【完結】女装して姫プレイにハマった公爵次男は 王弟殿下に絡めとられる

ヒーロー

相手が伸ばす腕を掴んで、股間を強く蹴り上げた。


「うぐっ！」

逆上した男の、力強い騎士の腕。

だがそれは、私には届かない。



「だっ…………！」

だれが！？と言う声は声にならなかった。

鍵をかけたはずの部屋は、カントがマスタキーで開けていた。

そして、背後からカントが腕をひねり上げていた。




後ろには辺境伯も、騎士であるその息子たちも、王弟殿下もいる。

現行犯。

チェックメイト。



「この変質者が…………っ。許せない！接近禁止命令、追放処分違反。主共々道連れだ！」

「ぐあ…………！」

ミシッ。骨が軋む音がする。

「イーノ！」

カントの声で、私は力を込めた。


「消えろ！変態！」

「ぐはあ！」


腹部を蹴り飛ばすと、奴はベッドの方へ弾き飛ばされる。


いつの間にか起きて、立ち上がっているニーノを見つけ、ニヤリと笑うと詰め寄った。






なんてことだ！

天使は堕天使になった！

そうだ。あの子でも良い！人質にして逃げよう！

そして逃げた先で―――――



目の前の青年はぼんやりした瞳をしている。


いける！




しかし、急に視界が回転し、背中が床に打ち付けられた。




「ねえ、これ、押さえつけたよお？回収してえ、かいしゅー！」



「ばっ…………な、なぜ？」



「うちのニーノは護身術の達人なんだ。一対一なら負けない。」


しかも酔っぱらい。

演技ではなく、本当に酔っぱらっていた。

16歳で成人するこの国では貴族の嗜みとしてワインも許されているが、食い合わせが悪かったらしい。


「ははは！骨曲げちゃう！間接反対にしたら逃げられないよぉ？」

何度か上でジャンプして踏みつけ、動きが鈍くなったのを転がし、背に乗っかって間接をあらぬ方向に曲げて楽しそうだ。


「ははは、頼もしい。ニーノは怒らせないようにしないとな。」
ブルーノも面白そうに笑う。

さあ、最後のひと仕事。



トーマスは辺境伯たちが受け取り、王女のいる部屋にぶち込んで、カントが外から鍵をかける。


後は迷惑を被っているシーザルのところへ行き、王妃を回収するだけだ。