6 / 45
まずは神殿にカチコミました
しおりを挟む
「こんにちわぁ。ディユから来ましたぁ。」
目の前の可愛らしい男の子二人に、神官は目を白黒させた。
ディユ。
それは魔王が住むという魔族の国。
だが、目の前の子どもたちはとてもそんなふうに見えない。
「君たち、冗談はたいがいにしなさい。」
「いいえ、私たちはあなた方が魔族、悪魔と呼ぶ者です。あまりにもあなたたちが自分とは違う存在を恐れるから、森の中に引きこもっているだけなのに、いつのまにか私たちを悪しきものとして、いつか討伐しようとなさるので、いい加減誤解を解きたいと思ってきたのです。」
カルディはルシフェルの父親がしたためた書状を渡した。
神官の指がぷるぷる震える。
「あなたたちの中では、神殿こそ私たちの力を削ぐのですよね?悪しきものには聖なるものだと。ならば、私たちをこちらに置いていただけませんか?あなた方の監視のもとで、しばらく暮らさせてください。あっ、お金ならちゃんと持ってきているのでっ。生活費はお支払いします。学校も行きたいから、学費もそれで払うので。」
「どろぼーとかじゃないですよ!ここに来る途中、モンスターに襲われている人がいたから、助けてきたの!冒険者ギルドに納品したら、お金持ちになっちゃった!」
はい、と冒険者ギルドの登録証を差し出す。
「ギルドに確かめてくださいな。」
ふわりと笑うプラチナブロンドの少年。
まだ若いが上級神官のミシュランは、下級神官にすぐに調べさせた。
分からない。
よく分からない。
自分の中の常識がせめぎあっている。
だが、いずれにせよ彼らは子ども。害がないように見える。
下級神官は、すぐに戻ってきて、この二人が嘘を言っていないことを報告した。
「一つ、聞きたいのだが。仮にディユが悪しきものではないとして。勇者が倒すべき者はどこにいるというのだ?」
「何故、すぐに人間は悪を造りたがるのでしょう。敵がいないと生きていけないんですか?私たちディユでは犯罪はありません。みな、心安らかな善人なので。犯罪というものが存在する人間の方が、よほど悪だと思いますよ。全員がそうではないにせよ、人間の中にこそ悪がいるのではないでしょうか。だから、神は天罰をおこすのでしょう。そう……。何の罪もない我々を悪とし、攻め込むから。過去、返り討ちをしたように。人間に呆れて、隠れているにすぎないのにね…。」
わざと、光属性の魔法を指先にまとい、あたりに光の粒を振りまいてみる。
光や聖属性は、悪しき者が使うはずがないって思ってるよね?
「カルディ、勇者ってなあに?」
ふ、と笑ってルシフェルの上着をやさしく外してやる。
窮屈にしていた6枚の天使の羽が露になった。
ざわざわと、神殿の中から神官たちが現れる。
刮目せよ!
「てん し…??」
「馬鹿な、ディユだぞ?」
「でも確か、雄だけで繁殖するって…。天使も両性具有だ、見た目は雄だけで繁殖する…!」
「私たちがまちがっていたのか!?神に弓を引いていたというのか??それで神はお隠れになっていただけだと!」
「だが…。このあいだ勇者が…。魔王がいないのなら、勇者は何を倒す存在だというんだ!」
「ふふふ、勇者は『勇気のある者』という意味なのでは?…すんなり理解していただけて嬉しいのですが、すぐには皆さんが分かってくれると思っていません。私たちは、悪いイメージを払しょくするため、しばらくこちらの神殿にご厄介になりたいのです。私たちを見て、皆さんが判断してください。そして、よろしければ、この真実を他の方へも伝えるお手伝いをお願いしたいです。」
「もちろんですっ!」
やったー。ルシフェルの見た目サイコー。
