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可愛い人 ~ジョエル王太子side~
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「ジョエルさまぁ~~♡大好きですぅ。あのネッ、マリエル。ばかだから、ばかにされてるのっ。」
ピンク頭の庇護欲を掻き立てる1学年下の男爵令嬢は、貴族なのか?というくらいマナーが悪いし、接触が多い。
どうやって側近をかいくぐれるのか分からないが、気が付いたらいて。
私の婚約者を悪し様に暗に言ってくる。
だが、アップル公爵令嬢は言うような嫌がらせを彼女にはしていない。
というか、彼女が言う嫌がらせは彼女の自作自演だと調べはついている。
彼女に騙されている者たちも少なからずいるようで、婚約者も辛いだろうが、彼女は気丈に振る舞う。
まあ、私が信じていないのだから大丈夫だろう。
私は、一方の意見だけでは判断しない。
必要なのは情報。
真実。
そういう意味では、爵位だけで私の婚約者におさまっている彼女も、そろそろ結婚が見えてきたからにはしっかりと調べておく必要があるだろう。
数年前に不幸にも高位貴族の令嬢ばかり狙ったように暴漢に襲われる事件が相次いだせいで、私の妃になれる家格の令嬢で、年が釣り合い、婚約者になりうるのは彼女だけだったし、何の非の打ちどころもないようではあるが、妃にするからにはしっかり調べる。
「ジョエル様、本日のランチ。私ご一緒させていただいても…?そろそろもう少し交流を深めたいですわ。」
慎ましやかに淑やかに、頬を染めるアップル公爵令嬢。
黒い髪を巻き髪にして、腰まで伸び、美しく整えられた姿。
黒い瞳はやや釣り目で、ともすれば妖艶にも見える姿は、淑女のマナーで清楚。
成績も優秀。
だが、私は『好き』ではない。
王族なのだ。貴族なのだから、相手に不足がなければいい。
しかし、好きではない相手との交流は最低限がいい。
結婚すれば、もう少し我慢する必要があるだろうが。
「すまない。もう少しで責任のある立場になる。だから、卒業までは気ままな時間を楽しみたくてね。君も、妃になったら友人と気軽に過ごすことも出来まい。結婚すればいくらでも二人でいるのだから、許してくれないか。」
「ジョエル様ったら仕方のない人。でも、浮気は許しませんよ。」
「ああ、心得ているよ。私は筋は通す男だからね。婚約者以外に恋人はもたないし、正妃以外に側室も愛妾ももたないつもりだから安心しておくれ。」
婚約者を追い返し、側近と一緒に人気のない穴場のスポットに向かう。
廃校舎の裏手になっていて、亡霊が出るという噂もあり、教室からは遠いからここでランチをとる者はいない。
しかし、美しく整えられた庭園だ。
緑が目隠しになっているので、私がここで過ごしても、誰も分からないだろう。
「……高位貴族の、王家に嫁ぐ令嬢があんなものだと心得ているのだがね。」
「殿下。」
宰相の息子で側近のケントが私を諫める。
眼鏡をかけた怜悧なプラチナブロンドの美貌は、なかなか令嬢に人気らしい。
「大丈夫。」
心配気なケントに微笑む。
そうはいうものの、彼女のふるまいや雰囲気、何が、とは言えないが何かが引っかかる。
それでも私は彼女を妃に娶らなければならないのだろうが。
ベンチに腰掛け、テーブルにケントがクロスを引き、もう一人の側近であるタイタンがランチボックスを広げた。
タイタンは騎士団長の息子で将来は近衛騎士として私に仕える男。
筋骨隆々で背も高い。短く刈り上げた茶色の髪が男らしい、なかなかの美丈夫だ。
「ここはいいですね。学園はどこに行っても気が休まらないですからね。」
彼らも令嬢に追い掛け回されて辟易しているらしい。
ケントが淹れてくれた紅茶を飲みながら、サンドイッチを食していたら、背後の廃校舎から楽し気な声が聞こえてきた。
「ふふふ。スノウ様は凄いですね。教えてくださるお陰で、今年もなんとか授業についていけそうです!」
「俺はすごくないよ。頑張ってるのはエリムじゃん。元々頭が良いんだよ。」
あれは……!
