暗殺者は王子に溺愛される

竜鳴躍

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僕にちょうだい

ギュッとケヴィンの腕にくっついて、ボヌールが離れなくなった。

思えば、傷ついている彼の前でケヴィンと仲良くするなんて、これみよがしだったかも。

配慮不足が招いた結果だと、思った。

ケヴィンも困っているし、アン様達も困惑している。



「僕は、家で居場所がないの。サン兄、ケヴィン殿下を僕にちょうだい!」


「ごめん。いくら弟同然でかわいくても、ケヴィンはあげられない。」


「ごめんね、きっといつか本当に好きな人が見つかるよ。」

宥めるケヴィンをボヌールは潤んだ瞳で見あげる。


「幸せになりたいの!サンみたいに、幸せに。お願い、それじゃあ2番目の奥さんでいいから!」

「私は、サンだけでいいんだよ。」


そういうと、ボヌールは、わああと泣き出した。


本当はこんなことを言う子ではないことは、俺たちは知っている。

よほど追い詰められているんだ。

でも、だからといって、甘やかすわけにもいかない。


「僕のことなんか、誰も愛してくれないんだ。僕は幸せになれないんだ!」


「いい加減にしろよ!そりゃ、お前も辛いと思うけど、そういうのは違うだろ!!お前はもう娼婦じゃないんだから、そういうの辞めろよ!」

トロワが厳しく叱ると、余計に泣いて収集がつかなくなった。


「サン、ケヴィン殿下。ごめんね。ボヌールは連れて帰るよ。」

「うちの女王様にあとはお任せしようと思う。心配しないで。きっと、いいふうになるから。」

ボヌールはサンダルフォン兄弟に連れていかれて、ピクニックはお開きになってしまった。



「悪いことをした。来なければよかったね。」

すまなそうにするケヴィンの肩にもたれて、首を横に振った。

「よかったんだよ。問題が早く露見したほうが、きっと早く立ち直れるから。」

ボヌールは、気づいていないのだろうか。

デューク様があんなに愛しげに接してくれていることに。


自分だけの愛が、きっと近くにあることに。
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