目の前の可愛らしい男の子二人に、神官は目を白黒させた。
ディユ。
それは魔王が住むという魔族の国。
だが、目の前の子どもたちはとてもそんなふうに見えない。
「君たち、冗談はたいがいにしなさい。」
「いいえ、私たちはあなた方が魔族、悪魔と呼ぶ者です。あまりにもあなたたちが自分とは違う存在を恐れるから、森の中に引きこもっているだけなのに、いつのまにか私たちを悪しきものとして、いつか討伐しようとなさるので、いい加減誤解を解きたいと思ってきたのです。」
カルディはルシフェルの父親がしたためた書状を渡した。
神官の指がぷるぷる震える。
「あなたたちの中では、神殿こそ私たちの力を削ぐのですよね?悪しきものには聖なるものだと。ならば、私たちをこちらに置いていただけませんか?あなた方の監視のもとで、しばらく暮らさせてください。あっ、お金ならちゃんと持ってきているのでっ。生活費はお支払いします。学校も行きたいから、学費もそれで払うので。」
「どろぼーとかじゃないですよ!ここに来る途中、モンスターに襲われている人がいたから、助けてきたの!冒険者ギルドに納品したら、お金持ちになっちゃった!」
はい、と冒険者ギルドの登録証を差し出す。
「ギルドに確かめてくださいな。」
ふわりと笑うプラチナブロンドの少年。
まだ若いが上級神官のミシュランは、下級神官にすぐに調べさせた。
分からない。
よく分からない。
自分の中の常識がせめぎあっている。
だが、いずれにせよ彼らは子ども。害がないように見える。
下級神官は、すぐに戻ってきて、この二人が嘘を言っていないことを報告した。
「一つ、聞きたいのだが。仮にディユが悪しきものではないとして。勇者が倒すべき者はどこにいるというのだ?」
「何故、すぐに人間は悪を造りたがるのでしょう。敵がいないと生きていけないんですか?私たちディユでは犯罪はありません。みな、心安らかな善人なので。犯罪というものが存在する人間の方が、よほど悪だと思いますよ。全員がそうではないにせよ、人間の中にこそ悪がいるのではないでしょうか。だから、神は天罰をおこすのでしょう。そう……。何の罪もない我々を悪とし、攻め込むから。過去、返り討ちをしたように。人間に呆れて、隠れているにすぎないのにね…。」
わざと、光属性の魔法を指先にまとい、あたりに光の粒を振りまいてみる。
光や聖属性は、悪しき者が使うはずがないって思ってるよね?
「カルディ、勇者ってなあに?」
ふ、と笑ってルシフェルの上着をやさしく外してやる。
窮屈にしていた6枚の天使の羽が露になった。
ざわざわと、神殿の中から神官たちが現れる。
刮目せよ!
「てん し…??」
「馬鹿な、ディユだぞ?」
「でも確か、雄だけで繁殖するって…。天使も両性具有だ、見た目は雄だけで繁殖する…!」
「私たちがまちがっていたのか!?神に弓を引いていたというのか??それで神はお隠れになっていただけだと!」
「だが…。このあいだ勇者が…。魔王がいないのなら、勇者は何を倒す存在だというんだ!」
「ふふふ、勇者は『勇気のある者』という意味なのでは?…すんなり理解していただけて嬉しいのですが、すぐには皆さんが分かってくれると思っていません。私たちは、悪いイメージを払しょくするため、しばらくこちらの神殿にご厄介になりたいのです。私たちを見て、皆さんが判断してください。そして、よろしければ、この真実を他の方へも伝えるお手伝いをお願いしたいです。」
「もちろんですっ!」
やったー。ルシフェルの見た目サイコー。
31
あなたにおすすめの小説
嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!
迷路を跳ぶ狐
BL
悪逆の限りを尽くした公爵令息を断罪しろ! そんな貴族たちの声が高まった頃、僕の元に、冷酷と恐れられる王子がやって来た。
その男は、かつて貴族たちに疎まれ、王城から遠ざけられた王子だ。昔はよく城の雑用を言いつけられては、魔法使いの僕の元を度々訪れていた。
ひどく無愛想な王子で、僕が挨拶した時も最初は睨むだけだったのに、今は優しく微笑んで、まるで別人だ。
出会ったばかりの頃は、僕の従者まで怯えるような残酷ぶりで、鞭を振り回したこともあったじゃないか。それでも度々僕のところを訪れるたびに、少しずつ、打ち解けたような気がしていた。彼が民を思い、この国を守ろうとしていることは分かっていたし、応援したいと思ったこともある。
しかし、あいつはすでに王位を継がないことが決まっていて、次第に僕の元に来るのはあいつの従者になった。
あいつが僕のもとを訪れなくなってから、貴族たちの噂で聞いた。殿下は、王城で兄たちと協力し、立派に治世に携わっていると。
嬉しかったが、王都の貴族は僕を遠ざけたクズばかり。無事にやっているのかと、少し心配だった。
そんなある日、知らせが来た。僕の屋敷はすでに取り壊されることが決まっていて、僕がしていた結界の魔法の管理は、他の貴族が受け継ぐのだと。
は? 一方的にも程がある。
その直後、あの王子は僕の前に現れた。何と思えば、僕を王城に連れて行くと言う。王族の会議で決まったらしい。
舐めるな。そんな話、勝手に進めるな。
貴族たちの間では、みくびられたら終わりだ。
腕を組んでその男を睨みつける僕は、近づいてくる王子のことが憎らしい反面、見違えるほど楽しそうで、従者からも敬われていて、こんな時だと言うのに、嬉しかった。
だが、それとこれとは話が別だ! 僕を甘く見るなよ。僕にはこれから、やりたいことがたくさんある。
僕は、屋敷で働いてくれていたみんなを知り合いの魔法使いに預け、王族と、それに纏わり付いて甘い汁を吸う貴族たちと戦うことを決意した。
手始めに……
王族など、僕が追い返してやろう!
そう思って対峙したはずなのに、僕を連れ出した王子は、なんだか様子がおかしい。「この馬車は気に入ってもらえなかったか?」だの、「酒は何が好きだ?」だの……それは今、関係ないだろう……それに、少し距離が近すぎるぞ。そうか、喧嘩がしたいのか。おい、待て。なぜ手を握るんだ? あまり近づくな!! 僕は距離を詰められるのがどうしようもなく嫌いなんだぞ!
【完結】「奥さまは旦那さまに恋をしました」〜紫瞠柳(♂)。学生と奥さまやってます
天白
BL
誰もが想像できるような典型的な日本庭園。
広大なそれを見渡せるどこか古めかしいお座敷内で、僕は誰もが想像できないような命令を、ある日突然下された。
「は?」
「嫁に行って来い」
そうして嫁いだ先は高級マンションの最上階だった。
現役高校生の僕と旦那さまとの、ちょっぴり不思議で、ちょっぴり甘く、時々はちゃめちゃな新婚生活が今始まる!
……って、言ったら大袈裟かな?
※他サイト(フジョッシーさん、ムーンライトノベルズさん他)にて公開中。
不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です
新川はじめ
BL
国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。
フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。
生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!
待て、妊活より婚活が先だ!
檸なっつ
BL
俺の自慢のバディのシオンは実は伯爵家嫡男だったらしい。
両親を亡くしている孤独なシオンに日頃から婚活を勧めていた俺だが、いよいよシオンは伯爵家を継ぐために結婚しないといけなくなった。よし、お前のためなら俺はなんだって協力するよ!
……って、え?? どこでどうなったのかシオンは婚活をすっ飛ばして妊活をし始める。……なんで相手が俺なんだよ!
**ムーンライトノベルにも掲載しております**
【本編完結】異世界で政略結婚したオレ?!
カヨワイさつき
BL
美少女の中身は32歳の元オトコ。
魔法と剣、そして魔物がいる世界で
年の差12歳の政略結婚?!
ある日突然目を覚ましたら前世の記憶が……。
冷酷非道と噂される王子との婚約、そして結婚。
人形のような美少女?になったオレの物語。
オレは何のために生まれたのだろうか?
もう一人のとある人物は……。
2022年3月9日の夕方、本編完結
番外編追加完結。
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
黒髪黒目が希少な異世界で神使になって、四人の王様から求愛されました。
篠崎笙
BL
突然異世界に召喚された普通の高校生、中条麗人。そこでは黒目黒髪は神の使いとされ、大事にされる。自分が召喚された理由もわからないまま、異世界のもめごとを何とかしようと四つの国を巡り、行く先々でフラグを立てまくり、四人の王から求愛され、最後はどこかの王とくっつく話。
※東の王と南の王ENDのみ。「選択のとき/誰と帰る?」から分岐。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる