17 / 78
こちらが本命
俺たちが勇者パーティーだってこと、忘れちゃ困るんだ。
「アーサー!任せた!」
「はい!」
風の魔法をかけて速度を上げ、空を翔ける。
自我を失ったスパイスの目や鼻や耳、口の穴から、どろりと黒いものが出て、俺を狙って伸びてくる。
蛇のように。
蔦のように。
竜のように。
何本も伸びて、俺の体を追いかける。
だが、捕まるものかよ!
「ははハ!逃げるだけカ!」
「逃げるつもりなら、もっと早く逃げられたんだけどね?」
時はきた。
俺はさっと体を翻す。
「ホーリー・インパクト。」
「エ。」
先ほどの浄化の光とは比べられないほどの光が、アーサーから放たれ、スパイスを包んだ。
躰に巻き付くように現れていた『黒』は、浄化の光に焼かれ、眼下のスパイスは眠る。
もうすぐ夜が更ける。
カサッと音がして、焼きそこなったソレが逃げてスパイスの体に入ろうとしているのを握りつぶせば、ギェッと声をあげる。
「もう入り込まないように彼の体の方は聖なる力で内臓を覆っておくよ。」
「ありがとう、アーサー。もう、他にはいないかな。」
『ギギッ…!離せっ!このッ!!』
「元気だなぁ。誰が離すかよ。お前の主は誰だ?なんであいつを使った?」
『………………うひひひひ。お前らめでたいなぁ。』
「?」
『俺は囮ダヨォ!邪魔なお前らを引き離すためのさぁ!お前がこいつとくっつけば、なおよかったんだけどさぁ!まあ、こんなのは運命の枝葉だからどうでもよいのさ!』
どごぉぉおおお!!!
遠い城の方から爆音が届いた。
―――――――――――――城から、煙が。
『本命はアキレス=ケン=タリスマンの命だ!イスリスのクーデターダヨォ!ケケケ、我らの神に幸あれ!』
俺の手の中の『黒』はただの黒焦げになって消えた。
「ははははっ。父上!玉座をいただこう!しねっ!」
イスリスが剣を持って陛下の喉に刃をあてる。
日に焼けた肌の女はボロボロのドレスで高笑いをし、その父親の目も血走る。
「………っ。」
城の兵は何故か正気を失って、イスリスの味方をしているようだ。守るべき陛下を追い詰めるように囲む。
「ごほっ、…っ」
運悪く吐いた血で、陛下の服は濡れた。
かつん、かつんと黒いローブの人間が杖をつきながら現れた。
「ふふ、もうその躰では『時戻り』は無理でしょう。正しい歴史へと戻してくれる。」
「なるほどね。俺は『運命の神』に嫌われたらしい…。」
ローゼの誘拐も、俺からアーサーを引き離すことが目的。
俺の聖女はもういない。
だから、アーサーさえいなければ、俺は悪しきものを排除できない。
そしてローゼの力も、俺から遠ざければ―――――――。
「なるほど、よく考える。『運命の神』。どうあっても正史に戻したいわけか。だが、それは傲慢ってものだ。」
息が絶え絶えなはずの陛下は、亜空間から勇者時代の大剣を取り出すと、『運命の神』に向き直った。
「アーサー!任せた!」
「はい!」
風の魔法をかけて速度を上げ、空を翔ける。
自我を失ったスパイスの目や鼻や耳、口の穴から、どろりと黒いものが出て、俺を狙って伸びてくる。
蛇のように。
蔦のように。
竜のように。
何本も伸びて、俺の体を追いかける。
だが、捕まるものかよ!
「ははハ!逃げるだけカ!」
「逃げるつもりなら、もっと早く逃げられたんだけどね?」
時はきた。
俺はさっと体を翻す。
「ホーリー・インパクト。」
「エ。」
先ほどの浄化の光とは比べられないほどの光が、アーサーから放たれ、スパイスを包んだ。
躰に巻き付くように現れていた『黒』は、浄化の光に焼かれ、眼下のスパイスは眠る。
もうすぐ夜が更ける。
カサッと音がして、焼きそこなったソレが逃げてスパイスの体に入ろうとしているのを握りつぶせば、ギェッと声をあげる。
「もう入り込まないように彼の体の方は聖なる力で内臓を覆っておくよ。」
「ありがとう、アーサー。もう、他にはいないかな。」
『ギギッ…!離せっ!このッ!!』
「元気だなぁ。誰が離すかよ。お前の主は誰だ?なんであいつを使った?」
『………………うひひひひ。お前らめでたいなぁ。』
「?」
『俺は囮ダヨォ!邪魔なお前らを引き離すためのさぁ!お前がこいつとくっつけば、なおよかったんだけどさぁ!まあ、こんなのは運命の枝葉だからどうでもよいのさ!』
どごぉぉおおお!!!
