暗殺者は王子に溺愛される

竜鳴躍

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エデン王国

エデン王国は東の島国。


王は、施政者としての顔以外に、海龍を奉る神官としての顔を持つ。

流れのはやい海流と、海龍の巣が近いことから守られている国。

モンスターであるはずの海龍は、代々の王に飼いならされているのだ。




エデン王国には二人の王子がいた。



物静かで大人しいが、豪胆さも持ち合わせた兄のヴィンセント。

頭がよく活発な弟のザックス。

年の離れた兄弟は、仲良しだ。



国王のゴーシュには、かつてティナという妹姫がいたが、バッキンガム王国に留学へ行った際、騎士団長の息子に一目ぼれをして駆け落ちのように強引に嫁いで行ってしまった。

それに怒り狂った前王が、ティナを廃嫡してしまったのだが、老衰で亡くなり、自分が王になったのをきっかけにティナの子とは交流をしたいと考えるようになっていた。

そんな折、聖女出現の話を聞きつけたこともあり、ザックスを留学に行かせたのだった。




何故なら3年前、自分の後を継ぐ長男は、水難事故で濁流にのまれ、脊髄を損傷したほか、助けたときにはなぜか男性の生殖器を失っていたのである。


歩けなくても、子を残せなくなったとしても、施政者として優秀で、海龍をてなづけている彼を次期王にするつもりは全く変わっていない。

それに、この長男の事故は、王位を歪めんとする何者かの陰謀に思えた。

それを分かっていて、ヴィンセントも弟にまで被害が出ることのないよう、自分が次期王だと、振る舞い続けている。



少しくらいは、聖女の力で治るかとおもっていたが、なくしたものは無理らしい。




誰が悪者か。


洗い出せればいいのだが。














ヴィンセントは、今日も使用人の世話になりながら、仕事を続ける。

申し訳ないとは思うけれど、どうしようもない。

長い黒髪を腰まで垂らし、男の部分がないからか、幾分か丸みが出て、女性的になった。

今の自分は、父親の妹に少し似ているらしかった。



ヴィンセントには、かつて恋人がいた。


その恋人の身を守るため、信頼できる護衛に任せ、遠いところへ行ってもらっている。


不穏な動きを感じていたヴィンセントは、あえて結婚をせず、親にも内緒で逢瀬を重ねていた。


こんな身になって、今更迎えに行くのは躊躇するけど、全てが終わったら、迎えに行かなくてはならない。



なぜなら、彼女との間には、娘のふりをして育てている幼い双子の王子が生まれている。




そして、彼女は、今、シュウ王国の陛下のハレムに匿っていただいているのだ。


表向きは陛下の妻の一人ということにして。



敵を欺くにはまず味方から。


このことは誰も知らない。







だから、本当は。


可愛い弟がゴルを好きならば、嫁がせてあげたい。



心配しなくていいんだよ、といってあげたいのだ…。
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