15 / 104
第一王子とイーノ
「イーノ!」
第一王子に呼び止められて、イーノは振り返った。
第一王子は金髪に翠色の目と王家の色を持っているが、華やかな甘い顔立ちの陛下や第二王子、王弟殿下と違い、涼やかな美貌の王妃似だ。
賢妃と名高い王妃譲りの知性で、土木や公衆衛生、経済の分野で博士号もとっている。
「カント王子。」
「聞いたぞ。叔父上が弟君を見初めたらしいな。」
「相変わらず情報がお早い。本人は知らないのですがね。」
「真面目眼鏡で隠しても、分かる者には分かるということか。そういえば、女官長と来春結婚らしいね。」
「ええ、彼女は誠実で好感がもてます。私の中身を好いてくれました。」
「よかったな。式では二人とも着飾るといいよ。彼女も女性だ。少しくらい憧れはあるだろう。おしゃれがよく分からないだけで、ちゃんとすれば彼女もかなり美しいと思う。ハハッ。見る目のない奴らが卒倒するな。」
イーノを労い、イーノは執務室へ去る。
その後ろ姿を見て、カントは幼い頃を思い出した。
6歳の頃、まだイーノは真面目眼鏡ではなかった。
宰相も夫人も。
その時まだニーノは赤ちゃんだったか。
黒髪は艶やかで夜のようで、白いすべすべした肌を際立たせ、バラ色の頬にふっくらとした唇。
サファイアブルーの瞳がキラキラと輝いて、イーノはどの令息よりも令嬢よりも美しい子どもだった。
だが、まさか…。
王家のお茶会の場で警備についていた騎士に独りよがりの想いを押し付けられ、襲われると誰が思うだろうか。
もちろん、騎士はその場で仲間に抑えられ、事なきを得、騎士は解雇になり辺境の地へ飛ばされた。
イーノはとても傷ついていた。
それからだ。
あの家が真面目眼鏡になったのは。
社交をしない家。
宰相家で次期宰相とはいえ、イーノを私の側近にしていいのかという声が何度かあがったことがあるが、私が押し切った。
イーノは大切な親友だ。
彼を守るのは私だ。
そして、彼はそんな私を支えてくれるだろう。
弟のニーノはイーノと違い、優秀ではあるがちょっと抜けている可愛らしい性格らしい。
隙を見せたらイーノ以上に危ないため、常に護衛がつき、お茶会の参加を断り続けていた。
ニーノもエンリケの側近に、と陛下たちは考えていたらしいが、私が兄を側近にしているので、貴族のバランスをとり、ニーノを側近にするのはやめてほしいと宰相から申し入れがあったらしい。
そんなふうに大事にまもられてきたニーノが見つかったか。
叔父上なら、大切に守ってくれるだろう。
第一王子に呼び止められて、イーノは振り返った。
第一王子は金髪に翠色の目と王家の色を持っているが、華やかな甘い顔立ちの陛下や第二王子、王弟殿下と違い、涼やかな美貌の王妃似だ。
賢妃と名高い王妃譲りの知性で、土木や公衆衛生、経済の分野で博士号もとっている。
「カント王子。」
「聞いたぞ。叔父上が弟君を見初めたらしいな。」
「相変わらず情報がお早い。本人は知らないのですがね。」
「真面目眼鏡で隠しても、分かる者には分かるということか。そういえば、女官長と来春結婚らしいね。」
「ええ、彼女は誠実で好感がもてます。私の中身を好いてくれました。」
「よかったな。式では二人とも着飾るといいよ。彼女も女性だ。少しくらい憧れはあるだろう。おしゃれがよく分からないだけで、ちゃんとすれば彼女もかなり美しいと思う。ハハッ。見る目のない奴らが卒倒するな。」
イーノを労い、イーノは執務室へ去る。
その後ろ姿を見て、カントは幼い頃を思い出した。
6歳の頃、まだイーノは真面目眼鏡ではなかった。
宰相も夫人も。
その時まだニーノは赤ちゃんだったか。
黒髪は艶やかで夜のようで、白いすべすべした肌を際立たせ、バラ色の頬にふっくらとした唇。
サファイアブルーの瞳がキラキラと輝いて、イーノはどの令息よりも令嬢よりも美しい子どもだった。
だが、まさか…。
王家のお茶会の場で警備についていた騎士に独りよがりの想いを押し付けられ、襲われると誰が思うだろうか。
もちろん、騎士はその場で仲間に抑えられ、事なきを得、騎士は解雇になり辺境の地へ飛ばされた。
イーノはとても傷ついていた。
それからだ。
あの家が真面目眼鏡になったのは。
社交をしない家。
宰相家で次期宰相とはいえ、イーノを私の側近にしていいのかという声が何度かあがったことがあるが、私が押し切った。
イーノは大切な親友だ。
彼を守るのは私だ。
そして、彼はそんな私を支えてくれるだろう。
弟のニーノはイーノと違い、優秀ではあるがちょっと抜けている可愛らしい性格らしい。
隙を見せたらイーノ以上に危ないため、常に護衛がつき、お茶会の参加を断り続けていた。
ニーノもエンリケの側近に、と陛下たちは考えていたらしいが、私が兄を側近にしているので、貴族のバランスをとり、ニーノを側近にするのはやめてほしいと宰相から申し入れがあったらしい。
そんなふうに大事にまもられてきたニーノが見つかったか。
叔父上なら、大切に守ってくれるだろう。
あなたにおすすめの小説
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜
鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。
そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。
あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。
そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。
「お前がずっと、好きだ」
甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。
※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています
【完結】逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。
しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです…
本当の花嫁じゃないとばれたら大変!
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
薄幸な子爵は捻くれて傲慢な公爵に溺愛されて逃げられない
くまだった
BL
アーノルド公爵公子に気に入られようと常に周囲に人がいたが、没落しかけているレイモンドは興味がないようだった。アーノルドはそのことが、面白くなかった。ついにレイモンドが学校を辞めてしまって・・・
捻くれ傲慢公爵→→→→→貧困薄幸没落子爵
最後のほうに主人公では、ないですが人が亡くなるシーンがあります。
地雷の方はお気をつけください。
ムーンライトさんで、先行投稿しています。
感想いただけたら嬉しいです。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。
村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました!
ありがとうございました!!
いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い
<あらすじ>
魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。
見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。
いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。
ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。
親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。
※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。
└性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。
処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます
ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。
しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。
——このままじゃ、王太子に処刑される。
前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。
中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。
囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。
ところが動くほど状況は悪化していく。
レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、
カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、
隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。
しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。
周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり——
自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。
誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う——
ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。