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第三十九話
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「へぇ……与一は巴を庇うんだね。
僕がそんな嘘に騙されると思うのかい?
与一にここまで言わせるなんて僕は君を絶対に許さないよ、巴。
僕は絶対に与一を君なんかに渡さない。
君は大人のキスを与一として、僕より優位に立ったと思ってるだろう。
でも僕だってもう何度も与一とはそんな事してるんだ。
僕との時は、与一はもっとえっちな事するんだよ。
周りに誰も居ないと与一は僕のスカートの中に手を入れて来るんだ。
もちろん僕はそれでも与一を拒んだことは一度だってしないよ」
僕の危惧ははからずも当たってしまった様だ。板額はそう言って挑発するかのように笑った。まさに悪魔の笑みだ。ちなみに板額の言っている事に嘘はない。嘘はないがこれでは、緑川からすれば実際に僕が板額にしてる以上の事を想像するに決まってる。賢い板額の事だ、当然、そこまで分かって言ってるに違いない。板額がそこまで言うという事はやはり板額の怒りはもう爆発する寸前なのだ。いや実際にはもう優に沸点を越えてるのかもしれない。
こうなっては僕が何を言っても板額の怒りを同調する事はあっても鎮める事は不可能に思えた。緑川はその二つ名が示す通り頭が良い。頭に血が上っていても、きっとこの事態がかなり危険な水準になっている事くらい理解しているはずだ。僕は緑川の理性に一縷の望みを掛けるしかなくなった。
「お願いよ、板額!
与一を私から奪わないで!
あなたなら分かってるんでしょ、私がどれだけ与一を好きかって事。
私はあなたが与一を知る、もっとずっとずっと前から傍に居るの。
お父様と喧嘩してでも、与一と同じこの高校を選んだほどなの。
あなたがしろと言うなら、ここで土下座でも何でもする。
あなたの足元にすがりついて靴を舐めても良い。
あなたの気が済まで何度でも殴られても構わない。
だから、だからお願いよ、板額。
与一を、私に与一を返して!」
僕はあの緑川ならここで冷静に話し合いを始めると思った。でも緑川は僕の予想とはまったく違う行動に出た。緑川はその瞳から涙をぼろぼろ流しながら地面に跪き、今にも掴みかかろうとしている板額の腰に縋りついてそう懇願したのだ。
僕は緑川がすごく負けず嫌いのを良く知っている。緑川が入学以来、ずっと校内テストで学年一位の順位をキープしている理由もそれだからだ。緑川の事を表面上でしか理解してない奴は、彼女の事をさらりとあの成績が取れている様に思っている。成績以外でも、そうだ。スポーツでもちょっとした趣味の世界でも何でも緑川はさらりとそつなくこなしてしまう、皆、緑川はそう言う天才なんだと信じている。でも、本当は違うのだ。緑川は周りの信頼に答える為、そして自分自身を甘やかさない為、人一倍努力している。そしてその努力を他人に決して見せないし、悟られない様にしている。それが緑川にとっての美学なのだ。緑川と言う人間は昔からそう言う人間なのだ。
その緑川が今、まさに板額に対して負けを認めている。まるで冷酷な女王に対して命乞いをするかのように無様に哀願してる。これは僕の知る緑川なら絶対にするべき事じゃない。
「与一、これが巴の本心だよ。
君はこれほど巴に愛されてたんだ。
これほど君を愛する人が傍に居て君は気がつかなかったのかい?」
ところが板額はそんな巴に何か言うのでなく、事態の急展開に驚き呆けていた僕を見て真顔でそう尋ねた。
確かに板額の言う通りだった。僕は緑川を今日この時まで異性として意識していなかった。確かに、緑川がモテる事は良く知っていた。でも何故か緑川を異性として見ていなかった自分に、板額の言葉で改めて気がつかされた。
板額にそう言われて僕は改めて、板額の目の前で跪きその腰に縋りついてすすり泣く緑川を見た。僕の胸にとても切ない想いがこみ上げて来た。そこに居るのは、一人で居たい僕にちょっかいを掛けるうざったい中学からの腐れ縁のクラスメイトではなかった。愛する男を取り戻す為、自らのプライドをかなぐり捨てて、その愛する男を奪い去った憎い女に哀願する可愛くて可哀そうな女の子だった。
僕はすごく緑川が愛おしくなった。
そしてここで緑川を救い、恩返しをしたくなった。
僕がそんな嘘に騙されると思うのかい?
