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まろ蔵

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「塞王の楯」(今村翔吾著:集英社)

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[矛盾]という言葉がある。
韓非の著書「韓非子」の故事によると、中国の戦国時代、楚の武器を売る商人がどんな盾でも突き破る矛と、どんな矛でも防ぐという盾を同時に売り込んでいた。そこに居合わせた老人に「あなたの売る矛であなたの盾を突いたらどうなるのか」と問われて、返答に窮したという由来が語られている。

本書は日本の戦国時代における[矛盾]ともいえる話、近江に実在した決して打ち破られない石垣積みの職人集団・穴生衆(あのうしゅう)と全ての物を打ち砕く鉄砲鍛冶専門職人・国友衆(くにともしゅう)達の最強の攻防、切磋琢磨の物語である。

【盾方・穴生衆】
越前朝倉家の一乗谷城を織田信長が落とし、まだ幼い匡介(きょうすけ)は両親、妹と生き別れ、逃げる途中に四十絡みの男、源斎(げんさい)に助けられる。 源斎は石垣職人最高の匠ー塞王(さいおう)と呼ばれる天才職人だった。
匡介は源斎を頭目とする石垣作りの職人集団・穴太衆の飛田屋で育ち学び、職人としての技を磨きつづけ、やがて次期頭目への道を歩むことになる。匡介は絶対に破られない石垣を作り出せば戦(いくさ)を無くせる、泰平の世となり、父母や妹のような不幸な者を生まずにすむと願い、最強の石垣作りを目指す。

【矛方・国友衆】
近江国友衆の頭目・彦九郎(げんくろう)は、どんな守りも打ち破る鉄砲が出来れば、戦うこと自体が滅亡へと繋がるため、戦の抑止力となり、争いの無い世の中になると考えて鉄砲の改良に心血を注ぐ。その技は、やがて至高の大筒ー雷破(らいは)を創り出す。

豊臣秀吉が病死し、天下が乱れる中、匡介は京極高次(きょうごくたかつぐ)から琵琶湖畔にある大津城の石垣の改修を頼まれる。
一方、彦九郎も毛利元康(もうりもとやす)より鉄砲作りの依頼を受ける。
大津城を攻め落とすためである。

決戦の時は来た!
互いに願うのは、争いの無い泰平の世界。この戦いを最後の戦とするために矜持を持って戦うのである。

間違いなく、今村翔吾氏の新たなる代表作。
戦国を生きた、職人、武士、民衆達を見事に描いた会心の戦国小説。

(小説現代2021年12月号)
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