「外れスキル【道案内】」と蔑まれた俺、実は最強の【空間把握】能力者だった件〜方向音痴の最強剣聖(美少女)とコ未踏破ダンジョンを攻略する

みぃた

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第六十四話:精霊の寝床、幻惑の森

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ポルト・マーレを出発して二週間。カイとリリア、そして道案内役の老人ゴードンを乗せた馬車は、険しい山道を進んでいた。『精霊の寝床』と呼ばれる山岳地帯は、その名の通り、神秘と危険が同居する場所だった。空気中に満ちる魔力はあまりにも濃く、時折、空間が陽炎のように揺らめき、幻覚を見せる。

「この先は、馬車を降りて進むしかあるまい」

ゴードンが、長年の経験に裏打ちされた目で、前方の森を見据えた。「『惑わしの森』じゃ。一度入ったら、二度と出られんと言われとる」

その森からは、カイの力をもってしても、明確な道筋を感じ取ることができなかった。あまりにも多くの魔力が、複雑に絡み合い、彼の感覚を乱すのだ。だが、呪いの源流へと続く、か細い糸だけは、確かにこの森の奥へと向かって伸びていた。

「行きましょう。俺が、糸を見失わないようにします」

三人は、森へと足を踏み入れた。一歩入っただけで、空気が変わる。木々のざわめき、鳥の声、その全てが、まるで何かを語りかけてくるように響き、心を惑わす。ゴードンは、長年の勘を頼りに進むが、何度も同じ場所をぐるぐると回っているかのような感覚に陥った。

「いかん……。完全に、術中にはまってしもうた……」

ゴードンが、悔しそうに呟く。だが、カイは落ち着いていた。

「ゴードンさん、大丈夫です。こっちです」

カイは、周囲の幻惑には一切目を向けず、ただ、心の中に浮かぶ一本の糸だけを頼りに進んでいく。彼のその姿は、絶対的な自信に満ちていた。リリアは、そんな彼の背中を、頼もしげに見守る。いつの間にか、守られる側だった少年は、どんな困難な状況でも、道を切り拓くことができる、たくましい男へと成長していた。

数時間後、カイの導きで森を抜けた彼らの目の前に、信じられない光景が広がっていた。険しい山々に囲まれた、盆地。そこに、まるで世界から忘れ去られたかのように、静かな村が佇んでいたのだ。水車が回り、畑には作物が実り、家々の煙突からは、穏やかな煙が立ち上っている。

「こんな場所に、村が……? 長年、この山で暮らしてきたが、全く知らんかったぞ……」

ゴードンが、驚愕の声を上げる。村全体が、強力な結界と幻術によって、その存在を隠されていたのだ。そして、カイは確信した。呪いの糸は、間違いなく、この村の中心へと向かって伸びている。

村の入り口には、簡素な門があり、二人の門番が立っていた。彼らは、カイたちの姿を認めると、驚いたように顔を見合わせ、そして、ゆっくりと近づいてきた。その首元には、一様に、黒い薔薇の紋様が刻まれた、小さな木彫りの護符が下げられていた。間違いない。ここが、『黒薔薇』の隠れ里だ。
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