僕らのトライアングル

竜鳴躍

文字の大きさ
1 / 32

三角関係かもしれない

しおりを挟む
僕の名前は工藤ユウキ。花も綻ぶ15歳である。

今日から高校1年生!

鏡の中を覗けば、ぴょこっとクセ毛が立った。

年齢より幼く見える丸顔も、小さくて低い鼻も、丸っこいくりっとした瞳も、あまり好きじゃない。

だって、あの人の隣に似合わないから…。


牛乳だってたくさん飲んだのに、身長だってあまり伸びなくて、華奢なままな僕は、学生服を着ていても、まるで小学校から進学したばかりの中学生みたいだ。

さらっとした黒髪に櫛を入れて、くせ毛を直すと、キッチンから父さんの声が聞こえてくる。


「ユウキ、もう神蔵君が来る時間だろ?弁当も出来てるから早く朝食食べちゃいな?お握りにしといたから!」

「ありがとー!」


僕の家は父と僕だけだ。
父さんと母さんは学生時代の友人だったらしいんだけど、大人になって再会して、結婚して僕が生まれたんだって。

でも、母さんは病気でお星さまになっちゃったんだけどね…。

僕を大人にしたような容姿の父さんは、もう35歳なのに、学生でも通用するくらい若々しい。
昔はちょっととがってて、就職に苦慮したらしく、ある時、自分がカワイイことに気付き、そのキャラで生きることにしたら就職が決まって、今ではSEだ。

僕もオトナっぽくなるのは諦めるべきなのかもしれない。



お握りを放り込み、冷めたみそ汁を流し込んでいる間に、父さんはスーツに着替えている。

知ってるよ、そのスーツ、彼氏に選んでもらったやつでしょ。



ピーンポーン。


「ユウキー!おはよーっ、迎えに来てやったぜ!」

「こらっ!言葉が汚い!」


「「あ。」」

近所に住む結城神蔵とその父親。
神蔵はお互いオムツを履いていた時からの仲。

ちょっとオラついてて苦手なんだよな、悪い奴じゃないんだけど。

何故か昔から世話を焼かれてしまってる僕である。


そして、僕の父は神蔵の父親と絶賛交際中、らしい。



いやー、しょうがないね。
遺伝だね。
性的嗜好に遺伝はないと思うけど、そういうことにしておこう。
そうすれば、孫の顔を見せられない罪悪感も薄れそう。

愛は平等だしね。
だって好きなんだから仕方ない。


僕の父が神蔵の父親と付き合っているように、僕の好きな人も男性だ。



「スーツ似合っているよ、洸。」

「お、おぅ……。」


「あー、お熱い!いこうぜ、ユウキ。あいつらもこれから同伴出勤だし。ゆでだこになる前に。」

「あ、うん。」


神蔵の刈り上げた後頭部を見ながら、マンションのエレベーターのボタンを押す。
神蔵はすぐ階段から行きたがるけど、さすがに12階から駆け下りたくないな。
シャッツと扉が開き、あの人が中から現れた。



「あ。おはよう、ゆうきくん、神蔵くん。」


ゆったりとしたシャツとズボンにサンダル。
そんな格好でも輝いて見える。

長めのミルクティ色に染めた髪はふわりと肩で遊び、前髪を掻き分ける仕草も素敵。

隣の部屋の大学生のお兄さん。

斎藤久遠さん。



ああ、すきっ。

いい匂い。


ゴミを出してきたのかなっ。

オトナっぽい。


高校生の頃から優しくて、いつも勉強教えてくれて、素敵なお兄さん。



「神蔵君はいつも元気だね。」

「そんなことねーよ!」



でも、久遠さんは僕より神蔵のことを目で追っていることが多いんだ。



もしかして、三角関係ってやつかもしれない。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

両片思いの幼馴染

kouta
BL
密かに恋をしていた幼馴染から自分が嫌われていることを知って距離を取ろうとする受けと受けの突然の変化に気づいて苛々が止まらない攻めの両片思いから始まる物語。 くっついた後も色々とすれ違いながら最終的にはいつもイチャイチャしています。 めちゃくちゃハッピーエンドです。

笑って下さい、シンデレラ

椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。 面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。 ツンデレは振り回されるべき。

幼馴染み

BL
高校生の真琴は、隣に住む幼馴染の龍之介が好き。かっこよくて品行方正な人気者の龍之介が、かわいいと噂の井野さんから告白されたと聞いて……。 高校生同士の瑞々しくて甘酸っぱい恋模様。

諦めた初恋と新しい恋の辿り着く先~両片思いは交差する~【全年齢版】

カヅキハルカ
BL
片岡智明は高校生の頃、幼馴染みであり同性の町田和志を、好きになってしまった。 逃げるように地元を離れ、大学に進学して二年。 幼馴染みを忘れようと様々な出会いを求めた結果、ここ最近は女性からのストーカー行為に悩まされていた。 友人の話をきっかけに、智明はストーカー対策として「レンタル彼氏」に恋人役を依頼することにする。 まだ幼馴染みへの恋心を忘れられずにいる智明の前に、和志にそっくりな顔をしたシマと名乗る「レンタル彼氏」が現れた。 恋人役を依頼した智明にシマは快諾し、プロの彼氏として完璧に甘やかしてくれる。 ストーカーに見せつけるという名目の元で親密度が増し、戸惑いながらも次第にシマに惹かれていく智明。 だがシマとは契約で繋がっているだけであり、新たな恋に踏み出すことは出来ないと自身を律していた、ある日のこと。 煽られたストーカーが、とうとう動き出して――――。 レンタル彼氏×幼馴染を忘れられない大学生 両片思いBL 《pixiv開催》KADOKAWA×pixivノベル大賞2024【タテスクコミック賞】受賞作 ※商業化予定なし(出版権は作者に帰属) この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。 https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

幼馴染が「お願い」って言うから

尾高志咲/しさ
BL
高2の月宮蒼斗(つきみやあおと)は幼馴染に弱い。美形で何でもできる幼馴染、上橋清良(うえはしきよら)の「お願い」に弱い。 「…だからってこの真夏の暑いさなかに、ふっかふかのパンダの着ぐるみを着ろってのは無理じゃないか?」 里見高校着ぐるみ同好会にはメンバーが3人しかいない。2年生が二人、1年生が一人だ。商店街の夏祭りに参加直前、1年生が発熱して人気のパンダ役がいなくなってしまった。あせった同好会会長の清良は蒼斗にパンダの着ぐるみを着てほしいと泣きつく。清良の「お願い」にしぶしぶ頷いた蒼斗だったが…。 ★上橋清良(高2)×月宮蒼斗(高2) ☆同級生の幼馴染同士が部活(?)でわちゃわちゃしながら少しずつ近づいていきます。 ☆第1回青春×BL小説カップに参加。最終45位でした。応援していただきありがとうございました!

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】

彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。 高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。 (これが最後のチャンスかもしれない) 流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。 (できれば、春樹に彼女が出来ませんように) そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。 ********* 久しぶりに始めてみました お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

処理中です...