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幼馴染だから
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街灯がまばらに道を照らす暗い河川敷。ひとり泣き続けるヒロトの下には、乾いた嘔吐の後がくらい地面の上にさらに黒い跡を作る。周りに人の影は見当たらない。川の流れる音がずっと響いてる。どれだけ泣いて喚き散らしても、見た現実が都合よく無くなったり書き換わったりするわけではない。現実は現実としてちゃんとそこにある。
「……ここ……どこだ。」
知らない土地の静寂は普段聴いてるものより、数倍静かに聴こえる。とりあえず大通りに出れば自分がどの辺まで来たのか分かるだろうと思い、周りを見回してあかりが密集している方を目指す。
「あ……駅だ……」
駅名を見てみると、普段大学の登校のために使う上り線とは反対方向に2駅分走ったようだった。全力疾走した左脚が震える。このまま始発を待ってもいいが、駅前の時計を見ると時刻は深夜の2時過ぎ。始発まではまだ三時間近くある。
「財布は……持ってないよな……」
思えば寝巻きのまま衝動のままあの家を飛び出した。携帯も財布も、鍵でさえ持ってきてない。
「……歩くか」
線路沿いを歩いて行けば、必ず最寄り駅にたどり着くことができるだろうと、考え歩き出す。20分ほど歩いてひとつ駅が見えてきた。最寄り駅のひとつとなりの駅、どうやら道は間違ってなかったらしい。そのまま歩みを続け、だんだんと見慣れた駅近くの光景が見えてきた。駅前の時計が指すのはちょうど3時。歩いて1時間の距離を全力疾走した。
そのままの重い足を動かして、家にもどる。
(……アイツら中で寝てるのかな。)
ドアを開けたらどうか、いつもと変わらない、レンとアキはそれぞれの部屋で寝ている光景が広がっていて欲しい。いや、それはそれで傷つくかもしれない。自分がこんなに取り乱しているのに、ふたりが何も気にしていなかったら、すこし……というかかなり悲しい。わがままだ。
「……よしっ!」
気合を入れてドアノブに手をかける。鍵は空いてる。中を見ると、明かりはついてない。
(寝てる……かな……)
物音を立てないように2人の部屋を確認する。
……ふたつともベッドに影はない。どこか、ホッとするスバルがいる。リビングを覗くとひとつ影あった。
「……アキ?」
アキがソファの上でうずくまっていた。その身体がビクッと跳ねる。
「レン……?スバルは……ッ!スバルッ!おまえ!」
――――――ッ!
左頬が熱い。口の中が少し鉄の味がする。殴られた衝撃で混乱する。
「……なんっ」
「おめぇ夜中に突然姿を消したと思えば、急に戻ってきて謝罪より先に出るのがその言葉とはどういうご身分だあ。」
「……ごめん。」
今はそれ以上言えなかった。
「……ッ!もういいから、怪我はないんだな?脚は……なんもないな?」
「……あぁ大丈夫だよ。心配かけて悪かった。」
「悪いと思ってんなら……急にいなくなったりするな。携帯も持たずに。ただでさえ脚が悪いのに」
―――脚だよな。
「あぁ、もうこんなことはしないこれっきりだ。」
「……ならいい、一緒にレンが戻ってくるの待つぞ。」
ふたりでソファに座り、レンの帰りを待つ。リビングは静寂のまま、何も話せず気まずい空気が場を支配する。
「なぁ……アキ。俺たちって幼馴染……だよな?」
「あ?何言ってんだお前当たり前だろ?やっぱどっか悪いとかなら……」
「違うんだ。……違う。大丈夫だから。」
急に頭を引き寄せられる感覚がする。
「スバルが何考えてんのかわかんねぇけど、不安なのは分かる。今は寝とけ。」
辛い時に優しくされると、嬉しくて泣きそうになる。誰しもそうだ。
「……うん。ありがとうアキ。」
涙が出るのを堪えて、目を閉じる。
―――――――――――――――――――――――
「スバル、お前も……てさすがに無理させられねぇか。」
「スバルくん脚大丈夫?キツかったら手伝うからね。」
「スバル、脚はもう平気なのか?」
思い出せるはずもなかった。ただの記憶の一部が夢に現れる。
「大丈夫だよ。」
「平気だ。」
「大丈夫だから。」
「平気だから!」
――――――――――――――――――――――――
目を覚ますと朝になっていた。カーテンの隙間から晴れた朝日が足元を照らす。時間は10時を過ぎたところで、一限の授業には今から行っても間に合いそうになかった。隣を見るとスバルに肩を貸す形でアキがいて、スバルとアキの間に床に座りアキの膝に頭を置くレンがいる。
スバルが動くと、それに気づいたレンが頭をあげる。
「……ッ!スバル!」
急にこちらを振り向く。その目は昨日の敵意のある鋭い目ではなくて、純粋にスバルのことを心配する目だった。こちらを確認すると、目が和らぎフッと息をつく。
「おはよう、スバル。大丈夫かい?」
あまりにも普通だった。
「お、おう。おはよう、レン。その、昨日は心配かけて……ごめん。」
「……いいんだよ謝らなくて、僕の方こそごめん。」
「ん~うっせお前ら。」
場違いな、アキの眠そうな声が響く。
「……朝ごはんにしよっか。」
レンはキッチンに向かい食パンをトースターに入れる。
「朝は、トーストと目玉焼きでいいかな?あ、飲み物は温かいものと冷たいものどっちがいい?」
「じゃあ、コーヒーで」
「わかった。すぐ準備するから顔洗っておいで。ほら、アキ、朝だから起きて!」
「んお~……。ってスバルは!?」
隣に居たはずのスバルが居なくなって焦るアキ。
「大丈夫だよ。今顔洗いに行ってるとこだから。」
安心したようにソファに仰け反り天井を仰ぐ。キッチンで目玉焼きを作っているレンに近づき、肩に顔を埋め腰に手を回す。
「スバル、昨日今日ってなんか変じゃない?」
「ん~、そうかもね。でも、スバルから話してくれない限り僕たちには何も出来ないから。」
幼馴染であっても、全てが手に取るように分かるわけではない。ちゃんと言葉で伝えなければ、気持ちや考えは伝わらないし、相手の想像の中でしか予想はできない。ちゃんと言葉で伝え、自身はこう思ってる、相手にはこうして欲しい、これは嫌だ、と伝えることがどんな人間関係においても大事である。それをしないで、付き合いの長い相手ならわかってくれるだろうと、勝手に期待して勝手に怒ることはただの傲慢でわがままな子供と同じだ。
この3人はずっと側でお互いを見てたからこそ、伝えることの大切さを忘れているのかもしれない。
「……ここ……どこだ。」
知らない土地の静寂は普段聴いてるものより、数倍静かに聴こえる。とりあえず大通りに出れば自分がどの辺まで来たのか分かるだろうと思い、周りを見回してあかりが密集している方を目指す。
「あ……駅だ……」
駅名を見てみると、普段大学の登校のために使う上り線とは反対方向に2駅分走ったようだった。全力疾走した左脚が震える。このまま始発を待ってもいいが、駅前の時計を見ると時刻は深夜の2時過ぎ。始発まではまだ三時間近くある。
「財布は……持ってないよな……」
思えば寝巻きのまま衝動のままあの家を飛び出した。携帯も財布も、鍵でさえ持ってきてない。
「……歩くか」
線路沿いを歩いて行けば、必ず最寄り駅にたどり着くことができるだろうと、考え歩き出す。20分ほど歩いてひとつ駅が見えてきた。最寄り駅のひとつとなりの駅、どうやら道は間違ってなかったらしい。そのまま歩みを続け、だんだんと見慣れた駅近くの光景が見えてきた。駅前の時計が指すのはちょうど3時。歩いて1時間の距離を全力疾走した。
そのままの重い足を動かして、家にもどる。
(……アイツら中で寝てるのかな。)
ドアを開けたらどうか、いつもと変わらない、レンとアキはそれぞれの部屋で寝ている光景が広がっていて欲しい。いや、それはそれで傷つくかもしれない。自分がこんなに取り乱しているのに、ふたりが何も気にしていなかったら、すこし……というかかなり悲しい。わがままだ。
「……よしっ!」
気合を入れてドアノブに手をかける。鍵は空いてる。中を見ると、明かりはついてない。
(寝てる……かな……)
物音を立てないように2人の部屋を確認する。
……ふたつともベッドに影はない。どこか、ホッとするスバルがいる。リビングを覗くとひとつ影あった。
「……アキ?」
アキがソファの上でうずくまっていた。その身体がビクッと跳ねる。
「レン……?スバルは……ッ!スバルッ!おまえ!」
――――――ッ!
左頬が熱い。口の中が少し鉄の味がする。殴られた衝撃で混乱する。
「……なんっ」
「おめぇ夜中に突然姿を消したと思えば、急に戻ってきて謝罪より先に出るのがその言葉とはどういうご身分だあ。」
「……ごめん。」
今はそれ以上言えなかった。
「……ッ!もういいから、怪我はないんだな?脚は……なんもないな?」
「……あぁ大丈夫だよ。心配かけて悪かった。」
「悪いと思ってんなら……急にいなくなったりするな。携帯も持たずに。ただでさえ脚が悪いのに」
―――脚だよな。
「あぁ、もうこんなことはしないこれっきりだ。」
「……ならいい、一緒にレンが戻ってくるの待つぞ。」
ふたりでソファに座り、レンの帰りを待つ。リビングは静寂のまま、何も話せず気まずい空気が場を支配する。
「なぁ……アキ。俺たちって幼馴染……だよな?」
「あ?何言ってんだお前当たり前だろ?やっぱどっか悪いとかなら……」
「違うんだ。……違う。大丈夫だから。」
急に頭を引き寄せられる感覚がする。
「スバルが何考えてんのかわかんねぇけど、不安なのは分かる。今は寝とけ。」
辛い時に優しくされると、嬉しくて泣きそうになる。誰しもそうだ。
「……うん。ありがとうアキ。」
涙が出るのを堪えて、目を閉じる。
―――――――――――――――――――――――
「スバル、お前も……てさすがに無理させられねぇか。」
「スバルくん脚大丈夫?キツかったら手伝うからね。」
「スバル、脚はもう平気なのか?」
思い出せるはずもなかった。ただの記憶の一部が夢に現れる。
「大丈夫だよ。」
「平気だ。」
「大丈夫だから。」
「平気だから!」
――――――――――――――――――――――――
目を覚ますと朝になっていた。カーテンの隙間から晴れた朝日が足元を照らす。時間は10時を過ぎたところで、一限の授業には今から行っても間に合いそうになかった。隣を見るとスバルに肩を貸す形でアキがいて、スバルとアキの間に床に座りアキの膝に頭を置くレンがいる。
スバルが動くと、それに気づいたレンが頭をあげる。
「……ッ!スバル!」
急にこちらを振り向く。その目は昨日の敵意のある鋭い目ではなくて、純粋にスバルのことを心配する目だった。こちらを確認すると、目が和らぎフッと息をつく。
「おはよう、スバル。大丈夫かい?」
あまりにも普通だった。
「お、おう。おはよう、レン。その、昨日は心配かけて……ごめん。」
「……いいんだよ謝らなくて、僕の方こそごめん。」
「ん~うっせお前ら。」
場違いな、アキの眠そうな声が響く。
「……朝ごはんにしよっか。」
レンはキッチンに向かい食パンをトースターに入れる。
「朝は、トーストと目玉焼きでいいかな?あ、飲み物は温かいものと冷たいものどっちがいい?」
「じゃあ、コーヒーで」
「わかった。すぐ準備するから顔洗っておいで。ほら、アキ、朝だから起きて!」
「んお~……。ってスバルは!?」
隣に居たはずのスバルが居なくなって焦るアキ。
「大丈夫だよ。今顔洗いに行ってるとこだから。」
安心したようにソファに仰け反り天井を仰ぐ。キッチンで目玉焼きを作っているレンに近づき、肩に顔を埋め腰に手を回す。
「スバル、昨日今日ってなんか変じゃない?」
「ん~、そうかもね。でも、スバルから話してくれない限り僕たちには何も出来ないから。」
幼馴染であっても、全てが手に取るように分かるわけではない。ちゃんと言葉で伝えなければ、気持ちや考えは伝わらないし、相手の想像の中でしか予想はできない。ちゃんと言葉で伝え、自身はこう思ってる、相手にはこうして欲しい、これは嫌だ、と伝えることがどんな人間関係においても大事である。それをしないで、付き合いの長い相手ならわかってくれるだろうと、勝手に期待して勝手に怒ることはただの傲慢でわがままな子供と同じだ。
この3人はずっと側でお互いを見てたからこそ、伝えることの大切さを忘れているのかもしれない。
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