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11 ヨーゼフ② 目を逸らした先にあったもの
事実、私がメラニアの肩を持てば持つ程、彼女の機嫌は良くなり、私は穏やかな暮らしを手にすることが出来た。
私はこれに味を締めてしまった。
こうしていつの間にか私は、メラニアの望むままにアイリスを叱りつける様になった。軈てノアが生まれるとそれは更に酷くなる。
メラニアは何かにつけてノアを言い訳にした。
「まだ小さいんですもの。ノアには日当たりの良い部屋を与えてあげたいの。アイリスはもう大きいんだから部屋を移って貰っても良いわよね」
だからと言って、アイリスの部屋を屋敷の一番隅にする必要なんてない。
「アイリスったら部屋をノアに取られたって未だに騒いでいるの。本当に心が狭いのよ。ノアに何かされたら怖いわ。あの子の食事、私達家族とは別に出来ないかしら」
そのせいで多忙な私は、何日もあの子の顔を見ることすらなくなった。
「アイリスの顔を見たらノアが泣くのよ。あの子が怖いんじゃないかしら。アイリスはお留守番で良いわよね」
そのせいで家族の外出にアイリスは何時もいなかった。
共通しているのは、メラニアにとっては何時もアイリスが悪者だった事だ。そして彼女の目的は家族からアイリス一人を孤立させる事だった。
実は私はいつからかメラニアのその意図に気付いていた。
だがメラニアは私がその事で何か口を挟めば、必ず目に涙を浮かべながらまだ幼いノアに言って聞かせるのだ。
「貴方のお父様はお姉様ばかり可愛がって、貴方の事は可愛くないのかしら。でも仕方ないわよね。何と言ってもお姉様は高貴な生まれ。貴方は元は平民の私が産んだ子なんですもの……」と。
私は朝早くから夜遅くまで仕事で屋敷には殆どいない。ノアの側にいるのは常にメラニアなのだ。
幼い頃から母親にそんな事を言って聞かされて育てられる息子は、果たして私にどんな感情を抱くのか……。
そう考えただけで怖くなった。
私は息子をメラニアに人質に取られた様なものだったのだ。
だから私は口を噤んだ。
だがその事により犠牲になるのは何時もアイリスだった。
メラニアの思惑通り、そのせいでアイリスは屋敷の中で更に孤立していった。
彼女だって私の娘だと言うのにだ。
今から考えれば、それがどれだけあの子にとって理不尽な事だったのかがよく分かる。
だがメラニアのその策略は功を奏し、私は、アイリスの姿さえあまり見かける事はなくなった。あの子に会うのはメラニアに言われて彼女を叱り付ける時だけ。
事実、そうしていれば家の中は平穏で、私は何かに煩わされる事はなく、仕事に没頭出来た。
それがアイリスの我慢と犠牲の上に成り立っていたのだと心の奥底では気付いていながら、私にはその穏やかな生活が手放せなくなっていたのだ。
『お願い、お父様! 目を覚まして下さい!!』
私に向かってそう言った時の、アイリスの絶望した目を思い出した私は体が震えた。
いつからだったろう……。彼女が私に何も言わなくなったのは……。
この数年ずっと従順だったアイリスが今日は違った。私に逆らったのだ。
その時、アイリスの異変に気づくべきだった。
あの子はもう、限界だったのだ。
だがそんなアイリスに私は何をした……?
手を振りあげてまで、無理やりあの子を自分に従わせようとした。
アイリスは何も悪い事をしていないと言うのにだ。
私は頭を抱えた。
アイリスはアリアの忘れ形見だ。だからこそあの子がこの家にいる限り、侯爵達は私に何も言っては来なかった。
だが、これからはそうはいかないだろう。
いや寧ろ、あの子が去った事で、私は侯爵家との繋がりを失った。
もう私を支えてくれるものは何処にも無い……。
これからの事を考えると愕然とした。
だが、そんな私の耳にラデッシュの甘えた声が入ってきた。
「ねぇ、お母様。義姉様が出て行ったんですもの。今日義姉様に届いたプレゼントはいつもの様に私が貰ってもいいのよね?」
「ラデッシュ!」
ラデッシュのその言葉を聞いた途端、メラニアが焦って彼女を叱りつけた。
いつもの様に……?
どう言うことだ?
信じられない思いがした。
「お前は何を言っているんだ? あれは侯爵夫妻がアイリスに贈った物だ。アイリスに返さなければいけない事くらい分かるだろう? それが何故お前の物になる?」
私はラデッシュに問いかけた。
すると彼女は不服そうに頬を膨らませる。
「だって何時も貰っていたんだもん」
何時も貰っていただと?
