87 / 202
閑話 子離れのとき
「ああ、はああ。」
「いかがなされましたか?旦那様。」
ノース侯爵家では、騎士団長のクラウドが執務机に突っ伏して、ため息をついていた。
サマンサは近寄り、彼に紅茶を渡す。
「ああはいったが、あの二人。止まれないのだろうなと。」
「そうですね。サン様ももう19歳です。学園には1学年遅れで編入しましたから、本当はもう大人ですもの。」
いい子ですから、言いつけを守って最後まではしていないでしょうが、寸前までは、しているでしょうね。
「保護者役の二人も、奔放ですし、ストッパーにはならないですよね。」
「そうなんだよなあ~。」
サマンサはノース侯爵家の侍女頭だ。
今や、サンの母親のような存在で、サンかわいさに束縛しようとする騎士団長を度々諌めている。
「旦那様、トロワ様も学生結婚しましたし、許してあげたらいかがですか?かわいい孫に会えますよ?」
「うーん。頭では分かっているのだよ。だけど、死んだと思い、喪に服した18年。私の中では赤ん坊のあの子のままで。」
「せっかく帰ってきた子を婚約者にとられて、複雑な思いを抱えているのは、旦那様だけではありませんよ。あの子の幸せを考えましょう?宰相様も、辺境伯もきっと同じ思いで赦しているのですわ。」
ニコリと微笑むサマンサを見上げて、騎士団長はふと、この女性のことを思った。
18年前。
1番若かったサマンサは、当時まだ15歳だった。
学園にも通えないくらいの子沢山の貧乏男爵の長女で、花嫁修業も兼ねて金銭を稼げること、箔をつけられることから、当時の侍女頭について、ティナの侍女になったのだ。
侍女頭は死に、彼女は頬に深い傷を負って、嫁にはいけなくなり、自分から家と縁を切った。
彼女を含め、傷を負った使用人たちには、本人にも家族にも、手厚い支援をしたから、今では、彼女の家は、貧乏から脱出し、弟が新しい当主になって、立派にやっている。
姉弟仲はいいようだ。
「君たちは、ニール君の治療を受けないのか?」
もう治せるのに、みんな頑なに治そうとしない。
私は、皆にも幸せになって欲しいのに。
「この傷は、戒めですから。」
「だが、傷がなければ、君ならまだ、嫁ぎ先もあるだろう……。」
まだ、子も産めるはずだ。
「旦那様。私は、サン様と旦那様をお守りするのが生き甲斐なんですよ?」
微笑む彼女に窓から刺した光があたってドキリとした。
もしかして、私は………。
「いかがなされましたか?旦那様。」
ノース侯爵家では、騎士団長のクラウドが執務机に突っ伏して、ため息をついていた。
サマンサは近寄り、彼に紅茶を渡す。
「ああはいったが、あの二人。止まれないのだろうなと。」
「そうですね。サン様ももう19歳です。学園には1学年遅れで編入しましたから、本当はもう大人ですもの。」
いい子ですから、言いつけを守って最後まではしていないでしょうが、寸前までは、しているでしょうね。
「保護者役の二人も、奔放ですし、ストッパーにはならないですよね。」
「そうなんだよなあ~。」
サマンサはノース侯爵家の侍女頭だ。
今や、サンの母親のような存在で、サンかわいさに束縛しようとする騎士団長を度々諌めている。
「旦那様、トロワ様も学生結婚しましたし、許してあげたらいかがですか?かわいい孫に会えますよ?」
「うーん。頭では分かっているのだよ。だけど、死んだと思い、喪に服した18年。私の中では赤ん坊のあの子のままで。」
「せっかく帰ってきた子を婚約者にとられて、複雑な思いを抱えているのは、旦那様だけではありませんよ。あの子の幸せを考えましょう?宰相様も、辺境伯もきっと同じ思いで赦しているのですわ。」
ニコリと微笑むサマンサを見上げて、騎士団長はふと、この女性のことを思った。
18年前。
1番若かったサマンサは、当時まだ15歳だった。
学園にも通えないくらいの子沢山の貧乏男爵の長女で、花嫁修業も兼ねて金銭を稼げること、箔をつけられることから、当時の侍女頭について、ティナの侍女になったのだ。
侍女頭は死に、彼女は頬に深い傷を負って、嫁にはいけなくなり、自分から家と縁を切った。
彼女を含め、傷を負った使用人たちには、本人にも家族にも、手厚い支援をしたから、今では、彼女の家は、貧乏から脱出し、弟が新しい当主になって、立派にやっている。
姉弟仲はいいようだ。
「君たちは、ニール君の治療を受けないのか?」
もう治せるのに、みんな頑なに治そうとしない。
