王様との縁談から全力で逃げます。〜王女として育った不遇の王子の婚姻〜

竜鳴躍

文字の大きさ
4 / 87

断罪の婚約式1

しおりを挟む
婚約式というのに、部屋にアリア母娘はおらず、城内は騒然としていたが、母娘は直接クリスタル陛下が連れてくるので心配いらないという。

その代わり、婚約式の様子を帝国の魔法で世界中に中継したいと言われ、王は承諾した。


ファンファーレ。


花のアーチで飾られた城内の中庭。

光の海に祝福され、クリスタル陛下と母娘が入ってくる。

アリアの髪は短くなっており、白いドレスの下からはズボンを履いているようだ。

そして、アリアは気を失っているようで、陛下に姫抱きにされており、母親が後ろにブライズメイドのように付き添っていた。


「アリア、あんな男みたいに短くして。さすがに残酷王に輿入れなんて恐ろしくて出家でもしようとしたのかしら。」

プルミエ王女が嘲笑う。

「残酷王でも金はあるし、若いし美形じゃないか。あいつには勿体ないくらいなのにな。」
王太子も嘲笑した。



「クロノス王。この度はクリスタル帝国王妃として、アリアを戴き、母君も貰い受けることを承諾、ありがとう。」

ただ一人、この場で緊張する王に、キールは笑顔で礼を言った。


「これより、アリアも前王妃も帝国の王族となる。確かに、承認する。」

二人の陛下が公文書にサインする。


「確かに。これから二人は私の庇護に入る。……では、もうこのような偽りの姿は要らないな? アリア。」


愛おしげにキールが自分の衣装の袖でアリアの顔に触れる。

美貌を損なうための化粧が剥ぎ取られ、母親そっくりの美姫が現れる。


「えっ!? なに? あれが本当のアリアなの!?」

プルミエが震える。

会場の貴族が、ざわめいている。


「我が妃は、嫉妬を恐れて、あえて凡庸で地味な醜い姫を装っていたようだよ。」

クックッとキールが笑う。
周りの貴族もみなアリアに見惚れているのが、面白い。


「ん………。」


ようやく、腕の中のアリアが目覚める。


「愛しいアリア。昨夜は無理をさせたな。目が醒めたか?」


「なっ………!」

会場がざわめく。

帝国の陛下に処女を捧げたということは、これはもう婚約式ではなく、事実上の結婚式に等しい。





意識が覚醒して。

婚約式の最中。

頭上には、俺たちの様子を発信しているモニターがあって、俺は思わず顔を隠した。


「どうして! メイクが!!」


見ると、プルミエがギリギリ凄い顔で睨んでる。

嫌だあ!面倒くさい!

「アリア。もういいのよ。これは断罪の時間なの。」

お母様が妖しく笑う。

どういうこと?


「さて、せっかくだから。顔だけじゃなく、皆様に君の真実の価値を理解して頂こうか?きっと面白いぞ。」

「キール!お前、何を!?」

キールが指を鳴らすと、どこともなく配下の者がやってくる。


「真実の、価値?」

王は、何が起こるのか、どういうことなのか、顔色が悪い。

配下の者はアリアを取り囲んだ。

「ちょっと! 何なんだ!!」

アリアは騒いでいる。

そして、配下の者が去ると、そこにいたのは、美貌の男。

ドレスを剥ぎ取られて王子様のような白のスーツを着た、アルフォンス。


「あぁっ! ああ、もう!」

せっかく今まで隠し通していたのに!



アルフォンスの姿に王と王太子、騎士団がざわめく。

「アリア! お前、王子だったのか!」

「お前がアルフォンスの正体だったのか!?」




その頃国中では、モニターに映し出されたアリア=アルフォンスに大騒ぎになっていた。

ジェシカや冒険者ギルドの者たちも、食い入るように見つめる。


「あなた方や騎士団が束になって倒せなかったドラゴンは、彼が一人でたおしたんですよね。」

にやにやと、キールは嬉しそうだ。


「青い瞳に虹色の虹彩の王子。無詠唱の二つ名の、全属性の魔法を操り、素晴らしい魔力の、頼りになるS級冒険者。精霊に愛される代行者。手放してくれてありがとうございます。」


「精霊……などは御伽話だっ。」


「精霊はいますよ?ねえ、オフィリアお母様?」

「そうよ、失礼だわ。」

クスクス笑いながら、お母様が姿を変える。

本気を出せば、普通の人間にも姿を見せることが出来る。


「私は精霊王アバロンの娘、オフィリア。わたしたち精霊は、この国を捨てて、帝国にうつりますわ。」


お母様は爆弾を投下した。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。 それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。 家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。 そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。 ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。 誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。 「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。 これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

処理中です...