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エドワードは旅に出る 2

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「エドワード様。お飲み物を用意しました。」

「うん。」


馬車に揺られて、俺は今、ジュエリー王国を目指している。

母上はなんか企んでいるようだけど、俺は知らない。


身分を隠して、王国に入ろうと思っている。



なんで、ジュエリー王国か。

それは、かの国にはあいつがいるし、男同士でも子を為せる方法があそこにはあるからだ。



(俺のこと…可愛いって言ってた…。)



最後のキスと、ほほ笑みが忘れられない。


月明りに照らされて、きれいでカッコよかった。



少しでも俺のことを思ってくれているのなら、俺を好きになって欲しい。
好きになってくれなくても、手に入れたい。




母上に旅に出たいと言えば、すんなりと許してくれた。

パーティーでいろいろやらかしたから、風化するまで少し国を離れていた方がいいらしい。

親くらいの年の男を侍従につけてくれた。


黒髪の男はジョー。帽子を目深に被って無口な男だ。今は御者をやってくれているが、腕も立つ。

ジョーの妻になるらしい、金髪碧眼の男はグリーン。
城を出て暫くして、ジョーが連れてきた。

体つきは細いが、彼も剣の腕は立つらしい。でも基本的には、俺の身の回りの世話をしてくれている。

いつもニコニコと、俺を見る目が優しい。


訳あって生き別れになった子どもと俺が同じくらいの年なのだそうだ。


そういうことなら甘えてやるか。



「グリーン、果物がたべたい。」


「ふふ。少しだけですよ?」

慣れた手つきでリンゴの皮をむき、膝の上でカットして、口元へ運んでくれる。



何だかくすぐったい。

カットされたりんごには、可愛い兎の耳がついていた。




「腹が減ってるなら、そろそろ昼食にしよう。お忍びだから、庶民の店ですけどいいですよね?」

前方から声がする。


「構わない。」


馬車をとめて、前をジョーが歩き、横をグリーンが歩いた。

気のよさそうな小太りのご婦人が営んでいる、小さなレストランに入る。

「シチューを三つ。あと、サラダ。レモン水も頼む。」


手慣れた様子でジョーが注文した。


「こういう店のシチューは美味いんだ。」

「へえ。」



「うふふ。ご家族仲がいいんですねぇ。うらやましい。うちのは大きくなったら親と一緒にいたがらなくって。」

女性がレモン水を置く。



「いや、俺たちは家族では。」


「あらいやだ。すみません、金髪の方と坊ちゃまが似ていたものだから。」



ごめんなさいね、といった女性はサービスで焼き菓子をつけてくれた。






グリーンと俺、そんなに似ているのだろうか。
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