、実は最強の【空間把握】能力者だった件〜方向音痴の最強剣聖(美少女)とコ未踏破ダンジョンを攻略する

みぃた

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第五十二話:嘆きの海と海の民

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翌日、カイとリリアは、朝早くから港へ出て、漁師たちから直接話を聞いて回ることにした。最初は、突然現れた見慣れない二人に警戒心を示していた海の男たちも、リリアの凛とした佇まいと、カイの誠実な眼差しに、少しずつ重い口を開き始めた。

彼らの話は、どれも同じ内容だった。街の沖合に、『嘆きの海域』と呼ばれる場所があるという。そこは、魚一匹いない死の海で、海流は乱れ、空には常に灰色の雲が垂れ込めている。コンパスは狂い、船は原因不明の不調を起こす。一度迷い込めば、二度と帰っては来れないとさえ言われている、漁師たちが最も恐れる場所。そして、その『嘆きの海域』が、年々、少しずつその範囲を広げているのだという。

「わしらのじいさんの代までは、あの辺りが一番の漁場だったんだがな……」

一人の年老いた漁師が、皺だらけの手で網を繕いながら、遠い目をして語った。「沖には、海の神様を祀る『水底の社』があって、豊漁と安全を守ってくれていた。だが、いつからか、社の加護は消え、海は嘆き始めた。今じゃ、誰も寄り付かんよ」

その話を聞きながら、カイは再び、海に意識を集中させていた。漁師たちの話す『嘆きの海域』。そこから、ひときわ強い哀しみの波動が伝わってくる。それは、自然のものではない。冷たく、硬質で、まるで機械が発するような、無機質な苦痛の信号。

「『アーク』の残滓……」

リリアが、低い声で呟いた。可能性は高い。ゲオルグたちが遺した負の遺産が、この美しい海をも蝕んでいるのだ。母が愛し、守ろうとしたこの星を、これ以上汚させるわけにはいかない。リリアの心に、静かだが燃え盛るような怒りの炎が灯った。

「カイ。その『嘆きの海域』の中心に何があるか、もっと詳しく分かる?」
「はい。やってみます。でも、少し時間がかかるかもしれません。とても広くて、深いですから」

カイは頷くと、港で一番高い岬の先端へと向かった。リリアは、そんな彼の背中を、絶対の信頼を込めて見守る。二人の役割は、もう決まっていた。カイが『眼』となり、真実を見通す。そして、リリアが『剣』となり、道を阻む困難を切り拓く。かつてダンジョンで培われた絆は、新しい舞台でも、彼らを導く光となるはずだった。
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