暗殺者は王子に溺愛される

竜鳴躍

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閑話 子離れのとき

「ああ、はああ。」

「いかがなされましたか?旦那様。」

ノース侯爵家では、騎士団長のクラウドが執務机に突っ伏して、ため息をついていた。

サマンサは近寄り、彼に紅茶を渡す。

「ああはいったが、あの二人。止まれないのだろうなと。」

「そうですね。サン様ももう19歳です。学園には1学年遅れで編入しましたから、本当はもう大人ですもの。」

いい子ですから、言いつけを守って最後まではしていないでしょうが、寸前までは、しているでしょうね。

「保護者役の二人も、奔放ですし、ストッパーにはならないですよね。」

「そうなんだよなあ~。」

サマンサはノース侯爵家の侍女頭だ。
今や、サンの母親のような存在で、サンかわいさに束縛しようとする騎士団長を度々諌めている。

「旦那様、トロワ様も学生結婚しましたし、許してあげたらいかがですか?かわいい孫に会えますよ?」

「うーん。頭では分かっているのだよ。だけど、死んだと思い、喪に服した18年。私の中では赤ん坊のあの子のままで。」

「せっかく帰ってきた子を婚約者にとられて、複雑な思いを抱えているのは、旦那様だけではありませんよ。あの子の幸せを考えましょう?宰相様も、辺境伯もきっと同じ思いで赦しているのですわ。」

ニコリと微笑むサマンサを見上げて、騎士団長はふと、この女性のことを思った。

18年前。

1番若かったサマンサは、当時まだ15歳だった。

学園にも通えないくらいの子沢山の貧乏男爵の長女で、花嫁修業も兼ねて金銭を稼げること、箔をつけられることから、当時の侍女頭について、ティナの侍女になったのだ。

侍女頭は死に、彼女は頬に深い傷を負って、嫁にはいけなくなり、自分から家と縁を切った。

彼女を含め、傷を負った使用人たちには、本人にも家族にも、手厚い支援をしたから、今では、彼女の家は、貧乏から脱出し、弟が新しい当主になって、立派にやっている。
姉弟仲はいいようだ。

「君たちは、ニール君の治療を受けないのか?」

もう治せるのに、みんな頑なに治そうとしない。

私は、皆にも幸せになって欲しいのに。

「この傷は、戒めですから。」

「だが、傷がなければ、君ならまだ、嫁ぎ先もあるだろう……。」

まだ、子も産めるはずだ。

「旦那様。私は、サン様と旦那様をお守りするのが生き甲斐なんですよ?」

微笑む彼女に窓から刺した光があたってドキリとした。


もしかして、私は………。
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