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本編
14.暖かい
大学に着くと金曜日特有の週末の予定に関する話や、大学が終わった後の予定に関する話が周りから聞こえてくる。浮かれた空気感の中をスバルとヒロトは進んでいく。ショウとサクラは金曜日は授業を取っていないらしい。ショウがいない時はいつもより寂しく感じる。
スバルたちの講義が行われる建物の入口に、ブロンドヘアと短い茶髪の二人がいた。その二人はスバルの存在に気づくと片方は怒ったようにもう片方は少し焦ったような顔をして近づいてきた。
「「スバルっ!」」
レンとアキのスバルを呼ぶ声が重なる。レンがスバルの肩を両方から掴み、アキが捲し立てる。
「スバル、お願いだから帰ってきてくれ。僕たち三人でずっと一緒なんだから離れるなんて考えられないよ」
「おいてめぇ、俺たちになんも話さずにずっと逃げやがって。言ったよな、今度はどこにも行かせなくしてやるって」
レンとアキからの言葉の雨にスバルは何も言えずに固まる。そこにため息をつきながら助けの手を差し伸べたのはヒロトだった。
「ちょっと二人とも落ち着いてください。そんなんじゃスバルも言いたいこと言えませんって」
ヒロトの言葉に二人は静かになる。レンは少し安心したようにスバルを見つめ、アキは機嫌が悪そうにしながら顔を横に向ける。
「俺、今日一旦そっち帰るから。そしたら……一回話したい」
レンは嬉しそうに笑い、アキは驚いたように目を丸くした。ヒロトはやっと言ったかと言わんばかりに苦笑いする。
「そっか……良かった。ちゃんと帰ってきてくれるんだね」
「……今度こそ逃げんじゃねぇぞ」
そう言って二人は別の建物へと向かっていく。スバルが安心したように大きく息をつくと、ヒロトはスバルの頭を優しくポンポンと叩いた。労ってくれているのだろう。そのヒロトの手を少し嬉しく思うスバルは、気を取り直して朝の講義へと向かう。
講義中も教室では必ずどこかで小さい話し声が聞こえていた。スバルとヒロトも時折、小声で話したりして朝イチの講義を終えた。
昼食後はヒロトはサッカーを練習しに行き、スバルは午後の授業をひとつ受ける。講義を終えて建物を出ると練習着を着て、火照った身体を冷ます為にTシャツをパタパタとさせているヒロトがいた。ヒロトは家とは反対の駅の方にスバルを見送りについてきてくれた。
「じゃあ、頑張れよ。ちゃんと思ってること全部話してこい」
そう言って来た道を戻っていく。スバルは過保護なやつだなと思いながらも心の中でヒロトに感謝をする。
電車に乗り最寄り駅へと向かう。駅に着くと空は夕焼け空でオレンジに染まって、カラスが遠くで鳴いている。玄関のドアを開けた時、どのように迎えられるのだろうか。帰ったら最初になんて言うのか。ただいまと言うべきなのかごめんと謝るべきか。
―――シェアハウスを出ていくかどうか。
まだ、それだけは決められていない。
シェアハウスの玄関前に着いたスバルはしゃがんでうなだれていた。入る勇気がどうしても湧いてこない。中に二人がいることは足音やテレビの音からわかっている。二人がすでに中にいることが分かっているからこそ入ることが怖くなる。心臓は一度落ち着いたかと思えば、鍵穴に鍵を入れようとすると途端にBPMを急上昇させる。10分以上はそうしていただろうか。立ち上がってしゃがんでを繰り返すのを、もう10回以上は繰り返していた。このままでは埒が明かないと勢いで鍵を一気に入れて押しまわす。鍵の開くガチャっという音があたりに響く。少し間をおいて、ドアノブに手を置く、ゆっくりと回しドアを開けると抱きしめられる感覚がした。いつの間にかレンとアキに抱きしめられていた。
「よかった……ちゃんと帰ってきてくれたんだね」
「おせぇぞ……」
二人は泣きそうな、それでもとても安心したような声でスバルに声をかけた。急に抱きしめられて戸惑うスバルだが二人が温かく迎えてくれることは素直にうれしく思う。そのまま三人は抱き合ったままでいた。
「さぁ、ちょうどご飯ができたんだ。話はそれを食べてからしようか。」
「俺もう腹減りすぎ~」
「……なんか……いいな」
そうつぶやくスバルをレンは優しく見つめ、アキは少し恥ずかしそうにする。
今日のレンの料理はクリームシチューだった。ちょうどいいサイズに切り分けられたニンジン、ジャガイモと豚肉にブロッコリーがいいアクセントになる。シチュー以外にはサラダとおかずに小さめのハンバーグがあった。三人のそろった食卓は一年以上もなかったような感覚ではあった。それほどまでにこの一週間は、レンとスバルとアキの心が離れ離れになってしまっていた。交わされる言葉はなく、お互いに黙々と食事をしていたが案外居心地はよかった。三人ともそう思いながら、このあたたかい空間をかみしめていた。