そう言えばあのピンクのネックレスもこの娘が身に着けていた……。
違和感を感じた私は、焦ってアイリスの部屋に入ろうとした。
するとメラニアが私の前に立ちはだかり、必死に止めようとする。
「どけ!」
それだけで分かった。メラニアにとって知られたくない事実がアイリスの部屋にはあるのだと……。
私はメラニアを力任せに押しのけアイリスの部屋に入った。
「……なんだ……これは……」
アイリスの部屋に入った私は唖然とした。
こんなつもりじゃ無かった。
そう思う程、その部屋には何も無かったのだ。
私はこれに味を締めてしまった。
こうしていつの間にか私は、メラニアの望むままにアイリスを叱りつける様になった。軈てノアが生まれるとそれは更に酷くなる。
メラニアは何かにつけてノアを言い訳にした。
「まだ小さいんですもの。ノアには日当たりの良い部屋を与えてあげたいの。アイリスはもう大きいんだから部屋を移って貰っても良いわよね」
だからと言って、アイリスの部屋を屋敷の一番隅にする必要なんてない。
「アイリスったら部屋をノアに取られたって未だに騒いでいるの。本当に心が狭いのよ。ノアに何かされたら怖いわ。あの子の食事、私達家族とは別に出来ないかしら」
そのせいで多忙な私は、何日もあの子の顔を見ることすらなくなった。
「アイリスの顔を見たらノアが泣くのよ。あの子が怖いんじゃないかしら。アイリスはお留守番で良いわよね」
そのせいで家族の外出にアイリスは何時もいなかった。
共通しているのは、メラニアにとっては何時もアイリスが悪者だった事だ。そして彼女の目的は家族からアイリス一人を孤立させる事だった。
実は私はいつからかメラニアのその意図に気付いていた。
だがメラニアは私がその事で何か口を挟めば、必ず目に涙を浮かべながらまだ幼いノアに言って聞かせるのだ。
「貴方のお父様はお姉様ばかり可愛がって、貴方の事は可愛くないのかしら。でも仕方ないわよね。何と言ってもお姉様は高貴な生まれ。貴方は元は平民の私が産んだ子なんですもの……」と。
私は朝早くから夜遅くまで仕事で屋敷には殆どいない。ノアの側にいるのは常にメラニアなのだ。
幼い頃から母親にそんな事を言って聞かされて育てられる息子は、果たして私にどんな感情を抱くのか……。
そう考えただけで怖くなった。
私は息子をメラニアに人質に取られた様なものだったのだ。
だから私は口を噤んだ。
だがその事により犠牲になるのは何時もアイリスだった。
メラニアの思惑通り、そのせいでアイリスは屋敷の中で更に孤立していった。
彼女だって私の娘だと言うのにだ。
今から考えれば、それがどれだけあの子にとって理不尽な事だったのかがよく分かる。
だがメラニアのその策略は功を奏し、私は、アイリスの姿さえあまり見かける事はなくなった。あの子に会うのはメラニアに言われて彼女を叱り付ける時だけ。
事実、そうしていれば家の中は平穏で、私は何かに煩わされる事はなく、仕事に没頭出来た。
それがアイリスの我慢と犠牲の上に成り立っていたのだと心の奥底では気付いていながら、私にはその穏やかな生活が手放せなくなっていたのだ。
『お願い、お父様! 目を覚まして下さい!!』
私に向かってそう言った時の、アイリスの絶望した目を思い出した私は体が震えた。
いつからだったろう……。彼女が私に何も言わなくなったのは……。
この数年ずっと従順だったアイリスが今日は違った。私に逆らったのだ。
その時、アイリスの異変に気づくべきだった。
あの子はもう、限界だったのだ。
だがそんなアイリスに私は何をした……?
手を振りあげてまで、無理やりあの子を自分に従わせようとした。
アイリスは何も悪い事をしていないと言うのにだ。
私は頭を抱えた。
アイリスはアリアの忘れ形見だ。だからこそあの子がこの家にいる限り、侯爵達は私に何も言っては来なかった。
だが、これからはそうはいかないだろう。
いや寧ろ、あの子が去った事で、私は侯爵家との繋がりを失った。
もう私を支えてくれるものは何処にも無い……。
これからの事を考えると愕然とした。
だが、そんな私の耳にラデッシュの甘えた声が入ってきた。
「ねぇ、お母様。義姉様が出て行ったんですもの。今日義姉様に届いたプレゼントはいつもの様に私が貰ってもいいのよね?」
「ラデッシュ!」
ラデッシュのその言葉を聞いた途端、メラニアが焦って彼女を叱りつけた。
いつもの様に……?
どう言うことだ?
信じられない思いがした。
「お前は何を言っているんだ? あれは侯爵夫妻がアイリスに贈った物だ。アイリスに返さなければいけない事くらい分かるだろう? それが何故お前の物になる?」
私はラデッシュに問いかけた。
すると彼女は不服そうに頬を膨らませる。
「だって何時も貰っていたんだもん」
何時も貰っていただと?
そう言えばあのピンクのネックレスもこの娘が身に着けていた……。
違和感を感じた私は、焦ってアイリスの部屋に入ろうとした。
するとメラニアが私の前に立ちはだかり、必死に止めようとする。
「どけ!」
それだけで分かった。メラニアにとって知られたくない事実がアイリスの部屋にはあるのだと……。
私はメラニアを力任せに押しのけアイリスの部屋に入った。
「……なんだ……これは……」
アイリスの部屋に入った私は唖然とした。
こんなつもりじゃ無かった。
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4/1「エステルに対する殺意」の内容を一部変更しました。