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ヒキガエルとモグラ
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クラポー公爵は、フロース王国の中で高い身分ながら疎まれている男だった。
フロース王国の民の特徴である褐色の肌は、他国から輿入れした先祖の色が強く、薄いキャラメル色で、他国の人間が日焼けしたくらいと大差はない。
髪は黒ではなく、薄い茶色。
仮にも王族に連なる血筋として、顔の造形は悪くはなかった。
だが、ひょろひょろと背が高く、手足が長くて、子どもの馬車の事故で骨が曲がり、背中が丸まって異様な風貌となっていた。
じめっとした後ろ向きな性格もあって女性に嫌われ、妻どころか婚約者さえいない。
酒におぼれ、不規則な生活がたたって、肌が荒れ、顔面には吹き出物があふれて益々醜くなった。
父母は離縁し、父は他界。
みんなから疎まれて育ったものの、同じように容貌にコンプレックスのある前王弟のトープに重用された。
丸々と太り、贅肉で余計に目が小さく見えるトープは影ではモグラと言われている。
それに対して、自分はヒキガエル。
クーデターで王位を奪ったため他国から警戒されているトープは、実質、出禁になっている。
トープに外交官に任命されたクラポーは、その日、自分の領地と国境が隣接しているバスティン王国のパーティーに参加していた。
オレンジ色の髪の麗しく逞しい王に、その隣に立つストロベリーブロンドに菫色の瞳の天使のように美しい王妃。
そして、彼らによく似た美しい子どもたち。
羨ましい。
羨ましい。
羨ましい。
隅っこの方で、誰にも相手にされず、せめてと食事を楽しんでいたが、天使に声をかけられた。
「………クラポー公爵、痛そうですね。僕、治せるので治してさしあげますね。」
小柄な体格。
オレンジ色のふわふわとした髪に、菫色の瞳。
この国の第二王子だ。
先ほどから、『僕の妃に』『うちの王子の妃に』と他国の王族に囲まれていた、美しい王子が自分の目の前にいる。
嫌悪されて、母親にさえ碌に触れられた記憶がないのに、小さな手が自分の背中に触れる。
暖かい力が、痛みをとり、体の違和感が消え。
背中が伸び、顔の吹き出物も治っていた。
「あ……。あぁああ……。ありがとう。」
「どういたしまして。」
にっこり微笑む顔は、花が咲いたようで。
ーーーーーー自分のものにしたい。
丁度、朝方トープ王の命でリロンデル王子を閉じ込めた際に使った眠り薬を胸ポケットに入れたままにしていた。
ハンカチにしみこませ、後ろから襲った。
寝室に連れ帰って、さっそく自分のものにしてしまい、既成事実を作りたかったのに、トープから呼び出しを喰らった。
仕方なく、閉じ込めておくことにする。
一個しかない牢屋だから、リロンデルがいるけど、足を折っているし気絶しているようだから大丈夫だろう。
牢屋の奥に寝ているから、ちょっとくらいならサンベリル王子もリロンデルの存在に気づかないかもしれない。
他に場所がないので仕方ない。
クラポーは、サンベリルを閉じ込めて、トープの下へ向かった。
向かう途中で鏡を見て、メイクで顔を汚し、背中を丸めて歩くことにする。
見た目がよくなれば、トープに何をされるか分からないから。
城へ上がったクラポーは、トープに命じられるのだ。
『サンベリル王子を自分に献上しろ。』
自分に影がついていたことを、クラポーはまだ知らない。
フロース王国の民の特徴である褐色の肌は、他国から輿入れした先祖の色が強く、薄いキャラメル色で、他国の人間が日焼けしたくらいと大差はない。
髪は黒ではなく、薄い茶色。
仮にも王族に連なる血筋として、顔の造形は悪くはなかった。
だが、ひょろひょろと背が高く、手足が長くて、子どもの馬車の事故で骨が曲がり、背中が丸まって異様な風貌となっていた。
じめっとした後ろ向きな性格もあって女性に嫌われ、妻どころか婚約者さえいない。
酒におぼれ、不規則な生活がたたって、肌が荒れ、顔面には吹き出物があふれて益々醜くなった。
父母は離縁し、父は他界。
みんなから疎まれて育ったものの、同じように容貌にコンプレックスのある前王弟のトープに重用された。
丸々と太り、贅肉で余計に目が小さく見えるトープは影ではモグラと言われている。
それに対して、自分はヒキガエル。
クーデターで王位を奪ったため他国から警戒されているトープは、実質、出禁になっている。
トープに外交官に任命されたクラポーは、その日、自分の領地と国境が隣接しているバスティン王国のパーティーに参加していた。
オレンジ色の髪の麗しく逞しい王に、その隣に立つストロベリーブロンドに菫色の瞳の天使のように美しい王妃。
そして、彼らによく似た美しい子どもたち。
羨ましい。
羨ましい。
羨ましい。
隅っこの方で、誰にも相手にされず、せめてと食事を楽しんでいたが、天使に声をかけられた。
「………クラポー公爵、痛そうですね。僕、治せるので治してさしあげますね。」
小柄な体格。
オレンジ色のふわふわとした髪に、菫色の瞳。
この国の第二王子だ。
先ほどから、『僕の妃に』『うちの王子の妃に』と他国の王族に囲まれていた、美しい王子が自分の目の前にいる。
嫌悪されて、母親にさえ碌に触れられた記憶がないのに、小さな手が自分の背中に触れる。
暖かい力が、痛みをとり、体の違和感が消え。
背中が伸び、顔の吹き出物も治っていた。
「あ……。あぁああ……。ありがとう。」
「どういたしまして。」
にっこり微笑む顔は、花が咲いたようで。
ーーーーーー自分のものにしたい。
丁度、朝方トープ王の命でリロンデル王子を閉じ込めた際に使った眠り薬を胸ポケットに入れたままにしていた。
ハンカチにしみこませ、後ろから襲った。
寝室に連れ帰って、さっそく自分のものにしてしまい、既成事実を作りたかったのに、トープから呼び出しを喰らった。
仕方なく、閉じ込めておくことにする。
一個しかない牢屋だから、リロンデルがいるけど、足を折っているし気絶しているようだから大丈夫だろう。
牢屋の奥に寝ているから、ちょっとくらいならサンベリル王子もリロンデルの存在に気づかないかもしれない。
他に場所がないので仕方ない。
クラポーは、サンベリルを閉じ込めて、トープの下へ向かった。
向かう途中で鏡を見て、メイクで顔を汚し、背中を丸めて歩くことにする。
見た目がよくなれば、トープに何をされるか分からないから。
城へ上がったクラポーは、トープに命じられるのだ。
『サンベリル王子を自分に献上しろ。』
自分に影がついていたことを、クラポーはまだ知らない。
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