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音信不通
7月中旬の大安に、その日は来た。
いつも父が使っている料亭。
日本庭園に面している個室で、今、両家が向かい合っている。
この日のために西野が筋書きを書き、西野の旦那さんが段取りをした。
氷室が主人公。
ヒロインは花梨。
何も知らない花梨は、和服を着けて背の低い椅子に腰掛け、ニコニコしている。
「本日は――――」
「待ってくれ!」
仲人役である和泉大臣の秘書の声を遮り、氷室が襖を開けて飛び込んでくる。
「!」
花梨は目を見開く。動揺の色がみえる。
「花梨。君が出産を決めたと聞いた…。その子は………っ、俺の子じゃないのか!」
「なっ……!」
「花梨!? これはどういうことだ?」
「吉田さん!どういうことですか!」
「………俺の、子じゃなかったのか?」
俺たちも予め決められたセリフを言う。
「………今更っ、いまさら何よ!私の幸せを邪魔しないでよ!結婚………してくれないくせに!」
「………俺は、意気地なしだった。芸能人は人気商売だ。俺のファンは若い女性が多い。結婚して、父親になることで、今の立ち位置を失うことが怖くて………君にあんな酷いことを。ずっと、後悔、してた。」
「氷室さん………。」
「君は誰にも渡さない!お腹の子と三人で幸せになろう!そいつとではなく、俺と結婚してくれ………!今までみたいに、稼げないかもしれないけど………。」
「氷室さん!わたし、あなたのお嫁さんになる!」
「おめでとう、花梨。」
「拓海。ごめんなさい。」
茶番が終わった。
氷室は、割と演技派だった。
これで、解決。
俺は、男子トイレに駆け込んで、蜜璃に電話をかけた。
繋がらない。
メールも。
嫌な予感がした。
いつも父が使っている料亭。
日本庭園に面している個室で、今、両家が向かい合っている。
この日のために西野が筋書きを書き、西野の旦那さんが段取りをした。
氷室が主人公。
ヒロインは花梨。
何も知らない花梨は、和服を着けて背の低い椅子に腰掛け、ニコニコしている。
「本日は――――」
「待ってくれ!」
仲人役である和泉大臣の秘書の声を遮り、氷室が襖を開けて飛び込んでくる。
「!」
花梨は目を見開く。動揺の色がみえる。
「花梨。君が出産を決めたと聞いた…。その子は………っ、俺の子じゃないのか!」
「なっ……!」
「花梨!? これはどういうことだ?」
「吉田さん!どういうことですか!」
「………俺の、子じゃなかったのか?」
俺たちも予め決められたセリフを言う。
「………今更っ、いまさら何よ!私の幸せを邪魔しないでよ!結婚………してくれないくせに!」
「………俺は、意気地なしだった。芸能人は人気商売だ。俺のファンは若い女性が多い。結婚して、父親になることで、今の立ち位置を失うことが怖くて………君にあんな酷いことを。ずっと、後悔、してた。」
「氷室さん………。」
「君は誰にも渡さない!お腹の子と三人で幸せになろう!そいつとではなく、俺と結婚してくれ………!今までみたいに、稼げないかもしれないけど………。」
「氷室さん!わたし、あなたのお嫁さんになる!」
「おめでとう、花梨。」
「拓海。ごめんなさい。」
茶番が終わった。
氷室は、割と演技派だった。
これで、解決。
俺は、男子トイレに駆け込んで、蜜璃に電話をかけた。
繋がらない。
メールも。
嫌な予感がした。
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