くず勇者にざまあ。虐げられた聖者に一目ぼれした魔王の側近はやり直す

竜鳴躍

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まずは神殿にカチコミました

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「こんにちわぁ。ディユから来ましたぁ。」


目の前の可愛らしい男の子二人に、神官は目を白黒させた。


ディユ。


それは魔王が住むという魔族の国。



だが、目の前の子どもたちはとてもそんなふうに見えない。



「君たち、冗談はたいがいにしなさい。」


「いいえ、私たちはあなた方が魔族、悪魔と呼ぶ者です。あまりにもあなたたちが自分とは違う存在を恐れるから、森の中に引きこもっているだけなのに、いつのまにか私たちを悪しきものとして、いつか討伐しようとなさるので、いい加減誤解を解きたいと思ってきたのです。」


カルディはルシフェルの父親がしたためた書状を渡した。




神官の指がぷるぷる震える。



「あなたたちの中では、神殿こそ私たちの力を削ぐのですよね?悪しきものには聖なるものだと。ならば、私たちをこちらに置いていただけませんか?あなた方の監視のもとで、しばらく暮らさせてください。あっ、お金ならちゃんと持ってきているのでっ。生活費はお支払いします。学校も行きたいから、学費もそれで払うので。」

「どろぼーとかじゃないですよ!ここに来る途中、モンスターに襲われている人がいたから、助けてきたの!冒険者ギルドに納品したら、お金持ちになっちゃった!」


はい、と冒険者ギルドの登録証を差し出す。


「ギルドに確かめてくださいな。」



ふわりと笑うプラチナブロンドの少年。



まだ若いが上級神官のミシュランは、下級神官にすぐに調べさせた。




分からない。

よく分からない。


自分の中の常識がせめぎあっている。



だが、いずれにせよ彼らは子ども。害がないように見える。

下級神官は、すぐに戻ってきて、この二人が嘘を言っていないことを報告した。





「一つ、聞きたいのだが。仮にディユが悪しきものではないとして。勇者が倒すべき者はどこにいるというのだ?」

「何故、すぐに人間は悪を造りたがるのでしょう。敵がいないと生きていけないんですか?私たちディユでは犯罪はありません。みな、心安らかな善人なので。犯罪というものが存在する人間の方が、よほど悪だと思いますよ。全員がそうではないにせよ、人間の中にこそ悪がいるのではないでしょうか。だから、神は天罰をおこすのでしょう。そう……。何の罪もない我々を悪とし、攻め込むから。過去、返り討ちをしたように。人間に呆れて、隠れているにすぎないのにね…。」

わざと、光属性の魔法を指先にまとい、あたりに光の粒を振りまいてみる。


光や聖属性は、悪しき者が使うはずがないって思ってるよね?


「カルディ、勇者ってなあに?」

ふ、と笑ってルシフェルの上着をやさしく外してやる。


窮屈にしていた6枚の天使の羽が露になった。




ざわざわと、神殿の中から神官たちが現れる。




刮目せよ!




「てん  し…??」

「馬鹿な、ディユだぞ?」

「でも確か、雄だけで繁殖するって…。天使も両性具有だ、見た目は雄だけで繁殖する…!」

「私たちがまちがっていたのか!?神に弓を引いていたというのか??それで神はお隠れになっていただけだと!」

「だが…。このあいだ勇者が…。魔王がいないのなら、勇者は何を倒す存在だというんだ!」



「ふふふ、勇者は『勇気のある者』という意味なのでは?…すんなり理解していただけて嬉しいのですが、すぐには皆さんが分かってくれると思っていません。私たちは、悪いイメージを払しょくするため、しばらくこちらの神殿にご厄介になりたいのです。私たちを見て、皆さんが判断してください。そして、よろしければ、この真実を他の方へも伝えるお手伝いをお願いしたいです。」




「もちろんですっ!」



やったー。ルシフェルの見た目サイコー。

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