夕食を終えて、洗い物を片付けてから三人でダイニングテーブルに向かい合って座る。緊張感はあるが落ち着けている。部屋にはテレビの音も、シンクを流れる水の音もない、ただ静寂だった。
「じゃあスバル。もっかいはなそっか」
スバルたちの講義が行われる建物の入口に、ブロンドヘアと短い茶髪の二人がいた。その二人はスバルの存在に気づくと片方は怒ったようにもう片方は少し焦ったような顔をして近づいてきた。
「「スバルっ!」」
レンとアキのスバルを呼ぶ声が重なる。レンがスバルの肩を両方から掴み、アキが捲し立てる。
「スバル、お願いだから帰ってきてくれ。僕たち三人でずっと一緒なんだから離れるなんて考えられないよ」
「おいてめぇ、俺たちになんも話さずにずっと逃げやがって。言ったよな、今度はどこにも行かせなくしてやるって」
レンとアキからの言葉の雨にスバルは何も言えずに固まる。そこにため息をつきながら助けの手を差し伸べたのはヒロトだった。
「ちょっと二人とも落ち着いてください。そんなんじゃスバルも言いたいこと言えませんって」
ヒロトの言葉に二人は静かになる。レンは少し安心したようにスバルを見つめ、アキは機嫌が悪そうにしながら顔を横に向ける。
「俺、今日一旦そっち帰るから。そしたら……一回話したい」
レンは嬉しそうに笑い、アキは驚いたように目を丸くした。ヒロトはやっと言ったかと言わんばかりに苦笑いする。
「そっか……良かった。ちゃんと帰ってきてくれるんだね」
「……今度こそ逃げんじゃねぇぞ」
そう言って二人は別の建物へと向かっていく。スバルが安心したように大きく息をつくと、ヒロトはスバルの頭を優しくポンポンと叩いた。労ってくれているのだろう。そのヒロトの手を少し嬉しく思うスバルは、気を取り直して朝の講義へと向かう。
講義中も教室では必ずどこかで小さい話し声が聞こえていた。スバルとヒロトも時折、小声で話したりして朝イチの講義を終えた。
昼食後はヒロトはサッカーを練習しに行き、スバルは午後の授業をひとつ受ける。講義を終えて建物を出ると練習着を着て、火照った身体を冷ます為にTシャツをパタパタとさせているヒロトがいた。ヒロトは家とは反対の駅の方にスバルを見送りについてきてくれた。
「じゃあ、頑張れよ。ちゃんと思ってること全部話してこい」
そう言って来た道を戻っていく。スバルは過保護なやつだなと思いながらも心の中でヒロトに感謝をする。
電車に乗り最寄り駅へと向かう。駅に着くと空は夕焼け空でオレンジに染まって、カラスが遠くで鳴いている。玄関のドアを開けた時、どのように迎えられるのだろうか。帰ったら最初になんて言うのか。ただいまと言うべきなのかごめんと謝るべきか。
―――シェアハウスを出ていくかどうか。
まだ、それだけは決められていない。
シェアハウスの玄関前に着いたスバルはしゃがんでうなだれていた。入る勇気がどうしても湧いてこない。中に二人がいることは足音やテレビの音からわかっている。二人がすでに中にいることが分かっているからこそ入ることが怖くなる。心臓は一度落ち着いたかと思えば、鍵穴に鍵を入れようとすると途端にBPMを急上昇させる。10分以上はそうしていただろうか。立ち上がってしゃがんでを繰り返すのを、もう10回以上は繰り返していた。このままでは埒が明かないと勢いで鍵を一気に入れて押しまわす。鍵の開くガチャっという音があたりに響く。少し間をおいて、ドアノブに手を置く、ゆっくりと回しドアを開けると抱きしめられる感覚がした。いつの間にかレンとアキに抱きしめられていた。
「よかった……ちゃんと帰ってきてくれたんだね」
「おせぇぞ……」
二人は泣きそうな、それでもとても安心したような声でスバルに声をかけた。急に抱きしめられて戸惑うスバルだが二人が温かく迎えてくれることは素直にうれしく思う。そのまま三人は抱き合ったままでいた。
「さぁ、ちょうどご飯ができたんだ。話はそれを食べてからしようか。」
「俺もう腹減りすぎ~」
「……なんか……いいな」
そうつぶやくスバルをレンは優しく見つめ、アキは少し恥ずかしそうにする。
今日のレンの料理はクリームシチューだった。ちょうどいいサイズに切り分けられたニンジン、ジャガイモと豚肉にブロッコリーがいいアクセントになる。シチュー以外にはサラダとおかずに小さめのハンバーグがあった。三人のそろった食卓は一年以上もなかったような感覚ではあった。それほどまでにこの一週間は、レンとスバルとアキの心が離れ離れになってしまっていた。交わされる言葉はなく、お互いに黙々と食事をしていたが案外居心地はよかった。三人ともそう思いながら、このあたたかい空間をかみしめていた。
夕食を終えて、洗い物を片付けてから三人でダイニングテーブルに向かい合って座る。緊張感はあるが落ち着けている。部屋にはテレビの音も、シンクを流れる水の音もない、ただ静寂だった。
「じゃあスバル。もっかいはなそっか」
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