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25.波乱の幕開け ★
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僕は首元の歯型を隠すようにネックカバーをし、不安すらも覆い隠すように今まで通りに元気に振る舞った。
(きっと大丈夫なはず…。だって僕は誰とも最後までヤっていないはずだもん…)
Ωは発情期中にαに腹の中に精液を注がれながら噛まれないと番にはなれない。
僕は腹にそんなもの注がれた記憶はない。まぁ、発情期中の記憶なんてないんだけどね。僕は僕のお尻のキツさを信じてるんだ。襲われたあの日でないなら何も心配はいらないはずだ。
きっと、首元の噛み痕も何かの間違いなのだ。
「ホタル君、………本当に無理してない?」
「…シューヴェルト様」
秘密の庭でロレンス様が僕の頭を優しく撫でてくれている。何だか、その優しさに僕は甘えたくて…ロレンス様に我儘を言った。
「………僕を……抱きしめてくださりませんか」
「いいよ…ホタル、おいで」
ロレンス様は僕を優しくそれでいて強く抱きしめてくれた。本当に抱きしめてくれるなんて思っていなかった。ただ、そうなればいいな~ぐらいに考えていた。
「………ロレンス様の腕の中は暖かいですね」
「ホタルも暖かいよ」
僕がシューヴェルト様のことをロレンス様と下の名前で呼んでもロレンス様は何も言わなかった。婚約者でもないΩの僕に名前を呼ばれることは余り良くないことなのに。
そんな優しい時間を壊す音が僕たちに迫り始めていた。
__________学園の庭にいる生徒の皆さん。今すぐに庭から離れ、近くにいる教師の指示に従い避難してください__________こちら3年担当の教師レルゲンです。もう一度言います_________
慌ただしくなる庭で、そうレルゲン先生の声が鳴り響いた。
その瞬間、ガラス張りの壁が大きく揺れ映し出していた景色が消え真っ暗になった。まるで夜のように灯りがない暗闇になってしまった。
「なんだ…何が起こる…。ホタル君、私から離れないで」
「はいッ」
「お二方、そこから動かないようにしてください。灯りを今すぐお持ちします」
「ハレン、急げ」
「はッ」
僕はロレンス様から離れないように強く腕に抱きつく。ロレンス様も僕を守るように抱き寄せてくれた。
「あっ、僕の炎が明かり代わりになるかもしれません」
僕は炎を出そうとした__________その瞬間、
バリッ バリンッ そんな音が秘密の庭に響いたと思った瞬間、天井からガラスが割れる音とともに光が差し込んできた。
明るくなった庭に光とともにそれは庭の中に侵入してきた。ガラスがバラバラと激しい音を立てて地面に落下してくる。
周りから戸惑いの声が聞こえてくる。
「何よ………何なのよアレ………」
「…ッ」
「あんなの見たことないし習ったこともないぞ!!」
本当にアレは何なのだろう。いいや、僕はアレの正体を知っている…。
ただ、それは物語上だけでしか知らない。
「……………ドラゴン」
「ホタルッ、あの生物を知っているのか!?」
「はいッ、でもドラゴンはこの世界には出てこないはずなんです!」
それは硬い鱗で覆われ獰猛な牙を見せてこちらに狙いを定めていた。アホエロの世界にこんな生き物出てこなかったし、こんな危ない場面も無かった!やおい はどこに行った!こんな設定なんて僕は聞いてないよッ!