私は、皆にも幸せになって欲しいのに。
「この傷は、戒めですから。」
「だが、傷がなければ、君ならまだ、嫁ぎ先もあるだろう……。」
まだ、子も産めるはずだ。
「旦那様。私は、サン様と旦那様をお守りするのが生き甲斐なんですよ?」
微笑む彼女に窓から刺した光があたってドキリとした。
もしかして、私は………。
あなたにおすすめの小説
塔の魔術師と騎士の献身
倉くらの
BL
かつて勇者の一行として魔王討伐を果たした魔術師のエーティアは、その時の後遺症で魔力欠乏症に陥っていた。
そこへ世話人兼護衛役として派遣されてきたのは、国の第三王子であり騎士でもあるフレンという男だった。
男の説明では性交による魔力供給が必要なのだという。
それを聞いたエーティアは怒り、最後の魔力を使って攻撃するがすでに魔力のほとんどを消失していたためフレンにダメージを与えることはできなかった。
悔しさと息苦しさから涙して「こんなみじめな姿で生きていたくない」と思うエーティアだったが、「あなたを助けたい」とフレンによってやさしく抱き寄せられる。
献身的に尽くす元騎士と、能力の高さ故にチヤホヤされて生きてきたため無自覚でやや高慢気味の魔術師の話。
愛するあまりいつも抱っこしていたい攻め&体がしんどくて楽だから抱っこされて運ばれたい受け。
一人称。
完結しました!
生まれ変わったら知ってるモブだった
マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。
貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。
毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。
この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。
その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。
その瞬間に思い出したんだ。
僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
【BLーR18】箱入り王子(プリンス)は俺サマ情報屋(実は上級貴族)に心奪われる
奏音 美都
BL
<あらすじ>
エレンザードの正統な王位継承者である王子、ジュリアンは、城の情報屋であるリアムと秘密の恋人関係にあった。城内でしか逢瀬できないジュリアンは、最近顔を見せないリアムを寂しく思っていた。
そんなある日、幼馴染であり、執事のエリックからリアムが治安の悪いザード地区の居酒屋で働いているらしいと聞き、いても立ってもいられず、夜中城を抜け出してリアムに会いに行くが……
俺様意地悪ちょいS情報屋攻め×可愛い健気流され王子受け
辺境の酒場で育った少年が、美貌の伯爵にとろけるほど愛されるまで
月ノ江リオ
BL
◆ウィリアム邸でのひだまり家族な子育て編 始動。不器用な父と、懐いた子どもと愛される十五歳の青年と……な第二部追加◆断章は残酷描写があるので、ご注意ください◆
辺境の酒場で育った十三歳の少年ノアは、八歳年上の若き伯爵ユリウスに見初められ肌を重ねる。
けれど、それは一時の戯れに過ぎなかった。
孤独を抱えた伯爵は女性関係において奔放でありながら、幼い息子を育てる父でもあった。
年齢差、身分差、そして心の距離。
不安定だった二人の関係は年月を経て、やがて蜜月へと移り変わり、交差していく想いは複雑な運命の糸をも巻き込んでいく。
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
転生して王子になったボクは、王様になるまでノラリクラリと生きるはずだった
angel
BL
つまらないことで死んでしまったボクを不憫に思った神様が1つのゲームを持ちかけてきた。
『転生先で王様になれたら元の体に戻してあげる』と。
生まれ変わったボクは美貌の第一王子で兄弟もなく、将来王様になることが約束されていた。
「イージーゲームすぎね?」とは思ったが、この好条件をありがたく受け止め
現世に戻れるまでノラリクラリと王子様生活を楽しむはずだった…。
完結しました。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。