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過去の話

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「ふう、寒」

今日も一日が終わる。

マシューは店じまいをすると、店の二階に上がる。


ニーノ様と二人でやっているような店だ。

二階はマシューの居住スペースだった。


「そろそろクリスマスか………。カード用意しなくちゃね。」

実家のヴァイオリン子爵家とは、年に何回か文を送るくらいの付き合いになってしまった。

代々騎士になるような家だったし、父親に似て体が大きかった。
剣筋もよかったから、期待されて鍛えられた。
でも本当は、お母様と刺繍をしたり、綺麗な服を着てお茶会がしたかった。

自分を殺して、騎士団に入った。

可愛がっていた後輩と酒を飲んで、想いを告げられ、嬉しかった。
ヒューリーは、無理矢理私を犯したと後悔しているのかもしれないけど、あれで踏ん切りがついたのよ。

私の中身は女の子で、逞しい男の子が好き。

ヒューリーとそうなったのは、まんざらでもなくて。


お父様に告白して、騎士を辞めた。
跡取りには弟がなった。
私は大好きだった服飾の仕事がしたかったけど、宰相の息子さんの商会に入れられた。

そこでニーノ様と意気投合して、ローズブランドが出来たんだけどね。


「あれから疎遠になっちゃったけど、ヒューリー元気かしら。今ごろ一角の騎士になっているでしょうね。あの時のことを引きずってなきゃいいんだけど。」

自分で作ったローズブランドのハンカチにカードを添えて、実家へのプレゼントを用意する。






今でも先輩が忘れられない。

先輩が好き。

先輩は、騎士を辞めていた。

俺が騎士になる前に…………。


俺のせいだろうか。

あんなに強かった人から俺が剣を奪ってしまったのだろうか。

今でもこの腕に抱いたぬくもりは鮮明だ。

先輩は子爵家の跡取りでもなくなっていた。

今、どこにいるんだろう。

何をしているんだろう。

もし会えたなら、間違えない。

先輩に謝って、ちゃんと愛を告げるんだ。

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