僕が一歩後ろへ下がったとき、その声は秘密の庭に轟いた。
「ホタル!」
「ヒガシさん!」
「預言者様ッ!? 駄目です、こちらに来てはいけないッッッッッッ」
ヒガシさんが僕に向かって走ってくる。
その瞬間、ドラゴンがヒガシさんめがけて猛スピードで飛び立っていく。
「__________光よ!」
ヒガシさんの魔法で目がくらんだのかドラゴンはその場で倒れもがき始めた。
「早くッッッッホタルこっちに来て!今のうちに逃げるよッッ!?」
「ホタルッ、ちょっと我慢して!」
「えッ?…うわッ!!!!ロレンス様?!」
ヒガシさんの言葉にロレンス様が僕を急いで抱きかかえ走る。
そして庭の入り口で王子様がこちらの様子をうかがってヒガシさんに向かい大声で叫んだ。
「おいッ、ナナセこれはどういうことだッ。お前の予言にこのことは出てこなかったのか!?」
「うるせーなッ!? 僕の予言だって万能じゃない!」
「煩いだ?!クソッ、この使えないクズめ!! そこの化け物に食われてしまえ!」
王子様はヒガシさんにそう悪態を付きながらもヒガシさんのことを逃げずに待っていた。
ドラゴンが起き上がり始める。そしてその鋭い目はこちらに向けられていた。
パシッそんな軽石が何かに当たったような音だった。
「おいッ! 俺の可愛い後輩に傷はつけさせないぞ化け物!!」
「ウイス先輩ッ!?」
「ウイス、なぜ!」
「煩いよロレンス、俺の可愛い後輩落としたら許さないんだからな!早く行けッ!」
ドラゴンがウイス先輩の方向にゆっくりと顔を向け始める。
「ッ! ロレンス様下ろして!あれじゃあウイス先輩が! ウイス先輩がッッッッッッ!」
「………………」
ロレンス様は僕をおろしてくれない。むしろどんどん足が早くなってウイス先輩とドラゴンから遠のいて行く。
ドラゴンが口から火を吐き始めた。その火が庭の薔薇たちを燃やし尽くし庭を火の海にしていく。ウイス先輩の姿が炎の海に消えてゆく。
僕がもう駄目だと思った瞬間、僕と僕を抱えるロレンス様の真横を魔法のように猛スピードですり抜けていく一人の教師の姿があった。
「ウイスッッッッッッッッッ!!!!」
「レルゲン教授!?」
「えッ? ウイス先輩の恋人教師!」
ロレンス様の言葉に僕は驚く。なんてヒーローのような登場だろう…カッコイイ。
「__________爆ぜろッッッッ、私のウイスを奪わせはしない!」
「レーちゃんッッッッ」
ウイス先輩の声に僕は安心した。ウイス先輩はどうやらまだ無事だったらしい。
レルゲン先生の声にウイス先輩の目がハートになった気がする。煙で何が起こってるか見えないけど。
そして、凄い爆発音とともに煙の中からドラゴンが羽ばたきそのまま空高く天井を打ち壊し飛び去って行ってしまった。
「…………終わったのか?」
そんな王子様の言葉に皆、警戒しつつそれでも安心したような声がし始めた。
「あの…化け物はッ…、何だったのですか」
生徒たちが震えた声で王子様や預言者様であるヒガシさんにそれぞれ詰め寄ってくる。
先程のことにくわえ秘密の庭のこの惨状だ…皆パニックを起こしているのだ。
「…追って知らせが王国全土に届き渡るはずだ。それまで待て」
「それでは分かりません!その間に、またあのような化け物がこの学園に飛んでくるのではないですか!?」
皆怖いのだ。僕だって怖いし納得できない…。あんなのがまた学園に来たら次は死人が出るかもしれない。むしろ、何故今回は誰も死ななかったのかおかしいくらいだ。
「__________皆さん、落ち着いてください。大丈夫です! もう学園にはドラゴンは来ません!! 僕は預言者です、僕の言葉を信じて下さい」
ヒガシさんの言葉に皆落ち着きを取り戻し始める。
「大丈夫! 僕はこの国をあの脅威から救えますから!」
「…預言者様がそういうなら大丈夫だ」
「あぁ、預言者様の言葉を信じよう」
何だか宗教みたいだ…。でもそうなるよね、皆誰かの言葉にすがりたいのだ。ヒガシさんはほしい言葉を言ってくれる。皆は、それを信じたい。僕もヒガシさんの言葉を信じている。
だって彼は転移者で僕と違って何か特別な力を宿していそうだから。
「ウイス怪我はないですか? ……貴方が無茶をした時、私は心臓が止まりかけましたよ」
「ごめんレーちゃん。だけど怪我はないよ、俺のカッコイイ恋人が助けてくれたからね!!」
ウイス先輩とレルゲン先生が抱き合っていた。
(BLだ! 生だ! ご馳走様です!!)