遠い城の方から爆音が届いた。
―――――――――――――城から、煙が。
『本命はアキレス=ケン=タリスマンの命だ!イスリスのクーデターダヨォ!ケケケ、我らの神に幸あれ!』
俺の手の中の『黒』はただの黒焦げになって消えた。
「ははははっ。父上!玉座をいただこう!しねっ!」
イスリスが剣を持って陛下の喉に刃をあてる。
日に焼けた肌の女はボロボロのドレスで高笑いをし、その父親の目も血走る。
「………っ。」
城の兵は何故か正気を失って、イスリスの味方をしているようだ。守るべき陛下を追い詰めるように囲む。
「ごほっ、…っ」
運悪く吐いた血で、陛下の服は濡れた。
かつん、かつんと黒いローブの人間が杖をつきながら現れた。
「ふふ、もうその躰では『時戻り』は無理でしょう。正しい歴史へと戻してくれる。」
「なるほどね。俺は『運命の神』に嫌われたらしい…。」
ローゼの誘拐も、俺からアーサーを引き離すことが目的。
俺の聖女はもういない。
だから、アーサーさえいなければ、俺は悪しきものを排除できない。
そしてローゼの力も、俺から遠ざければ―――――――。
「なるほど、よく考える。『運命の神』。どうあっても正史に戻したいわけか。だが、それは傲慢ってものだ。」
息が絶え絶えなはずの陛下は、亜空間から勇者時代の大剣を取り出すと、『運命の神』に向き直った。
あなたにおすすめの小説
政略結婚のはずが恋して拗れて離縁を申し出る話
藍
BL
聞いたことのない侯爵家から釣書が届いた。僕のことを求めてくれるなら政略結婚でもいいかな。そう考えた伯爵家四男のフィリベルトは『お受けします』と父へ答える。
ところがなかなか侯爵閣下とお会いすることができない。婚姻式の準備は着々と進み、数カ月後ようやく対面してみれば金髪碧眼の美丈夫。徐々に二人の距離は近づいて…いたはずなのに。『え、僕ってばやっぱり政略結婚の代用品!?』政略結婚でもいいと思っていたがいつの間にか恋してしまいやっぱり無理だから離縁しよ!とするフィリベルトの話。
兄様の親友と恋人期間0日で結婚した僕の物語
サトー
BL
スローン王国の第五王子ユリアーネスは内気で自分に自信が持てず第一王子の兄、シリウスからは叱られてばかり。結婚して新しい家庭を築き、城を離れることが唯一の希望であるユリアーネスは兄の親友のミオに自覚のないまま恋をしていた。
ユリアーネスの結婚への思いを知ったミオはプロポーズをするが、それを知った兄シリウスは激昂する。
兄に縛られ続けた受けが結婚し、攻めとゆっくり絆を深めていくお話。
受け ユリアーネス(19)スローン王国第五王子。内気で自分に自信がない。
攻め ミオ(27)産まれてすぐゲンジツという世界からやってきた異世界人。を一途に思っていた。
※本番行為はないですが実兄→→→→受けへの描写があります。
※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。
愛され少年と嫌われ少年
透
BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。
顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。
元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。
【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】
※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。
【完結】半端なあやかしの探しもの
雫川サラ
BL
人の子として生まれながら人ならざる「力」に目覚めてしまった少年・蘇芳。生きる場所を失い、絶望の淵に一度は立った蘇芳だが、ひとりのあやかしとの鮮烈な出会いによって次第に内側から変わり始める。
出会いも最悪なら態度も最悪なそのあやかしにどうしようもなく惹かれる理由は、果たして本当に血の本能によるものだけなのか?
後ろ向きな考え方しかできなかった少年が突然自分に降りかかった宿命にぶつかり、愛することを知り、生きようとする理由をその手で掴むまでのお話。
本作で第11回BL小説大賞に参加しております。投票やご感想大変嬉しいです。
※オメガバースの世界観を下敷きとした、前近代(近世)日本に似た異世界のお話です。独自設定はほんの味付け程度ですが1話目に作中に登場する用語の説明があります
※R描写あり回には*をつけます
【完結】生まれ変わってもΩの俺は二度目の人生でキセキを起こす!
天白
BL
【あらすじ】バース性診断にてΩと判明した青年・田井中圭介は将来を悲観し、生きる意味を見出せずにいた。そんな圭介を憐れに思った曾祖父の陸郎が彼と家族を引き離すように命じ、圭介は父から紹介されたαの男・里中宗佑の下へ預けられることになる。
顔も見知らぬ男の下へ行くことをしぶしぶ承諾した圭介だったが、陸郎の危篤に何かが目覚めてしまったのか、前世の記憶が甦った。
「田井中圭介。十八歳。Ω。それから現当主である田井中陸郎の母であり、今日まで田井中家で語り継がれてきただろう、不幸で不憫でかわいそ~なΩこと田井中恵の生まれ変わりだ。改めてよろしくな!」
これは肝っ玉母ちゃん(♂)だった前世の記憶を持ちつつも獣人が苦手なΩの青年と、紳士で一途なスパダリ獣人αが小さなキセキを起こすまでのお話。
※オメガバースもの。拙作「生まれ変わりΩはキセキを起こす」のリメイク作品です。登場人物の設定、文体、内容等が大きく変わっております。アルファポリス版としてお楽しみください。
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません
月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない?
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。