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チェリー=ブロッサム
「そう言えば、チェリー=ブロッサムとラグナの処遇はあれでよかったのか?」
サン会長が呟いた。
「ええ。彼女のご両親や後見の伯爵に咎は全くないもの。それにね、悪魔の王だって味方にできるなら越したことはないじゃない?」
「レアがそれを望むなら、私はそれを全力で支持する。」
チュッとロズが私の額に口づけを落とす。
ロズはあっという間に自分の分の仕事を終えている。
ロズは充分優秀だと思うのよ。
あの日。
彼女の闇から帰ってくると、それは、この世界では一瞬の出来事だったらしい。
彼女から噴き出た闇が私を覆い、私を庇ったロズごと闇に包んで消した。
そしたらすぐに光が輝いて、私たちがまた現れたのだ。
「なんて神々しい!」
「バイオレット公爵令嬢は聖女だったのか!」
周りの人たちの歓喜。
「ううう!カトレア―ッ!無事でよかった!!!!」
お父様たちも泣き笑いをしていた。
「さすが私たちの女神様!!!」
宰相府の文官のおじさまたちも。
シナリオはなくなって、私は悪役令嬢じゃない。
愛され令嬢なのね。
「………う、うぅ。」
目の前のヒドインは、再び悪魔の王と分離して、蹲る。
悪魔の王は薄い灰色の髪になり、5歳くらいの少年の姿だ。
騎士団が囲む中、ヒドインは体を起こし、きょろきょろとあたりを見回した。
「???なにがあったの…????うわぁ、みんな綺麗な服。お城の舞踏会ね!私夢をみているんだわ!」
「………人生をやり直すのに邪魔な記憶は、完全に封じられた。もう、あの闇は出てこないだろう。」
悪魔の王が言うから、間違いはないのだろう。
チェリー=ブロッサムの精神を支配していた前世の記憶は、カトレアにおけるポプリンと違って、害にしかならないものだった。
私はポプリンであり、ポプリンはカトレアだ。
だけど、彼女の前世の罪に環境もあって、やり直しをするのであれば、あの記憶は不要なものだった。
美少女天使さんが前世なのだろうけれど、チェリー=ブロッサムが幸せになるには…。
「チェリー!!!」
人垣を掻き分けて、ようやっとの体で兄弟夫婦と弟夫婦の息子が現れる。
「学園でこのようなことをしでかしていたとは!知らなかったとはいえ、申し訳ございません!娘の罪は私の罪!私も償いますので、どうかっどうか…っ!」
平伏する彼らを罰したくない。
私がロズに視線をやっていると、悪魔の王が突如、悪態をついた。
「あーあーあー!!せっかくの計画が無駄に終わった!まさかこの国に『聖女』が二人いたとは!この世を私たちのものにするために邪魔な聖女に憑りついて、聖女の力に目覚めさせなければ、私たちの勝ちだと思っていたのだがなー!」
悪魔の王………。
無毒化した悪魔の王の配慮に、全力で乗っかろう。
もしかしたら、本当に彼はチェリーを愛したのかもね。
傷だらけの心の、美少女天使さんを。
「お聞きになって?彼女は『聖女』になるべき女性だったがために、悪魔の王に狙われ、その人格を奪われていたのです。私の方が見つかっていたら、私が彼女だったのかも。すべてが終わり、悪魔から解き放たれて本当の人格に戻り、その間の記憶を失っている彼女を、どうして罪に問えましょうか。」
「?お父さん、私、なにかわるいことしたの?」
「……もしかしたら子どもの頃にもどってしまっているのかもしれませんわね。」
「チェリーッ!」
「ロズウェル殿下、それから、陛下、みなさん、私からもお願いします。どうぞ、寛大な処置を…。」
私は腰を落として、玉座の二人に頭を下げた。
「悪魔の王に乗っ取られ、人格や精神を支配されていたのなら、どうしようもないだろう。幸い、被害はロズウェルやカトレアを始め、息子の側近たちがくいとめた。よって、チェリー=ブロッサムの罪は不問とする!ただし、チェリー=ブロッサムは聖女としての訓練に励み、能力が目覚めたらその力で尽くすように。」
「ありがとうございます!」
―――――――――――――――それから悪魔の王、ラグナだけは騎士に連行され、その場はぎくしゃくしながらもすぐに夜会は再開。
チェリー=ブロッサムの悪評はすぐには元通りとはいかなかったけど、本当の彼女はとてもいい子だったから、今では楽しく学園生活を送れている。
忘れたマナーや勉強は、暫く私がつきっきりで教えてあげたのよ。
やっぱりヒロイン、優秀なのよね。もしかしたら体や潜在意識が覚えているのかもしれないけど、あっという間に前よりもマナーはよくなったし、勉強も平均点はとれるようになった。
来年には婚約者になった従兄弟の令息も入学するし、彼も、本当のチェリーには惹かれたようだし、きっと幸せになれる。
「うーん。」
「どうしたの?レア。」
「先輩たちはカップルだし、先生とアイリス様だけあぶれているなと…。先輩たちもそうだけれど、どうして婚約者がいないのかしら。」
「王太子の側近は王太子の身が固まるまでは婚約者はもたないけど、候補はいるのですよ。先輩方は婚約者になる前に結ばれたので解消したのです。因みに私は近々正式に婚約します。そのうちご紹介しますね。」
「そうしたら先生は?」
「先生は実家がアレでしたから…。」
なるほど。
「私たちで先生のお相手を見つけられないかしら!」
既に適齢期を過ぎている先生のお相手はなかなか見つからないと思うの。
職場は男性か既婚女性ばかりだし!
出会いがないし!
自分からぐいぐい行くタイプじゃないから、生徒から見つけるなんて無理でしょうし!
サン会長が呟いた。
「ええ。彼女のご両親や後見の伯爵に咎は全くないもの。それにね、悪魔の王だって味方にできるなら越したことはないじゃない?」
「レアがそれを望むなら、私はそれを全力で支持する。」
チュッとロズが私の額に口づけを落とす。
ロズはあっという間に自分の分の仕事を終えている。
ロズは充分優秀だと思うのよ。
あの日。
彼女の闇から帰ってくると、それは、この世界では一瞬の出来事だったらしい。
彼女から噴き出た闇が私を覆い、私を庇ったロズごと闇に包んで消した。
そしたらすぐに光が輝いて、私たちがまた現れたのだ。
「なんて神々しい!」
「バイオレット公爵令嬢は聖女だったのか!」
周りの人たちの歓喜。
「ううう!カトレア―ッ!無事でよかった!!!!」
お父様たちも泣き笑いをしていた。
「さすが私たちの女神様!!!」
宰相府の文官のおじさまたちも。
シナリオはなくなって、私は悪役令嬢じゃない。
愛され令嬢なのね。
「………う、うぅ。」
目の前のヒドインは、再び悪魔の王と分離して、蹲る。
悪魔の王は薄い灰色の髪になり、5歳くらいの少年の姿だ。
騎士団が囲む中、ヒドインは体を起こし、きょろきょろとあたりを見回した。
「???なにがあったの…????うわぁ、みんな綺麗な服。お城の舞踏会ね!私夢をみているんだわ!」
「………人生をやり直すのに邪魔な記憶は、完全に封じられた。もう、あの闇は出てこないだろう。」
悪魔の王が言うから、間違いはないのだろう。
チェリー=ブロッサムの精神を支配していた前世の記憶は、カトレアにおけるポプリンと違って、害にしかならないものだった。
私はポプリンであり、ポプリンはカトレアだ。
だけど、彼女の前世の罪に環境もあって、やり直しをするのであれば、あの記憶は不要なものだった。
美少女天使さんが前世なのだろうけれど、チェリー=ブロッサムが幸せになるには…。
「チェリー!!!」
人垣を掻き分けて、ようやっとの体で兄弟夫婦と弟夫婦の息子が現れる。
「学園でこのようなことをしでかしていたとは!知らなかったとはいえ、申し訳ございません!娘の罪は私の罪!私も償いますので、どうかっどうか…っ!」
平伏する彼らを罰したくない。
私がロズに視線をやっていると、悪魔の王が突如、悪態をついた。
「あーあーあー!!せっかくの計画が無駄に終わった!まさかこの国に『聖女』が二人いたとは!この世を私たちのものにするために邪魔な聖女に憑りついて、聖女の力に目覚めさせなければ、私たちの勝ちだと思っていたのだがなー!」
悪魔の王………。
無毒化した悪魔の王の配慮に、全力で乗っかろう。
もしかしたら、本当に彼はチェリーを愛したのかもね。
傷だらけの心の、美少女天使さんを。
「お聞きになって?彼女は『聖女』になるべき女性だったがために、悪魔の王に狙われ、その人格を奪われていたのです。私の方が見つかっていたら、私が彼女だったのかも。すべてが終わり、悪魔から解き放たれて本当の人格に戻り、その間の記憶を失っている彼女を、どうして罪に問えましょうか。」
「?お父さん、私、なにかわるいことしたの?」
「……もしかしたら子どもの頃にもどってしまっているのかもしれませんわね。」
「チェリーッ!」
「ロズウェル殿下、それから、陛下、みなさん、私からもお願いします。どうぞ、寛大な処置を…。」
私は腰を落として、玉座の二人に頭を下げた。
「悪魔の王に乗っ取られ、人格や精神を支配されていたのなら、どうしようもないだろう。幸い、被害はロズウェルやカトレアを始め、息子の側近たちがくいとめた。よって、チェリー=ブロッサムの罪は不問とする!ただし、チェリー=ブロッサムは聖女としての訓練に励み、能力が目覚めたらその力で尽くすように。」
「ありがとうございます!」
―――――――――――――――それから悪魔の王、ラグナだけは騎士に連行され、その場はぎくしゃくしながらもすぐに夜会は再開。
チェリー=ブロッサムの悪評はすぐには元通りとはいかなかったけど、本当の彼女はとてもいい子だったから、今では楽しく学園生活を送れている。
忘れたマナーや勉強は、暫く私がつきっきりで教えてあげたのよ。
やっぱりヒロイン、優秀なのよね。もしかしたら体や潜在意識が覚えているのかもしれないけど、あっという間に前よりもマナーはよくなったし、勉強も平均点はとれるようになった。
来年には婚約者になった従兄弟の令息も入学するし、彼も、本当のチェリーには惹かれたようだし、きっと幸せになれる。
「うーん。」
「どうしたの?レア。」
「先輩たちはカップルだし、先生とアイリス様だけあぶれているなと…。先輩たちもそうだけれど、どうして婚約者がいないのかしら。」
「王太子の側近は王太子の身が固まるまでは婚約者はもたないけど、候補はいるのですよ。先輩方は婚約者になる前に結ばれたので解消したのです。因みに私は近々正式に婚約します。そのうちご紹介しますね。」
「そうしたら先生は?」
「先生は実家がアレでしたから…。」
なるほど。
「私たちで先生のお相手を見つけられないかしら!」
既に適齢期を過ぎている先生のお相手はなかなか見つからないと思うの。
職場は男性か既婚女性ばかりだし!
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自分からぐいぐい行くタイプじゃないから、生徒から見つけるなんて無理でしょうし!
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