16 / 20
ぼろぼろの心
しおりを挟む
どうしていいか分からない。
カルスのことを内心では好いていたはずなのに。
自分の言葉を聞かずに体を暴いた彼のことを思うと、色んな感情がぐちゃぐちゃでどうしていいか分からなかった。
カシャン………。
あんなに自分の能力を削いでいたネックレス。
どんなにしても外せなかったものが、首から外れて落ちる。
そうか。
誰かに抱かれた時に解ける呪いだったんだ。
だから、クレイも自分を抱かなかったに違いなかった。
「外れたんだね。」
「!!!」
クレイの声がして、振り返ると彼がいる。
冷たい声が響き、ベッドでまだ組み伏せるカルスとクレイの目が合った。
「………かわいそうに。君のことをベルは信じていたろうに。こんなに泣かされて。」
ベッドの頭の方に来て、クレイは冷静な様子で私の頭を撫でる。
「職を捨て、忠誠を捨て、家名も捨て。ベルを追ってくるんだから、君は本当にベルを愛しているんだろうね。だけど、間違ったね。」
「……どういうことだ。」
「まずは、ソレを閉まってくれないか。ベル立てるかい?そこが多分浴室だろう。簡易的なものだろうが、気持ち悪いだろうから、流してくるといいよ。それから、この薬を飲みなさい。緊急避妊薬だよ。」
優しい。
そっとシーツごと。私の体を見ないように抱きかかえ、風呂場に置いて、自分は外に出る。
「緊急……避妊?」
「彼は子を産める体だ。初潮もきた。望まない妊娠は避けた方がいいだろう。」
「産めないはずじゃ…。」
「過労と鍛えすぎで初潮が遅れてたんだ。こちらで医師に見せて、剣を取り上げて強制的に休養を取らせたら初潮は来たよ。あのまま貴国にいたら、本当に子が産めない体になっていただろうね。」
目の前の王子はロワに似た容姿をしているが、離し方やふるまい、表情は洗練されていて、全く印象が違う。
「いいか、カルス。私はこの国の王になる。野蛮な陛下、兄弟、この国に巣食う悪を全て倒す。だから味方が欲しい。私だって彼を愛している。初めは彼の立場や能力で助けてもらいたいと思っていただけだった。私の味方に堕ちてくれるまで、それからまあ、立場上、彼の力は制約させてもらってはいたがね。私を受け入れてくれたら解けるような設定だったから…。」
クレイはため息をついた。
「君は馬鹿だね。彼の心には常に君がいたのに。相思相愛だったのに、自分でぶち壊すようなことをして。人間って面白いものだ。」
「………なっ。」
カルスは目の前が真っ暗になった。
「私は彼を尊重した。彼の失われて傷ついた自尊心、自己肯定感を高めることを優先して、大事にしたよ。だから、彼とそういうことはしていない。していないからあのネックレスは外れていなかったのだから、信じるだろう?それと比べて、君はどうだろうね。」
そもそもあのバカが手を出していたんだ、私は今さら処女性なんて気にしていない。
彼が選ぶのはどっちかな?
「……………っ。ベル…っ。ベルさま……!団長、っ。私は、私は………っ。」
クレイの足元に崩れ落ちて。謝っても謝り足りない。
「カルス。」
ベルの声に顔をあげる。
タオルで体を拭き、便宜上シーツを頭からすっぽりかぶって現れた彼は、見上げたカルスの頬をはたいた。
「痛いか。これで、しまいにする。」
そして、ベルはくるりとクレイを見た。
「クレイ殿下。聞こえていた。私でよければ助けになろう。もとより目的は同じだったわけだ。ただ、私は結婚は………まだ考えられない。それでよければ。」
「ああ。もちろん。」
「カルス。お前は退団はゆるさん。お前も手を貸すんだ。いいな。」
「は……。」
ああ。団長が戻って来た。
カルスのことを内心では好いていたはずなのに。
自分の言葉を聞かずに体を暴いた彼のことを思うと、色んな感情がぐちゃぐちゃでどうしていいか分からなかった。
カシャン………。
あんなに自分の能力を削いでいたネックレス。
どんなにしても外せなかったものが、首から外れて落ちる。
そうか。
誰かに抱かれた時に解ける呪いだったんだ。
だから、クレイも自分を抱かなかったに違いなかった。
「外れたんだね。」
「!!!」
クレイの声がして、振り返ると彼がいる。
冷たい声が響き、ベッドでまだ組み伏せるカルスとクレイの目が合った。
「………かわいそうに。君のことをベルは信じていたろうに。こんなに泣かされて。」
ベッドの頭の方に来て、クレイは冷静な様子で私の頭を撫でる。
「職を捨て、忠誠を捨て、家名も捨て。ベルを追ってくるんだから、君は本当にベルを愛しているんだろうね。だけど、間違ったね。」
「……どういうことだ。」
「まずは、ソレを閉まってくれないか。ベル立てるかい?そこが多分浴室だろう。簡易的なものだろうが、気持ち悪いだろうから、流してくるといいよ。それから、この薬を飲みなさい。緊急避妊薬だよ。」
優しい。
そっとシーツごと。私の体を見ないように抱きかかえ、風呂場に置いて、自分は外に出る。
「緊急……避妊?」
「彼は子を産める体だ。初潮もきた。望まない妊娠は避けた方がいいだろう。」
「産めないはずじゃ…。」
「過労と鍛えすぎで初潮が遅れてたんだ。こちらで医師に見せて、剣を取り上げて強制的に休養を取らせたら初潮は来たよ。あのまま貴国にいたら、本当に子が産めない体になっていただろうね。」
目の前の王子はロワに似た容姿をしているが、離し方やふるまい、表情は洗練されていて、全く印象が違う。
「いいか、カルス。私はこの国の王になる。野蛮な陛下、兄弟、この国に巣食う悪を全て倒す。だから味方が欲しい。私だって彼を愛している。初めは彼の立場や能力で助けてもらいたいと思っていただけだった。私の味方に堕ちてくれるまで、それからまあ、立場上、彼の力は制約させてもらってはいたがね。私を受け入れてくれたら解けるような設定だったから…。」
クレイはため息をついた。
「君は馬鹿だね。彼の心には常に君がいたのに。相思相愛だったのに、自分でぶち壊すようなことをして。人間って面白いものだ。」
「………なっ。」
カルスは目の前が真っ暗になった。
「私は彼を尊重した。彼の失われて傷ついた自尊心、自己肯定感を高めることを優先して、大事にしたよ。だから、彼とそういうことはしていない。していないからあのネックレスは外れていなかったのだから、信じるだろう?それと比べて、君はどうだろうね。」
そもそもあのバカが手を出していたんだ、私は今さら処女性なんて気にしていない。
彼が選ぶのはどっちかな?
「……………っ。ベル…っ。ベルさま……!団長、っ。私は、私は………っ。」
クレイの足元に崩れ落ちて。謝っても謝り足りない。
「カルス。」
ベルの声に顔をあげる。
タオルで体を拭き、便宜上シーツを頭からすっぽりかぶって現れた彼は、見上げたカルスの頬をはたいた。
「痛いか。これで、しまいにする。」
そして、ベルはくるりとクレイを見た。
「クレイ殿下。聞こえていた。私でよければ助けになろう。もとより目的は同じだったわけだ。ただ、私は結婚は………まだ考えられない。それでよければ。」
「ああ。もちろん。」
「カルス。お前は退団はゆるさん。お前も手を貸すんだ。いいな。」
「は……。」
ああ。団長が戻って来た。
1
あなたにおすすめの小説
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる