4 / 63
可愛い人 ~ジョエル王太子side~
しおりを挟む
「ジョエルさまぁ~~♡大好きですぅ。あのネッ、マリエル。ばかだから、ばかにされてるのっ。」
ピンク頭の庇護欲を掻き立てる1学年下の男爵令嬢は、貴族なのか?というくらいマナーが悪いし、接触が多い。
どうやって側近をかいくぐれるのか分からないが、気が付いたらいて。
私の婚約者を悪し様に暗に言ってくる。
だが、アップル公爵令嬢は言うような嫌がらせを彼女にはしていない。
というか、彼女が言う嫌がらせは彼女の自作自演だと調べはついている。
彼女に騙されている者たちも少なからずいるようで、婚約者も辛いだろうが、彼女は気丈に振る舞う。
まあ、私が信じていないのだから大丈夫だろう。
私は、一方の意見だけでは判断しない。
必要なのは情報。
真実。
そういう意味では、爵位だけで私の婚約者におさまっている彼女も、そろそろ結婚が見えてきたからにはしっかりと調べておく必要があるだろう。
数年前に不幸にも高位貴族の令嬢ばかり狙ったように暴漢に襲われる事件が相次いだせいで、私の妃になれる家格の令嬢で、年が釣り合い、婚約者になりうるのは彼女だけだったし、何の非の打ちどころもないようではあるが、妃にするからにはしっかり調べる。
「ジョエル様、本日のランチ。私ご一緒させていただいても…?そろそろもう少し交流を深めたいですわ。」
慎ましやかに淑やかに、頬を染めるアップル公爵令嬢。
黒い髪を巻き髪にして、腰まで伸び、美しく整えられた姿。
黒い瞳はやや釣り目で、ともすれば妖艶にも見える姿は、淑女のマナーで清楚。
成績も優秀。
だが、私は『好き』ではない。
王族なのだ。貴族なのだから、相手に不足がなければいい。
しかし、好きではない相手との交流は最低限がいい。
結婚すれば、もう少し我慢する必要があるだろうが。
「すまない。もう少しで責任のある立場になる。だから、卒業までは気ままな時間を楽しみたくてね。君も、妃になったら友人と気軽に過ごすことも出来まい。結婚すればいくらでも二人でいるのだから、許してくれないか。」
「ジョエル様ったら仕方のない人。でも、浮気は許しませんよ。」
「ああ、心得ているよ。私は筋は通す男だからね。婚約者以外に恋人はもたないし、正妃以外に側室も愛妾ももたないつもりだから安心しておくれ。」
婚約者を追い返し、側近と一緒に人気のない穴場のスポットに向かう。
廃校舎の裏手になっていて、亡霊が出るという噂もあり、教室からは遠いからここでランチをとる者はいない。
しかし、美しく整えられた庭園だ。
緑が目隠しになっているので、私がここで過ごしても、誰も分からないだろう。
「……高位貴族の、王家に嫁ぐ令嬢があんなものだと心得ているのだがね。」
「殿下。」
宰相の息子で側近のケントが私を諫める。
眼鏡をかけた怜悧なプラチナブロンドの美貌は、なかなか令嬢に人気らしい。
「大丈夫。」
心配気なケントに微笑む。
そうはいうものの、彼女のふるまいや雰囲気、何が、とは言えないが何かが引っかかる。
それでも私は彼女を妃に娶らなければならないのだろうが。
ベンチに腰掛け、テーブルにケントがクロスを引き、もう一人の側近であるタイタンがランチボックスを広げた。
タイタンは騎士団長の息子で将来は近衛騎士として私に仕える男。
筋骨隆々で背も高い。短く刈り上げた茶色の髪が男らしい、なかなかの美丈夫だ。
「ここはいいですね。学園はどこに行っても気が休まらないですからね。」
彼らも令嬢に追い掛け回されて辟易しているらしい。
ケントが淹れてくれた紅茶を飲みながら、サンドイッチを食していたら、背後の廃校舎から楽し気な声が聞こえてきた。
「ふふふ。スノウ様は凄いですね。教えてくださるお陰で、今年もなんとか授業についていけそうです!」
「俺はすごくないよ。頑張ってるのはエリムじゃん。元々頭が良いんだよ。」
あれは……!
「エリム=シュタイン。盲目の伯爵令息ですね。教科書が読めないので授業が大変らしいですが、盲目ゆえに家族にも虐げられているようで、教室でも浮いています。入学当初は散々な成績でしたが、2年に上がってからは上位の常連ですよ。」
「線が細い男だな。派手な赤毛で綺麗な緑の目をしている。目が見えていればさぞかしよかっただろうに。」
「いや、彼じゃない。あれは誰だ?」
瞳には知性の光が宿り、誰からも見放された令息に丁寧に授業の内容を教えている。
馬鹿なふるまいでまとわりついている令嬢と同一人物には見えない。
髪の毛を耳にかける仕草は流れるようで。
背筋はピンと伸び、歩く所作も美しい。
高位貴族の所作が身についた、あれは誰だ。
知らない男に、私が見たことのない美しい笑顔を向ける。
胸がぎゅっとなる。
この高鳴りは。
駄目だ。私には婚約者がいる。
だが、気になる。
「ケント、タイタン。彼女を調べてくれないか。あまりにも私の前での姿と違いすぎる。」
そうして、彼女……いや、彼を調べていくうちに、『アップル公爵家』の闇が明るみになった。
婚約者の罪も。
そして、彼のことも。
私は筋を通すため、まずは証拠をそろえて陛下に進言した。
陛下もすぐに捜査に乗り出してくれた。
そして、彼の養父であるホワイト伯爵にも、私の想いを伝えた。
まずは、婚約破棄をする。それから―――――。
だが、突然、プロポーズしても上手くいかないのは当たり前だ。
だから、私は彼に好きになってもらうことから始めよう。
ピンク頭の庇護欲を掻き立てる1学年下の男爵令嬢は、貴族なのか?というくらいマナーが悪いし、接触が多い。
どうやって側近をかいくぐれるのか分からないが、気が付いたらいて。
私の婚約者を悪し様に暗に言ってくる。
だが、アップル公爵令嬢は言うような嫌がらせを彼女にはしていない。
というか、彼女が言う嫌がらせは彼女の自作自演だと調べはついている。
彼女に騙されている者たちも少なからずいるようで、婚約者も辛いだろうが、彼女は気丈に振る舞う。
まあ、私が信じていないのだから大丈夫だろう。
私は、一方の意見だけでは判断しない。
必要なのは情報。
真実。
そういう意味では、爵位だけで私の婚約者におさまっている彼女も、そろそろ結婚が見えてきたからにはしっかりと調べておく必要があるだろう。
数年前に不幸にも高位貴族の令嬢ばかり狙ったように暴漢に襲われる事件が相次いだせいで、私の妃になれる家格の令嬢で、年が釣り合い、婚約者になりうるのは彼女だけだったし、何の非の打ちどころもないようではあるが、妃にするからにはしっかり調べる。
「ジョエル様、本日のランチ。私ご一緒させていただいても…?そろそろもう少し交流を深めたいですわ。」
慎ましやかに淑やかに、頬を染めるアップル公爵令嬢。
黒い髪を巻き髪にして、腰まで伸び、美しく整えられた姿。
黒い瞳はやや釣り目で、ともすれば妖艶にも見える姿は、淑女のマナーで清楚。
成績も優秀。
だが、私は『好き』ではない。
王族なのだ。貴族なのだから、相手に不足がなければいい。
しかし、好きではない相手との交流は最低限がいい。
結婚すれば、もう少し我慢する必要があるだろうが。
「すまない。もう少しで責任のある立場になる。だから、卒業までは気ままな時間を楽しみたくてね。君も、妃になったら友人と気軽に過ごすことも出来まい。結婚すればいくらでも二人でいるのだから、許してくれないか。」
「ジョエル様ったら仕方のない人。でも、浮気は許しませんよ。」
「ああ、心得ているよ。私は筋は通す男だからね。婚約者以外に恋人はもたないし、正妃以外に側室も愛妾ももたないつもりだから安心しておくれ。」
婚約者を追い返し、側近と一緒に人気のない穴場のスポットに向かう。
廃校舎の裏手になっていて、亡霊が出るという噂もあり、教室からは遠いからここでランチをとる者はいない。
しかし、美しく整えられた庭園だ。
緑が目隠しになっているので、私がここで過ごしても、誰も分からないだろう。
「……高位貴族の、王家に嫁ぐ令嬢があんなものだと心得ているのだがね。」
「殿下。」
宰相の息子で側近のケントが私を諫める。
眼鏡をかけた怜悧なプラチナブロンドの美貌は、なかなか令嬢に人気らしい。
「大丈夫。」
心配気なケントに微笑む。
そうはいうものの、彼女のふるまいや雰囲気、何が、とは言えないが何かが引っかかる。
それでも私は彼女を妃に娶らなければならないのだろうが。
ベンチに腰掛け、テーブルにケントがクロスを引き、もう一人の側近であるタイタンがランチボックスを広げた。
タイタンは騎士団長の息子で将来は近衛騎士として私に仕える男。
筋骨隆々で背も高い。短く刈り上げた茶色の髪が男らしい、なかなかの美丈夫だ。
「ここはいいですね。学園はどこに行っても気が休まらないですからね。」
彼らも令嬢に追い掛け回されて辟易しているらしい。
ケントが淹れてくれた紅茶を飲みながら、サンドイッチを食していたら、背後の廃校舎から楽し気な声が聞こえてきた。
「ふふふ。スノウ様は凄いですね。教えてくださるお陰で、今年もなんとか授業についていけそうです!」
「俺はすごくないよ。頑張ってるのはエリムじゃん。元々頭が良いんだよ。」
あれは……!
「エリム=シュタイン。盲目の伯爵令息ですね。教科書が読めないので授業が大変らしいですが、盲目ゆえに家族にも虐げられているようで、教室でも浮いています。入学当初は散々な成績でしたが、2年に上がってからは上位の常連ですよ。」
「線が細い男だな。派手な赤毛で綺麗な緑の目をしている。目が見えていればさぞかしよかっただろうに。」
「いや、彼じゃない。あれは誰だ?」
瞳には知性の光が宿り、誰からも見放された令息に丁寧に授業の内容を教えている。
馬鹿なふるまいでまとわりついている令嬢と同一人物には見えない。
髪の毛を耳にかける仕草は流れるようで。
背筋はピンと伸び、歩く所作も美しい。
高位貴族の所作が身についた、あれは誰だ。
知らない男に、私が見たことのない美しい笑顔を向ける。
胸がぎゅっとなる。
この高鳴りは。
駄目だ。私には婚約者がいる。
だが、気になる。
「ケント、タイタン。彼女を調べてくれないか。あまりにも私の前での姿と違いすぎる。」
そうして、彼女……いや、彼を調べていくうちに、『アップル公爵家』の闇が明るみになった。
婚約者の罪も。
そして、彼のことも。
私は筋を通すため、まずは証拠をそろえて陛下に進言した。
陛下もすぐに捜査に乗り出してくれた。
そして、彼の養父であるホワイト伯爵にも、私の想いを伝えた。
まずは、婚約破棄をする。それから―――――。
だが、突然、プロポーズしても上手くいかないのは当たり前だ。
だから、私は彼に好きになってもらうことから始めよう。
95
あなたにおすすめの小説
ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!
迷路を跳ぶ狐
BL
いつもドジで、今日もお仕えする領主様に怒鳴られていた僕。自分が、ゲームの世界に悪役として転生していることに気づいた。このままだと、この領地は惨事が起こる。けれど、選択肢を間違えば、領地は助かっても王国が潰れる。そんな未来が怖くて動き出した僕だけど、すでに領地も王城も策略だらけ。その上、冷酷だったはずの領主様は、やけに僕との距離が近くて……僕は平穏が欲しいだけなのに! 僕のこと、いらないんじゃなかったの!? 惨劇が怖いので先に城を守りましょう!
