俺がお前を王にしてやる―隠れオメガクイーンは勇者様―

竜鳴躍

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こちらが本命

俺たちが勇者パーティーだってこと、忘れちゃ困るんだ。


「アーサー!任せた!」

「はい!」



風の魔法をかけて速度を上げ、空を翔ける。

自我を失ったスパイスの目や鼻や耳、口の穴から、どろりと黒いものが出て、俺を狙って伸びてくる。

蛇のように。

蔦のように。

竜のように。


何本も伸びて、俺の体を追いかける。

だが、捕まるものかよ!


「ははハ!逃げるだけカ!」



「逃げるつもりなら、もっと早く逃げられたんだけどね?」


時はきた。


俺はさっと体を翻す。



「ホーリー・インパクト。」



「エ。」


先ほどの浄化の光とは比べられないほどの光が、アーサーから放たれ、スパイスを包んだ。









躰に巻き付くように現れていた『黒』は、浄化の光に焼かれ、眼下のスパイスは眠る。

もうすぐ夜が更ける。


カサッと音がして、焼きそこなったソレが逃げてスパイスの体に入ろうとしているのを握りつぶせば、ギェッと声をあげる。


「もう入り込まないように彼の体の方は聖なる力で内臓を覆っておくよ。」

「ありがとう、アーサー。もう、他にはいないかな。」


『ギギッ…!離せっ!このッ!!』


「元気だなぁ。誰が離すかよ。お前の主は誰だ?なんであいつを使った?」

『………………うひひひひ。お前らめでたいなぁ。』




「?」



『俺は囮ダヨォ!邪魔なお前らを引き離すためのさぁ!お前がこいつとくっつけば、なおよかったんだけどさぁ!まあ、こんなのは運命の枝葉だからどうでもよいのさ!』



どごぉぉおおお!!!



遠い城の方から爆音が届いた。





―――――――――――――城から、煙が。

『本命はアキレス=ケン=タリスマンの命だ!イスリスのクーデターダヨォ!ケケケ、我らの神に幸あれ!』

俺の手の中の『黒』はただの黒焦げになって消えた。
















「ははははっ。父上!玉座をいただこう!しねっ!」


イスリスが剣を持って陛下の喉に刃をあてる。

日に焼けた肌の女はボロボロのドレスで高笑いをし、その父親の目も血走る。


「………っ。」


城の兵は何故か正気を失って、イスリスの味方をしているようだ。守るべき陛下を追い詰めるように囲む。


「ごほっ、…っ」

運悪く吐いた血で、陛下の服は濡れた。



かつん、かつんと黒いローブの人間が杖をつきながら現れた。



「ふふ、もうその躰では『時戻り』は無理でしょう。正しい歴史へと戻してくれる。」


「なるほどね。俺は『運命の神』に嫌われたらしい…。」


ローゼの誘拐も、俺からアーサーを引き離すことが目的。
俺の聖女はもういない。

だから、アーサーさえいなければ、俺は悪しきものを排除できない。

そしてローゼの力も、俺から遠ざければ―――――――。






「なるほど、よく考える。『運命の神』。どうあっても正史に戻したいわけか。だが、それは傲慢ってものだ。」




息が絶え絶えなはずの陛下は、亜空間から勇者時代の大剣を取り出すと、『運命の神』に向き直った。
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