暗殺者は王子に溺愛される

竜鳴躍

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閑話 デュークは好きな子のために頑張っている

俺はデューク=サンダルフォン。

姉は王太子の婚約者で、将来の王妃が約束されているし、父親はこの国の宰相。

お家も公爵家で、何不自由もない。

双子の兄は父親に性格がそっくりで、よっぽどのことがない限り、声を荒げることはない。

兄は計算が得意で、俺は交渉事が得意。

爵位は兄が継ぐけど、俺は兄を支えていくつもりでいる。



手始めに、お父様から軍資金をもらった俺たちは、許可を得て、商会を経営している。

まだ学生だけど、適材適所で金のことは兄に任せて、交渉や営業を俺がやったら、ワールドワイドな商会に大成長した。

自分の才能が怖いわぁ。



帰って来たかわいい弟は、このままなんとなく、サンにくっついて騎士団に入りそうだし、宰相は兄が継ぎそうだし、俺は自由気ままに商売をして生きていこうかな、なんて考えている。


弟のトロワが連れてきたボヌールという子は、ものすごくきれいな子だった。

やらされていた仕事のせいか、妙に色気があって、誰にでも媚を売っているようなしぐさや声色が気になるけど、トロワから聞いていた本来の彼は、運動神経がよく、快活で、頭のいい子だった。

本当のこの子は、どんな子なんだろう。

最初は気の毒に思って、家庭教師の代わりを自分から提案した。


呑み込みが早い。

確かに、元々の頭は良さそうだ。

そして、だんだんと、時折見せる笑顔が、年相応の少年のそれで、うれしくなった。


きちんとご飯を食べさせて、本来のこの子に戻ってほしい。

意外と、一気に身長も伸びて逞しくなって、カッコよく成長するかもね。


垣間見える本当のこの子が、気になって仕方がない。




気になって、彼の家を調べてみた。

母親が殺されて彼が攫われた日から1年過ぎて、彼の父親は親族の勧めでコリー伯爵の長女と結婚している。

こう言っては何だが、気難しくて性格に難がある上に、あまり美しくないので売れ残っていたようだ。

残された5歳になる息子のニールの家庭教師をずっとやっていて、辺境伯の家に出入りがあり、好意的に見れば彼女は生真面目で貞淑な女性に見えるので、親族としては『ちょうどいい』と思ってしまったらしい。


思うに、彼女はずっとコンプレックスだったのだろう。

彼女は、生前の前妻を知っている。

彼があれだけ綺麗で、そして彼は母親似というのだから、どれだけ美しかったのか想像はたやすい。


15年間、家庭をほったらかしの夫は、彼女が何をしても気に留めない。
段々自分のいいように、自分のなじみの使用人に入れ替えていっても、何も言わない。

乗っ取りを考えている、までは言わないが、自分が産んだ子も出来て、ニールは自分の子も同様に馴染んでいるし、幸せな家庭生活、財産の分配等の青写真ができているところに、ぽんとボヌールが帰ってきたわけだ。

しかも、美しい前妻そっくりの姿をして。

ボヌールの雰囲気も相まって、いろいろ誤解してもおかしくないし、まあ、苛めだろうな。




彼の力になりたい。

そう思っていたら、夜更けに馬車を飛ばして、うちに彼がやってきた。

話を聞いていると、アッカーマンという寮長に襲われそうになって寮を逃げてきたとか。

その晩は客間に泊まってもらい、翌早朝、俺は一人だけ寮に出向いて、アッカーマンに話を聞いてきた。


入寮したのに挨拶がない。

そのうえ夕方の門限過ぎに帰ってきて、また、挨拶もなく部屋に逃げようとするので咎めたところ、女の子みたいな反応をしたので、つい、揶揄してしまったと。

冗談だったのに、乱暴されると勘違いをして逃げてしまったのだということだった。


ボヌールも悪いことと、勘違いだったのは分かった。


だが、寮長やその他の者の雰囲気から、既に彼を『雌』として認識してしまったのはよく分かったので、ここに彼をおいておくことはできないと判断した。

その時は冗談だったとしても、いつか襲われたら大変だ。


辺境伯には、お父様から話をしてもらうことにして、しばらくうちで預かれるよう、根回しした。



俺って、結構、好きになった子に尽くすタイプだったみたい。

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