聖女の力を搾取される偽物の侯爵令息は本物でした。隠された王子と僕は幸せになります!もうお父様なんて知りません!

竜鳴躍

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黒い魔女 ※残虐表現あり

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「やめて……!離してッ!いやぁああ!!」


熱い。

焼かれた鉄の棒が、ジュッと頬に当てられた。



「ひぃいっぃっ!!熱い、熱い!!!!痛い……ッ!!私の顔、顔があぁぁぁ!!!!」



「『聖女』様なんだろう?自分で治したらどうだ?」


嘲り笑う声が聞こえる。




どうしてこんなことになったの?


私はみんなに敬われて、ちやほやされて、世界で一番幸せな女の子になるはずだったのに。





「リリー!リリーはどこ!? 私、リリーがそばにいる時だけ力が湧いてくるの!リリーが触媒なのよ!屋敷からリリーを連れてきてよ!」


「陛下の話が頭に入っていないのか?本物の聖女であるリリー様はチャールズ殿下と一緒に侯爵家から救出されて、オランジュリー帝国だ。帝国から連れてこれるものか。というか、お前、本当に自分が聖女だと思っていたのか?だとしたら、おめでたいにもほどがあるな。嘘も大概にしろよ。」


くっ……。

この嘘なら説明がつくと思っていたのに。





私が物心ついたとき、家は小さな下宿だった。

母は元々貴族の令嬢だったのに、陰謀でその地位を追われたのだと言っていた。

一時は王太子の恋人だったらしい。

確かに母は美人で、働いている食堂の看板娘だった。


母は本当は王妃になるはずだったのだ。

こんな下賤な男たちにちやほやされて終わりじゃない。



時々やってくる汚らしい冒険者のおじさんは、何でも買ってくれた。

私は、平民にしては良い暮らしをしていたとは思う。


そんな時、私のお父さんだという人が迎えに来た。





侯爵令嬢だと思ったのに。

あの忌々しい綺麗な顔の男から何もかも取り上げて、私が幸せになるんだって思ったのに。

母の代わりに私がゆくゆくは王妃になり、好き勝手に生きるんだって。



くそっ、くそっ!!



父だと思っていた人は、平民で、神殿送りになった。

本当は、マリーって女とリリーを愛していたなんて、どういうこと!

裏切られていたという勘違いで、可愛さ余って憎さ百倍って、意味わからないんだけど!


昨日、母と本当の父とかいう男が処刑されたらしい。

ついでに、なんとかっていう公爵夫妻も処刑されたらしいわね。


その前日に、そこの息子だけ牢屋から出されて、私の牢の前を通り過ぎたわ。



助けてくれてもいいのに、こっちを一瞥もしなかった。





憎い。



憎い。



憎い。




【………助けてやろうか?】




牢屋の隅に、黒い塊が見える。




「誰よ。」



【我は聖女とは真逆の存在。『魔女』ともいう。お主の闇の魔力の高まりに呼応して、こうして出てきたわけだ。ようこそ、こちら側へ。我々はお主を歓迎するよ。】



「闇の魔力?………この顔、治せない、わよね。」



【治せるわけじゃないが、見た目を変えることができるぞ。それから、『魅了の力』や『死した者を操る力』もある。私は、オランジュリー帝国で処刑された女。魔の力に目覚めた者同士、二人で世界に目に物を言わせてやらないか?】



黒い塊が、部屋の中央に来る。


長い黒髪、黒い瞳、黒い服。唇だけが赤い。




「いいわね…。帝国にはあいつもいるんでしょうから。」




アイツを幸せに何かしてやるものですか。

もう、王子様はいらない。必要ない。


私が女王として、みんなに傅かれるの。
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