【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。
cyan
BL
留学中に実家が潰れて家族を失くし、婚約者にも捨てられ、どこにも行く宛てがなく彷徨っていた僕を助けてくれたのは隣国の宰相だった。
家が潰れた僕は平民。彼は宰相様、それなのに僕は恐れ多くも彼に恋をした。
記憶喪失になったら弟の恋人になった
天霧 ロウ
BL
ギウリは種違いの弟であるトラドのことが性的に好きだ。そして酔ったフリの勢いでトラドにキスをしてしまった。とっさにごまかしたものの気まずい雰囲気になり、それ以来、ギウリはトラドを避けるような生活をしていた。
そんなある日、酒を飲んだ帰りに路地裏で老婆から「忘れたい記憶を消せる薬を売るよ」と言われる。半信半疑で買ったギウリは家に帰るとその薬を飲み干し意識を失った。
そして目覚めたときには自分の名前以外なにも覚えていなかった。
見覚えのない場所に戸惑っていれば、トラドが訪れた末に「俺たちは兄弟だけど、恋人なの忘れたのか?」と寂しそうに告げてきたのだった。
トラド×ギウリ
(ファンタジー/弟×兄/魔物×半魔/ブラコン×鈍感/両片思い/溺愛/人外/記憶喪失/カントボーイ/ハッピーエンド/お人好し受/甘々/腹黒攻/美形×地味)
寄るな。触るな。近付くな。
きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。
頭を打って?
病気で生死を彷徨って?
いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。
見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。
シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。
しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。
ーーーーーーーーーーー
初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。
オメガなのにムキムキに成長したんだが?
未知 道
BL
オメガという存在は、庇護欲が湧く容姿に成長する。
なのに俺は背が高くてムキムキに育ってしまい、周囲のアルファから『間違っても手を出したくない』と言われたこともある。
お見合いパーティーにも行ったが、あまりに容姿重視なアルファ達に「ざっけんじゃねー!! ヤルことばかりのくそアルファ共がぁああーーー!!」とキレて帰り、幼なじみの和紗に愚痴を聞いてもらう始末。
発情期が近いからと、帰りに寄った病院で判明した事実に、衝撃と怒りが込み上げて――。
※攻めがけっこうなクズです。でも本人はそれに気が付いていないし、むしろ正当なことだと思っています。
同意なく薬を服用させる描写がありますので、不快になる方はブラウザバックをお願いします。
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
【完結】悪妻オメガの俺、離縁されたいんだけど旦那様が溺愛してくる
古井重箱
BL
【あらすじ】劣等感が強いオメガ、レムートは父から南域に嫁ぐよう命じられる。結婚相手はヴァイゼンなる偉丈夫。見知らぬ土地で、見知らぬ男と結婚するなんて嫌だ。悪妻になろう。そして離縁されて、修道士として生きていこう。そう決意したレムートは、悪妻になるべくワガママを口にするのだが、ヴァイゼンにかえって可愛らがれる事態に。「どうすれば悪妻になれるんだ!?」レムートの試練が始まる。【注記】海のように心が広い攻(25)×気難しい美人受(18)。ラブシーンありの回には*をつけます。オメガバースの一般的な解釈から外れたところがあったらごめんなさい。更新は気まぐれです。アルファポリスとムーンライトノベルズ、pixivに投稿。
兄様の親友と恋人期間0日で結婚した僕の物語
サトー
BL
スローン王国の第五王子ユリアーネスは内気で自分に自信が持てず第一王子の兄、シリウスからは叱られてばかり。結婚して新しい家庭を築き、城を離れることが唯一の希望であるユリアーネスは兄の親友のミオに自覚のないまま恋をしていた。
ユリアーネスの結婚への思いを知ったミオはプロポーズをするが、それを知った兄シリウスは激昂する。
兄に縛られ続けた受けが結婚し、攻めとゆっくり絆を深めていくお話。
受け ユリアーネス(19)スローン王国第五王子。内気で自分に自信がない。
攻め ミオ(27)産まれてすぐゲンジツという世界からやってきた異世界人。を一途に思っていた。
※本番行為はないですが実兄→→→→受けへの描写があります。
※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる