【完結】美貌のオメガは正体を隠す

竜鳴躍

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これは錯覚だ、俺は負けないぞ。

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北村の匂いは香水だと思ってた。


でもあのシトラスはフェロモン?抑制剤飲んでてもお互いに分かるのは『運命の相手』?


頭の中が北村でいっぱいになるのが嫌だ。

これは呪いだ。


呪いなんかに負けてたまるものか。


俺は番なんていらねえ。

男なんて欲しくねえ。



薬を飲んで、水をがぶ飲みする。



胸が苦しいのも、心拍数が上がるのも、つい目で追ってしまうのも、それはすべて錯覚だ。

思い込みだ。

負けるな、俺。


司法試験にこのまま受かったら。

司法修習生になって、最後の試験に合格すれば、もう弁護士じゃないか。

手ごたえは十分あった。

先生も、合格だろうって。

やっと報われるんだから。



俺が守るんだ。

オメガの人生を俺が変えるんだ。






「蜂谷です、入ります。」


「いらっしゃい。ま、座ってよ。」

「……座って?」

紀里谷先生の居座っている学科室は相変わらず書類が散乱している。


研究室をゴミだらけにして、学部学科室までもうすぐゴミ屋敷。

しょーがないなぁ。


「別に死にゃあしないよ。」


「バイト代弾んでくれたら掃除してあげてもいいですよ。全く、先生ったらそんなんだからアルファなのに嫁の来手がないんですよ。」

折角とび色のたれ目も、亜麻色の髪も、素敵に彩っているのに。

髪もひげものばしっぱだし、ぼっさぼさ。


「そういう君もねぇ、人のこと言えないでしょー。オメガなのにずぼらな格好してー。ほんとは綺麗な子なのに。」


「いいんですよー。それで、卒業できそうですかね?俺。」


「ちょっとお金が余分にかかるんだけど、不足する必修科目を通信で取るのはどうかなって。うちの大学と単位互換で提携している大学があるんだ。大学のリストと、とれる単位、取るべき単位をメモったからあげる。」


「ありがとうございます。これで早く卒業しちゃいます。」

…卒業すれば、気持ちも落ち着く。きっと。


バイバイ。北村。












そのころ、実家の和泉家で。
俺のことを父親が知っていたとは、俺は考えていなかった。


縁を切ったつもりの和泉家。

だが、戸籍上縁を切っても、血はつながっているのだ。

「オメガの身で19歳で司法試験に合格、か。」


「はい。公式の発表はまだ先ですが、そうなりそうです。」



「さすがだな。あれの母親もオメガでも優秀な女だった。私の倅の中で一番優秀なのが、まさかオメガのあの子とは。……まあ、バース性が判明する前から一番優秀だったが。」

アルファなはずの二人の息子は出来損ないで、三流大学にしか進学できず、法曹界に輩出する家系なのに、どっちも毎年司法試験に落ち続けている。



「アレを呼び戻せ。なんとしても。」
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