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元国王夫婦とクズリー
「クズリーのクズリーがこの世からおさらばしてしまったのは、自業自得として。私たちってそこまで悪いことしたのかな。」
元王妃は、幽閉された小さな島で、騎士の監視の中、毎日役に立たない夫を眺めた。
王領区の中で手つかずの広い森の中の広い敷地。
そこに海に見える規模の湖を作り、その中に居住区と畑があった。
湖の外に転移門が設置されているが、見張りの騎士のための装置で、自分たちが使えることはない。
遺伝子が登録され、自分たちが使おうものなら即死レベルの電流が流れるからだ。
元々高位貴族出身で魔力は高いし、魔法も使えるが、亜空間収納や転移魔法なんてものは使えない。
あれが使えるミスティが特別であって、ゆえに、ここから逃れる術はない。
魔法は禁止されていないから、毎日、魔法を使いながらも汗水たらして家畜や農作物の世話をし、掃除や洗濯、料理もする。
家事なんてしたことないのに、魔法までとりあげられていたらと思うと、背筋が凍る。
もう二度と、王宮や権力、帝国、ミスティたちに関わりさえしなければ、きっと、それなりに暮らしていける。
これより落ちたくないので、素直に暮らしていくつもりだ。
白磁の肌も、白魚のような手も失ってしまったけど。
クズリーは情けなくも、処置の際は鼻水涙糞尿垂れ流して叫んでいた。
クズリー被害者の会が見守る中だったと聞く。
我が子といえど、あまりの出来損ないぶりに正直、そこまで可愛く思えていなかった子どもだが、男性器を失うというのは、辛いだろう。
だけど、あれだけあちこちに手をつけて、心身を傷つけていたのだから、当然の処罰だ。
幸い、クズリーの私生児は生まれていなかったが、王家としてクレイバーは保障を約束した。
クレイバーはアマンドとともに、あくせく働いているようだ。
そういえば、結婚した当時は自分もそうだったかもしれない。
夫がああなので、やらなくなってしまった。
何もしなかった、それが罪なのだと思い直す。
「あなたもいつまでも嘆いていないで働いてください。」
「ワインが欲しい。ステーキが食べたい。チェスがしたい。」
「ワインが欲しいならブドウを育てて醸造してください。ステーキが食べたければ、牛を育てて、チェスはそのへんの木を削って作ればよろしい。相手なら私がして差し上げます。」
「お前は幾分楽しげだな。」
「国民の苦労はこのようなものではなかったでしょう。それに、ノワールたちに比べたら……ふふっ。」
「ああ、かわいそうなエルフィン。ついに爵位を手放して、平民になってしまった。あばら家で、クスティと二人、炭鉱で働いているなんて!」
「ノワールは借金のカタに娼夫になったらしいですね。ああ、あの社交界の華だったノワールが!スキモノでしたし、案外幸せかもしれないですね?」
「実家にも絶縁され、恋人たちからも捨てられたのだろう、かわいそうに。」
「それは、嫉妬で実の息子を虐げるような人間はねぇ。」
シクシクと泣くばかりの夫には、呆れてしまう。
城の一角の、塔の上。
王族の牢屋では、キスティとクズリーが喧嘩をしている。
斬られた場所が痛いと泣くクズリーの下を消毒しながら、キスティは苛ついていた。
手は荒れ、慣れない家事に神経は擦り減り、身綺麗にする余裕がない。
それを責められ、ミスティと比較され、クズリーを嫌悪しながらも、一生逃げられはしない。
元王妃は、幽閉された小さな島で、騎士の監視の中、毎日役に立たない夫を眺めた。
王領区の中で手つかずの広い森の中の広い敷地。
そこに海に見える規模の湖を作り、その中に居住区と畑があった。
湖の外に転移門が設置されているが、見張りの騎士のための装置で、自分たちが使えることはない。
遺伝子が登録され、自分たちが使おうものなら即死レベルの電流が流れるからだ。
元々高位貴族出身で魔力は高いし、魔法も使えるが、亜空間収納や転移魔法なんてものは使えない。
あれが使えるミスティが特別であって、ゆえに、ここから逃れる術はない。
魔法は禁止されていないから、毎日、魔法を使いながらも汗水たらして家畜や農作物の世話をし、掃除や洗濯、料理もする。
家事なんてしたことないのに、魔法までとりあげられていたらと思うと、背筋が凍る。
もう二度と、王宮や権力、帝国、ミスティたちに関わりさえしなければ、きっと、それなりに暮らしていける。
これより落ちたくないので、素直に暮らしていくつもりだ。
白磁の肌も、白魚のような手も失ってしまったけど。
クズリーは情けなくも、処置の際は鼻水涙糞尿垂れ流して叫んでいた。
クズリー被害者の会が見守る中だったと聞く。
我が子といえど、あまりの出来損ないぶりに正直、そこまで可愛く思えていなかった子どもだが、男性器を失うというのは、辛いだろう。
だけど、あれだけあちこちに手をつけて、心身を傷つけていたのだから、当然の処罰だ。
幸い、クズリーの私生児は生まれていなかったが、王家としてクレイバーは保障を約束した。
クレイバーはアマンドとともに、あくせく働いているようだ。
そういえば、結婚した当時は自分もそうだったかもしれない。
夫がああなので、やらなくなってしまった。
何もしなかった、それが罪なのだと思い直す。
「あなたもいつまでも嘆いていないで働いてください。」
「ワインが欲しい。ステーキが食べたい。チェスがしたい。」
「ワインが欲しいならブドウを育てて醸造してください。ステーキが食べたければ、牛を育てて、チェスはそのへんの木を削って作ればよろしい。相手なら私がして差し上げます。」
「お前は幾分楽しげだな。」
「国民の苦労はこのようなものではなかったでしょう。それに、ノワールたちに比べたら……ふふっ。」
「ああ、かわいそうなエルフィン。ついに爵位を手放して、平民になってしまった。あばら家で、クスティと二人、炭鉱で働いているなんて!」
「ノワールは借金のカタに娼夫になったらしいですね。ああ、あの社交界の華だったノワールが!スキモノでしたし、案外幸せかもしれないですね?」
「実家にも絶縁され、恋人たちからも捨てられたのだろう、かわいそうに。」
「それは、嫉妬で実の息子を虐げるような人間はねぇ。」
シクシクと泣くばかりの夫には、呆れてしまう。
城の一角の、塔の上。
王族の牢屋では、キスティとクズリーが喧嘩をしている。
斬られた場所が痛いと泣くクズリーの下を消毒しながら、キスティは苛ついていた。
手は荒れ、慣れない家事に神経は擦り減り、身綺麗にする余裕がない。
それを責められ、ミスティと比較され、クズリーを嫌悪しながらも、一生逃げられはしない。
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