僕も隣にいるロレンス様の腕に抱きつく。ロレンス様も僕の頭を撫でてくれた。何だか安心してしまい、ロレンス様にそのまま体を預けることにした。
※ドラゴンイメージ
(きっと大丈夫なはず…。だって僕は誰とも最後までヤっていないはずだもん…)
Ωは発情期中にαに腹の中に精液を注がれながら噛まれないと番にはなれない。
僕は腹にそんなもの注がれた記憶はない。まぁ、発情期中の記憶なんてないんだけどね。僕は僕のお尻のキツさを信じてるんだ。襲われたあの日でないなら何も心配はいらないはずだ。
きっと、首元の噛み痕も何かの間違いなのだ。
「ホタル君、………本当に無理してない?」
「…シューヴェルト様」
秘密の庭でロレンス様が僕の頭を優しく撫でてくれている。何だか、その優しさに僕は甘えたくて…ロレンス様に我儘を言った。
「………僕を……抱きしめてくださりませんか」
「いいよ…ホタル、おいで」
ロレンス様は僕を優しくそれでいて強く抱きしめてくれた。本当に抱きしめてくれるなんて思っていなかった。ただ、そうなればいいな~ぐらいに考えていた。
「………ロレンス様の腕の中は暖かいですね」
「ホタルも暖かいよ」
僕がシューヴェルト様のことをロレンス様と下の名前で呼んでもロレンス様は何も言わなかった。婚約者でもないΩの僕に名前を呼ばれることは余り良くないことなのに。
そんな優しい時間を壊す音が僕たちに迫り始めていた。
__________学園の庭にいる生徒の皆さん。今すぐに庭から離れ、近くにいる教師の指示に従い避難してください__________こちら3年担当の教師レルゲンです。もう一度言います_________
慌ただしくなる庭で、そうレルゲン先生の声が鳴り響いた。
その瞬間、ガラス張りの壁が大きく揺れ映し出していた景色が消え真っ暗になった。まるで夜のように灯りがない暗闇になってしまった。
「なんだ…何が起こる…。ホタル君、私から離れないで」
「はいッ」
「お二方、そこから動かないようにしてください。灯りを今すぐお持ちします」
「ハレン、急げ」
「はッ」
僕はロレンス様から離れないように強く腕に抱きつく。ロレンス様も僕を守るように抱き寄せてくれた。
「あっ、僕の炎が明かり代わりになるかもしれません」
僕は炎を出そうとした__________その瞬間、
バリッ バリンッ そんな音が秘密の庭に響いたと思った瞬間、天井からガラスが割れる音とともに光が差し込んできた。
明るくなった庭に光とともにそれは庭の中に侵入してきた。ガラスがバラバラと激しい音を立てて地面に落下してくる。
周りから戸惑いの声が聞こえてくる。
「何よ………何なのよアレ………」
「…ッ」
「あんなの見たことないし習ったこともないぞ!!」
本当にアレは何なのだろう。いいや、僕はアレの正体を知っている…。
ただ、それは物語上だけでしか知らない。
「……………ドラゴン」
「ホタルッ、あの生物を知っているのか!?」
「はいッ、でもドラゴンはこの世界には出てこないはずなんです!」
それは硬い鱗で覆われ獰猛な牙を見せてこちらに狙いを定めていた。アホエロの世界にこんな生き物出てこなかったし、こんな危ない場面も無かった!やおい はどこに行った!こんな設定なんて僕は聞いてないよッ!
僕が一歩後ろへ下がったとき、その声は秘密の庭に轟いた。
「ホタル!」
「ヒガシさん!」
「預言者様ッ!? 駄目です、こちらに来てはいけないッッッッッッ」
ヒガシさんが僕に向かって走ってくる。
その瞬間、ドラゴンがヒガシさんめがけて猛スピードで飛び立っていく。
「__________光よ!」
ヒガシさんの魔法で目がくらんだのかドラゴンはその場で倒れもがき始めた。
「早くッッッッホタルこっちに来て!今のうちに逃げるよッッ!?」
「ホタルッ、ちょっと我慢して!」
「えッ?…うわッ!!!!ロレンス様?!」
ヒガシさんの言葉にロレンス様が僕を急いで抱きかかえ走る。
そして庭の入り口で王子様がこちらの様子をうかがってヒガシさんに向かい大声で叫んだ。
「おいッ、ナナセこれはどういうことだッ。お前の予言にこのことは出てこなかったのか!?」
「うるせーなッ!? 僕の予言だって万能じゃない!」
「煩いだ?!クソッ、この使えないクズめ!! そこの化け物に食われてしまえ!」
王子様はヒガシさんにそう悪態を付きながらもヒガシさんのことを逃げずに待っていた。
ドラゴンが起き上がり始める。そしてその鋭い目はこちらに向けられていた。
パシッそんな軽石が何かに当たったような音だった。
「おいッ! 俺の可愛い後輩に傷はつけさせないぞ化け物!!」
「ウイス先輩ッ!?」
「ウイス、なぜ!」
「煩いよロレンス、俺の可愛い後輩落としたら許さないんだからな!早く行けッ!」
ドラゴンがウイス先輩の方向にゆっくりと顔を向け始める。
「ッ! ロレンス様下ろして!あれじゃあウイス先輩が! ウイス先輩がッッッッッッ!」
「………………」
ロレンス様は僕をおろしてくれない。むしろどんどん足が早くなってウイス先輩とドラゴンから遠のいて行く。
ドラゴンが口から火を吐き始めた。その火が庭の薔薇たちを燃やし尽くし庭を火の海にしていく。ウイス先輩の姿が炎の海に消えてゆく。
僕がもう駄目だと思った瞬間、僕と僕を抱えるロレンス様の真横を魔法のように猛スピードですり抜けていく一人の教師の姿があった。
「ウイスッッッッッッッッッ!!!!」
「レルゲン教授!?」
「えッ? ウイス先輩の恋人教師!」
ロレンス様の言葉に僕は驚く。なんてヒーローのような登場だろう…カッコイイ。
「__________爆ぜろッッッッ、私のウイスを奪わせはしない!」
「レーちゃんッッッッ」
ウイス先輩の声に僕は安心した。ウイス先輩はどうやらまだ無事だったらしい。
レルゲン先生の声にウイス先輩の目がハートになった気がする。煙で何が起こってるか見えないけど。
そして、凄い爆発音とともに煙の中からドラゴンが羽ばたきそのまま空高く天井を打ち壊し飛び去って行ってしまった。
「…………終わったのか?」
そんな王子様の言葉に皆、警戒しつつそれでも安心したような声がし始めた。
「あの…化け物はッ…、何だったのですか」
生徒たちが震えた声で王子様や預言者様であるヒガシさんにそれぞれ詰め寄ってくる。
先程のことにくわえ秘密の庭のこの惨状だ…皆パニックを起こしているのだ。
「…追って知らせが王国全土に届き渡るはずだ。それまで待て」
「それでは分かりません!その間に、またあのような化け物がこの学園に飛んでくるのではないですか!?」
皆怖いのだ。僕だって怖いし納得できない…。あんなのがまた学園に来たら次は死人が出るかもしれない。むしろ、何故今回は誰も死ななかったのかおかしいくらいだ。
「__________皆さん、落ち着いてください。大丈夫です! もう学園にはドラゴンは来ません!! 僕は預言者です、僕の言葉を信じて下さい」
ヒガシさんの言葉に皆落ち着きを取り戻し始める。
「大丈夫! 僕はこの国をあの脅威から救えますから!」
「…預言者様がそういうなら大丈夫だ」
「あぁ、預言者様の言葉を信じよう」
何だか宗教みたいだ…。でもそうなるよね、皆誰かの言葉にすがりたいのだ。ヒガシさんはほしい言葉を言ってくれる。皆は、それを信じたい。僕もヒガシさんの言葉を信じている。
だって彼は転移者で僕と違って何か特別な力を宿していそうだから。
「ウイス怪我はないですか? ……貴方が無茶をした時、私は心臓が止まりかけましたよ」
「ごめんレーちゃん。だけど怪我はないよ、俺のカッコイイ恋人が助けてくれたからね!!」
ウイス先輩とレルゲン先生が抱き合っていた。
(BLだ! 生だ! ご馳走様です!!)
僕も隣にいるロレンス様の腕に抱きつく。ロレンス様も僕の頭を撫でてくれた。何だか安心してしまい、ロレンス様にそのまま体を預けることにした。
※ドラゴンイメージ
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