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本編
さようなら
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「シン、よかった。私たちは仲間を集めて旅をーーー。」
「ストップ!」
ウーの言葉を遮って、シンは続けた。
「この隠れ里は、俺が守ってるんだって、言っただろ?俺の今のマスターはここの主だよ。俺は、ここのみんなを守りたいんだ。どこにもいかないよ。」
「いつまでも隠れてるのなんて、私だったら嫌だわ!」
コトラが叫ぶ。
「命が一番大事だろ。ここでも十分暮らしていける。敵は俺が追い払ってる。」
「まあまあ、そんなところで立ち話しないで。中に入りなさい。」
初老の女性が、木で出来た家から出てくる。
「はじめまして。私はここの村長?みたいなことをしています。今は、シンのマスターよ。」
何もないけれど、と言われて出されたお茶を飲みながら、マスターは話を始めた。
部屋の中には、小さな女の子たちがいて、シンをお父さん役にままごとをしている。
「ふふふ、あれは5年くらい前になるかしら。娘夫婦も死んでしまって、孫を連れて逃げて、この森へ迷い込んでしまったの。まだあの子たちは産まれたばかりの赤ちゃんで。私は疲れてしまった。そんなとき、森の奥から声が聞こえたの。」
「それでマスターになったのですね。」
「そうね。シンはいたずら好きで手癖も悪いけど、優しいわ。ここを拠点に、エト人を保護して。今ではちょっとした集落になった。人手が増えると、いろいろやれる人もいて、今ではここで畑も作っているし、獣を捕えて家畜も養っている。安定している。感謝しているのよ。」
「感謝なんていうな。俺はマスターとミナとマナが好きだ。」
「マスター、僕たちはエト人との偽りの歴史を明かして、共存できる世界を作ろうとしています。そのための戦力として、守護心に協力を求めているのです。地球人はみな悪人ではありません。最初に船に乗ってやってきた彼ら…。特にヴィクトールというリーダーが悪いと思っています。そして、彼は守護心を執拗に狙っています。だから、シンにはぜひ僕たちの仲間になってほしいのです。」
僕がまっすぐに見つめると、マスターは少し間を置き、シンの側へ移った。
目線をあわせて語り掛ける。
「ねえ、シン。私たちはもう大丈夫よ。一緒に行ってあげて?」
「ちょ…!」
「えーシンいっちゃうの?」「いっちゃうの??」
「世界を平和にするために、旅に行くのよ。終わったら、帰ってくるわよ。」
「シン、かっこいい!」「かっこいい!!」
双子の可愛い女の子が口をそろえる。
「……シンを狙ってくるならば、いつかはここへ来るでしょう。やられるなら、その前に。エトの平和をあなた方に託します。『マスター権限移譲。』」
マスターは手を僕の手に重ねた。
暖かい熱を感じて。
「はい、これで、シンのマスターはあなた。」
「おいおい!!俺の気持ちは!!?」
「しっぽをパタパタうねうねさせて、気にしているくせに、素直になりなさい!」
マスターはふふっと笑った。
夜。
みなに別れを告げて、里を出る。
「元気でねシン。」
「シン、がんばれー!」「がんばれー!」
「今までありがとう!」「こっちは心配しないでくれよな!」
里中の住民に見送られて、次の目的地に向かう。
次は、荒野の洞穴。亥のガイ。
そのためには、一度街へ紛れなくては。
荒野への途中に、街があるから。
ーーーーーーーーみんな。必ず、俺。こんな隠れなくてもいい世界にするから。
シンは心の中で、誓った。
その晩。
大きな雷が落ちて、隠れ里は消失した。
家畜も畑も家も、そして人も。
全部が消し炭になった。
『首尾よく済んだようだな。』
紫色の髪の、ダークスーツの青年の耳に着けられた小型の無線から、ヨシュアの声が響く。
「ああ、森の隠れ里。全滅させた。」
『さすが俺の可愛いキリングドール。それでは一時帰還してほしいところだが、このまま新しい指令がある。』
「何とでも。」
『探検家が裏切った。彼より先に、【神】を集めろ。やり方は任せる。』
「了解、ボス。」
『つれないな、君は。俺は君の親代わりだというのに。もっと甘えてくれてもいいんだよ、ハニー。』
「………では引き続き任務に移ります。」
無線を切って、何もなくなって開けた空を見る。
任務は絶対。
必ずや。
「ストップ!」
ウーの言葉を遮って、シンは続けた。
「この隠れ里は、俺が守ってるんだって、言っただろ?俺の今のマスターはここの主だよ。俺は、ここのみんなを守りたいんだ。どこにもいかないよ。」
「いつまでも隠れてるのなんて、私だったら嫌だわ!」
コトラが叫ぶ。
「命が一番大事だろ。ここでも十分暮らしていける。敵は俺が追い払ってる。」
「まあまあ、そんなところで立ち話しないで。中に入りなさい。」
初老の女性が、木で出来た家から出てくる。
「はじめまして。私はここの村長?みたいなことをしています。今は、シンのマスターよ。」
何もないけれど、と言われて出されたお茶を飲みながら、マスターは話を始めた。
部屋の中には、小さな女の子たちがいて、シンをお父さん役にままごとをしている。
「ふふふ、あれは5年くらい前になるかしら。娘夫婦も死んでしまって、孫を連れて逃げて、この森へ迷い込んでしまったの。まだあの子たちは産まれたばかりの赤ちゃんで。私は疲れてしまった。そんなとき、森の奥から声が聞こえたの。」
「それでマスターになったのですね。」
「そうね。シンはいたずら好きで手癖も悪いけど、優しいわ。ここを拠点に、エト人を保護して。今ではちょっとした集落になった。人手が増えると、いろいろやれる人もいて、今ではここで畑も作っているし、獣を捕えて家畜も養っている。安定している。感謝しているのよ。」
「感謝なんていうな。俺はマスターとミナとマナが好きだ。」
「マスター、僕たちはエト人との偽りの歴史を明かして、共存できる世界を作ろうとしています。そのための戦力として、守護心に協力を求めているのです。地球人はみな悪人ではありません。最初に船に乗ってやってきた彼ら…。特にヴィクトールというリーダーが悪いと思っています。そして、彼は守護心を執拗に狙っています。だから、シンにはぜひ僕たちの仲間になってほしいのです。」
僕がまっすぐに見つめると、マスターは少し間を置き、シンの側へ移った。
目線をあわせて語り掛ける。
「ねえ、シン。私たちはもう大丈夫よ。一緒に行ってあげて?」
「ちょ…!」
「えーシンいっちゃうの?」「いっちゃうの??」
「世界を平和にするために、旅に行くのよ。終わったら、帰ってくるわよ。」
「シン、かっこいい!」「かっこいい!!」
双子の可愛い女の子が口をそろえる。
「……シンを狙ってくるならば、いつかはここへ来るでしょう。やられるなら、その前に。エトの平和をあなた方に託します。『マスター権限移譲。』」
マスターは手を僕の手に重ねた。
暖かい熱を感じて。
「はい、これで、シンのマスターはあなた。」
「おいおい!!俺の気持ちは!!?」
「しっぽをパタパタうねうねさせて、気にしているくせに、素直になりなさい!」
マスターはふふっと笑った。
夜。
みなに別れを告げて、里を出る。
「元気でねシン。」
「シン、がんばれー!」「がんばれー!」
「今までありがとう!」「こっちは心配しないでくれよな!」
里中の住民に見送られて、次の目的地に向かう。
次は、荒野の洞穴。亥のガイ。
そのためには、一度街へ紛れなくては。
荒野への途中に、街があるから。
ーーーーーーーーみんな。必ず、俺。こんな隠れなくてもいい世界にするから。
シンは心の中で、誓った。
その晩。
大きな雷が落ちて、隠れ里は消失した。
家畜も畑も家も、そして人も。
全部が消し炭になった。
『首尾よく済んだようだな。』
紫色の髪の、ダークスーツの青年の耳に着けられた小型の無線から、ヨシュアの声が響く。
「ああ、森の隠れ里。全滅させた。」
『さすが俺の可愛いキリングドール。それでは一時帰還してほしいところだが、このまま新しい指令がある。』
「何とでも。」
『探検家が裏切った。彼より先に、【神】を集めろ。やり方は任せる。』
「了解、ボス。」
『つれないな、君は。俺は君の親代わりだというのに。もっと甘えてくれてもいいんだよ、ハニー。』
「………では引き続き任務に移ります。」
無線を切って、何もなくなって開けた空を見る。
任務は絶対。
必ずや。
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