暗殺者は王子に溺愛される

竜鳴躍

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もう一人の王子に溺愛される元暗殺者(見習い)

ここまできたら、トロワとクリム様、二人で乗り越えるほかないのだ。

誰がなんとも言えないし、慰めも励ましもどうかと思う。

サンやボヌールは、夏季休暇に入り、ゾーン王国へ向かうトロワを見送った。




「トロワ!」

ゾーン王国へ向かうと、満面の笑みでクリム王太子が自ら出迎える。

「クリム!」

抱きかかえられて、トロワの顔が真っ赤になる。

そのままくるりと回って、トロワはクリムの腕の中にすっぽりと納まった。


「トロワさま!」

少しだけお姉さんになったカトレアは、トロワによくなついている。

「お兄さま、トロワ様を独り占めしないで!こっちにいる間にお菓子の作り方を教えてもらうの!約束したんだから!」

「あらあら、カトレアったら。ごめんなさいね、トロワ。カトレア、トロワは隣国から来たから疲れているの。今日はゆっくりしてもらいましょう。」


王妃様が、王女様を回収していった。



「ふふふ、カトレアちゃんはかわいいな。」

「トロワが一番かわいい。」

腕の中はくすぐったい。






夕餉は全員集合で、離宮からオフェンス様とマチルダ様も一緒。

俺がいてもいなくても、元々家族仲はいいから食卓は一緒だ。

マチルダ様は下級貴族の娘だったけど、マナーは悪くないし、何よりオフェンス様のことを大事に思っている。

オフェンス様も、今ではマチルダ様のことを本当に愛していた。

2人は愛から始まっていない。

ともに陰謀に巻き込まれ、支えあってきた同志だった。


オフェンス様は、事件のせいで王太子ではなくなってしまったことについて、クリムに申し訳なくおもってはいるけど、王太子の身分に未練があったわけではなく、元々、民に近く、親身に世話を焼くクリムの方が王太子になったほうがいいのにと思っていて、恨みもわだかまりもないんだそうだ。

クリムが治水や農業分野に見識があったように、オフェンス様の得意分野は経済学だ。

だから、財政面の無駄をなくしたり、経済を回すための仕掛けを考えて、クリムと連携してるんだって。


夫婦仲もよく、マチルダ様のお腹には、今、赤ちゃんが宿ったところだし、おなかにデレデレになって語り掛けている姿は、ちょっとうらやましい。

クリムは毎日これを見て、どう思ってるのかなぁ…。




「それでは、明日ね。明日は、忙しくなるわよ。」

「そうですわね、国をあげての夏祭り!」

王妃様とマチルダ様が仲良くはしゃいでいる。

「トロワさま、みんなでおめかししましょうね!」

カトレアもにこにこ。


夏祭りの初日は、王族が集まって挨拶をするのだ。

俺は女性側。おしゃれして。

毎年のこととはいえ、緊張するなあ。





半年ぶりの、王太子夫婦の寝室。




どきどきしながら、クリムと手をとって。



俺、震えてないかな。



手に汗かいてないかな。





だって、今年は、いよいよ。

今夜が、そのとき。
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