「エリム=シュタイン。盲目の伯爵令息ですね。教科書が読めないので授業が大変らしいですが、盲目ゆえに家族にも虐げられているようで、教室でも浮いています。入学当初は散々な成績でしたが、2年に上がってからは上位の常連ですよ。」
「線が細い男だな。派手な赤毛で綺麗な緑の目をしている。目が見えていればさぞかしよかっただろうに。」
「いや、彼じゃない。あれは誰だ?」
瞳には知性の光が宿り、誰からも見放された令息に丁寧に授業の内容を教えている。
馬鹿なふるまいでまとわりついている令嬢と同一人物には見えない。
髪の毛を耳にかける仕草は流れるようで。
背筋はピンと伸び、歩く所作も美しい。
高位貴族の所作が身についた、あれは誰だ。
知らない男に、私が見たことのない美しい笑顔を向ける。
胸がぎゅっとなる。
この高鳴りは。
駄目だ。私には婚約者がいる。
だが、気になる。
「ケント、タイタン。彼女を調べてくれないか。あまりにも私の前での姿と違いすぎる。」
そうして、彼女……いや、彼を調べていくうちに、『アップル公爵家』の闇が明るみになった。
婚約者の罪も。
そして、彼のことも。
私は筋を通すため、まずは証拠をそろえて陛下に進言した。
陛下もすぐに捜査に乗り出してくれた。
そして、彼の養父であるホワイト伯爵にも、私の想いを伝えた。
まずは、婚約破棄をする。それから―――――。
だが、突然、プロポーズしても上手くいかないのは当たり前だ。
だから、私は彼に好きになってもらうことから始めよう。
ピンク頭の庇護欲を掻き立てる1学年下の男爵令嬢は、貴族なのか?というくらいマナーが悪いし、接触が多い。
どうやって側近をかいくぐれるのか分からないが、気が付いたらいて。
私の婚約者を悪し様に暗に言ってくる。
だが、アップル公爵令嬢は言うような嫌がらせを彼女にはしていない。
というか、彼女が言う嫌がらせは彼女の自作自演だと調べはついている。
彼女に騙されている者たちも少なからずいるようで、婚約者も辛いだろうが、彼女は気丈に振る舞う。
まあ、私が信じていないのだから大丈夫だろう。
私は、一方の意見だけでは判断しない。
必要なのは情報。
真実。
そういう意味では、爵位だけで私の婚約者におさまっている彼女も、そろそろ結婚が見えてきたからにはしっかりと調べておく必要があるだろう。
数年前に不幸にも高位貴族の令嬢ばかり狙ったように暴漢に襲われる事件が相次いだせいで、私の妃になれる家格の令嬢で、年が釣り合い、婚約者になりうるのは彼女だけだったし、何の非の打ちどころもないようではあるが、妃にするからにはしっかり調べる。
「ジョエル様、本日のランチ。私ご一緒させていただいても…?そろそろもう少し交流を深めたいですわ。」
慎ましやかに淑やかに、頬を染めるアップル公爵令嬢。
黒い髪を巻き髪にして、腰まで伸び、美しく整えられた姿。
黒い瞳はやや釣り目で、ともすれば妖艶にも見える姿は、淑女のマナーで清楚。
成績も優秀。
だが、私は『好き』ではない。
王族なのだ。貴族なのだから、相手に不足がなければいい。
しかし、好きではない相手との交流は最低限がいい。
結婚すれば、もう少し我慢する必要があるだろうが。
「すまない。もう少しで責任のある立場になる。だから、卒業までは気ままな時間を楽しみたくてね。君も、妃になったら友人と気軽に過ごすことも出来まい。結婚すればいくらでも二人でいるのだから、許してくれないか。」
「ジョエル様ったら仕方のない人。でも、浮気は許しませんよ。」
「ああ、心得ているよ。私は筋は通す男だからね。婚約者以外に恋人はもたないし、正妃以外に側室も愛妾ももたないつもりだから安心しておくれ。」
婚約者を追い返し、側近と一緒に人気のない穴場のスポットに向かう。
廃校舎の裏手になっていて、亡霊が出るという噂もあり、教室からは遠いからここでランチをとる者はいない。
しかし、美しく整えられた庭園だ。
緑が目隠しになっているので、私がここで過ごしても、誰も分からないだろう。
「……高位貴族の、王家に嫁ぐ令嬢があんなものだと心得ているのだがね。」
「殿下。」
宰相の息子で側近のケントが私を諫める。
眼鏡をかけた怜悧なプラチナブロンドの美貌は、なかなか令嬢に人気らしい。
「大丈夫。」
心配気なケントに微笑む。
そうはいうものの、彼女のふるまいや雰囲気、何が、とは言えないが何かが引っかかる。
それでも私は彼女を妃に娶らなければならないのだろうが。
ベンチに腰掛け、テーブルにケントがクロスを引き、もう一人の側近であるタイタンがランチボックスを広げた。
タイタンは騎士団長の息子で将来は近衛騎士として私に仕える男。
筋骨隆々で背も高い。短く刈り上げた茶色の髪が男らしい、なかなかの美丈夫だ。
「ここはいいですね。学園はどこに行っても気が休まらないですからね。」
彼らも令嬢に追い掛け回されて辟易しているらしい。
ケントが淹れてくれた紅茶を飲みながら、サンドイッチを食していたら、背後の廃校舎から楽し気な声が聞こえてきた。
「ふふふ。スノウ様は凄いですね。教えてくださるお陰で、今年もなんとか授業についていけそうです!」
「俺はすごくないよ。頑張ってるのはエリムじゃん。元々頭が良いんだよ。」
あれは……!
「エリム=シュタイン。盲目の伯爵令息ですね。教科書が読めないので授業が大変らしいですが、盲目ゆえに家族にも虐げられているようで、教室でも浮いています。入学当初は散々な成績でしたが、2年に上がってからは上位の常連ですよ。」
「線が細い男だな。派手な赤毛で綺麗な緑の目をしている。目が見えていればさぞかしよかっただろうに。」
「いや、彼じゃない。あれは誰だ?」
瞳には知性の光が宿り、誰からも見放された令息に丁寧に授業の内容を教えている。
馬鹿なふるまいでまとわりついている令嬢と同一人物には見えない。
髪の毛を耳にかける仕草は流れるようで。
背筋はピンと伸び、歩く所作も美しい。
高位貴族の所作が身についた、あれは誰だ。
知らない男に、私が見たことのない美しい笑顔を向ける。
胸がぎゅっとなる。
この高鳴りは。
駄目だ。私には婚約者がいる。
だが、気になる。
「ケント、タイタン。彼女を調べてくれないか。あまりにも私の前での姿と違いすぎる。」
そうして、彼女……いや、彼を調べていくうちに、『アップル公爵家』の闇が明るみになった。
婚約者の罪も。
そして、彼のことも。
私は筋を通すため、まずは証拠をそろえて陛下に進言した。
陛下もすぐに捜査に乗り出してくれた。
そして、彼の養父であるホワイト伯爵にも、私の想いを伝えた。
まずは、婚約破棄をする。それから―――――。
だが、突然、プロポーズしても上手くいかないのは当たり前だ。
だから、私は彼に好きになってもらうことから始めよう。
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