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視線と危機と
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…………なんだろう。
今朝は妙に人の視線を感じる。
こんな地味な平々凡々な男のことをなんで……?
寝ぐせでもついているのかな。
……でも、そんなんじゃない。
たとえて言うならば、肉食獣にロックオンされている草食動物のような…。
1講義目が終わり、妙に遠巻きでこちらをチラチラ見る学生たちを避けて学科室へ向かう。
学科室へ着くと、神妙な顔をした紀里谷先生が俺を隠すように中に入れ、学科室の鍵を閉めた。
「どうしたんですか?先生。」
「これを見なさい。」
先生が見せてくれたのは。アルファ専用の投稿サイト。
俺を襲わせるための、記事。
元々の姿の写真が家出する前のものだから、犯人は分かっている。
兄たちだ。
怒りに震える。
「アルファ同士の情報交換のためのサイトだから、結構これを見ている人は多いと思う。もしよかったら、俺は学科室を出るからここでしばらく身を隠しても構わないし、誰か信頼できそうなの見繕ってボディガードをさせてもいいけど。格が上のアルファと一緒なら襲われないと思うよ。」
「ありがとうございます。」
「それこそ、君が望むなら俺がボディガードをしてもいいんだけど。こう見えても割と格は高いんだ。」
有名国公立大学でその若さで准教授ならそうだと思う。
「でもずっとそうやってご迷惑をおかけするわけにはいきませんし。今日はもう帰ります。今日の講義はないので。」
ふふふ。
兄たちのことだから、間違いなく近くで俺を見張っているはずだ。
俺の無様な姿はナマで見たいはずだからな。
やってやる。
学科室を出て、俺は大学の出口に向かった。
「おい!!!!」
肩を掴まれる。――――――北村。
「お前、狙われているぞ!この大学の奴らは犯罪紛いなことをして将来棒に振るような真似はしないから自制してるけど、外に出たら危ないんだからな!」
はあはあ息を切らせて、どこから走って来たんだ。お前は。
「わかってる。さっき紀里谷先生から教えてもらった。」
「なら!」
「一生隠れて生きるわけにはいかないの。お分かり?」
ウイッグをゴミ箱に捨てて、眼鏡も捨てる。
だってもう意味はない。
ほうっとため息が聞こえる。
だぼだぼのパーカーも片づけて、じゃね。と俺は手を翻した。
―――――――――――ちきしょう。
アイツらめ。ヤクザもんまで呼んでるんじゃねえよ。
大学から駅まで。
俺を狙うやつは次から次へと現れた。
蹴っ飛ばして殴り飛ばして、振り切って。振り切った先にいたヤクザ風の男たちに捕まった。
目隠しされて連れてこられて、抑制剤を取られて閉じこめられた。
ちくしょう。
オメガだと判明してから、抑制剤を飲まなかったことなんて、ない。
ヒートの誘発剤を打たれたと思う。
「………っ。」
体が熱くなる。
俺がヒートで狂うのを、待ってるんだ。
今朝は妙に人の視線を感じる。
こんな地味な平々凡々な男のことをなんで……?
寝ぐせでもついているのかな。
……でも、そんなんじゃない。
たとえて言うならば、肉食獣にロックオンされている草食動物のような…。
1講義目が終わり、妙に遠巻きでこちらをチラチラ見る学生たちを避けて学科室へ向かう。
学科室へ着くと、神妙な顔をした紀里谷先生が俺を隠すように中に入れ、学科室の鍵を閉めた。
「どうしたんですか?先生。」
「これを見なさい。」
先生が見せてくれたのは。アルファ専用の投稿サイト。
俺を襲わせるための、記事。
元々の姿の写真が家出する前のものだから、犯人は分かっている。
兄たちだ。
怒りに震える。
「アルファ同士の情報交換のためのサイトだから、結構これを見ている人は多いと思う。もしよかったら、俺は学科室を出るからここでしばらく身を隠しても構わないし、誰か信頼できそうなの見繕ってボディガードをさせてもいいけど。格が上のアルファと一緒なら襲われないと思うよ。」
「ありがとうございます。」
「それこそ、君が望むなら俺がボディガードをしてもいいんだけど。こう見えても割と格は高いんだ。」
有名国公立大学でその若さで准教授ならそうだと思う。
「でもずっとそうやってご迷惑をおかけするわけにはいきませんし。今日はもう帰ります。今日の講義はないので。」
ふふふ。
兄たちのことだから、間違いなく近くで俺を見張っているはずだ。
俺の無様な姿はナマで見たいはずだからな。
やってやる。
学科室を出て、俺は大学の出口に向かった。
「おい!!!!」
肩を掴まれる。――――――北村。
「お前、狙われているぞ!この大学の奴らは犯罪紛いなことをして将来棒に振るような真似はしないから自制してるけど、外に出たら危ないんだからな!」
はあはあ息を切らせて、どこから走って来たんだ。お前は。
「わかってる。さっき紀里谷先生から教えてもらった。」
「なら!」
「一生隠れて生きるわけにはいかないの。お分かり?」
ウイッグをゴミ箱に捨てて、眼鏡も捨てる。
だってもう意味はない。
ほうっとため息が聞こえる。
だぼだぼのパーカーも片づけて、じゃね。と俺は手を翻した。
―――――――――――ちきしょう。
アイツらめ。ヤクザもんまで呼んでるんじゃねえよ。
大学から駅まで。
俺を狙うやつは次から次へと現れた。
蹴っ飛ばして殴り飛ばして、振り切って。振り切った先にいたヤクザ風の男たちに捕まった。
目隠しされて連れてこられて、抑制剤を取られて閉じこめられた。
ちくしょう。
オメガだと判明してから、抑制剤を飲まなかったことなんて、ない。
ヒートの誘発剤を打たれたと思う。
「………っ。」
体が熱くなる。
俺がヒートで狂うのを、待ってるんだ。
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