与一にここまで言わせるなんて僕は君を絶対に許さないよ、巴。
僕は絶対に与一を君なんかに渡さない。
君は大人のキスを与一として、僕より優位に立ったと思ってるだろう。
でも僕だってもう何度も与一とはそんな事してるんだ。
僕との時は、与一はもっとえっちな事するんだよ。
周りに誰も居ないと与一は僕のスカートの中に手を入れて来るんだ。
もちろん僕はそれでも与一を拒んだことは一度だってしないよ」
僕の危惧ははからずも当たってしまった様だ。板額はそう言って挑発するかのように笑った。まさに悪魔の笑みだ。ちなみに板額の言っている事に嘘はない。嘘はないがこれでは、緑川からすれば実際に僕が板額にしてる以上の事を想像するに決まってる。賢い板額の事だ、当然、そこまで分かって言ってるに違いない。板額がそこまで言うという事はやはり板額の怒りはもう爆発する寸前なのだ。いや実際にはもう優に沸点を越えてるのかもしれない。
こうなっては僕が何を言っても板額の怒りを同調する事はあっても鎮める事は不可能に思えた。緑川はその二つ名が示す通り頭が良い。頭に血が上っていても、きっとこの事態がかなり危険な水準になっている事くらい理解しているはずだ。僕は緑川の理性に一縷の望みを掛けるしかなくなった。
「お願いよ、板額!
与一を私から奪わないで!
あなたなら分かってるんでしょ、私がどれだけ与一を好きかって事。
私はあなたが与一を知る、もっとずっとずっと前から傍に居るの。
お父様と喧嘩してでも、与一と同じこの高校を選んだほどなの。
あなたがしろと言うなら、ここで土下座でも何でもする。
あなたの足元にすがりついて靴を舐めても良い。
あなたの気が済まで何度でも殴られても構わない。
だから、だからお願いよ、板額。
与一を、私に与一を返して!」
僕はあの緑川ならここで冷静に話し合いを始めると思った。でも緑川は僕の予想とはまったく違う行動に出た。緑川はその瞳から涙をぼろぼろ流しながら地面に跪き、今にも掴みかかろうとしている板額の腰に縋りついてそう懇願したのだ。
僕は緑川がすごく負けず嫌いのを良く知っている。緑川が入学以来、ずっと校内テストで学年一位の順位をキープしている理由もそれだからだ。緑川の事を表面上でしか理解してない奴は、彼女の事をさらりとあの成績が取れている様に思っている。成績以外でも、そうだ。スポーツでもちょっとした趣味の世界でも何でも緑川はさらりとそつなくこなしてしまう、皆、緑川はそう言う天才なんだと信じている。でも、本当は違うのだ。緑川は周りの信頼に答える為、そして自分自身を甘やかさない為、人一倍努力している。そしてその努力を他人に決して見せないし、悟られない様にしている。それが緑川にとっての美学なのだ。緑川と言う人間は昔からそう言う人間なのだ。
その緑川が今、まさに板額に対して負けを認めている。まるで冷酷な女王に対して命乞いをするかのように無様に哀願してる。これは僕の知る緑川なら絶対にするべき事じゃない。
「与一、これが巴の本心だよ。
君はこれほど巴に愛されてたんだ。
これほど君を愛する人が傍に居て君は気がつかなかったのかい?」
ところが板額はそんな巴に何か言うのでなく、事態の急展開に驚き呆けていた僕を見て真顔でそう尋ねた。
確かに板額の言う通りだった。僕は緑川を今日この時まで異性として意識していなかった。確かに、緑川がモテる事は良く知っていた。でも何故か緑川を異性として見ていなかった自分に、板額の言葉で改めて気がつかされた。
板額にそう言われて僕は改めて、板額の目の前で跪きその腰に縋りついてすすり泣く緑川を見た。僕の胸にとても切ない想いがこみ上げて来た。そこに居るのは、一人で居たい僕にちょっかいを掛けるうざったい中学からの腐れ縁のクラスメイトではなかった。愛する男を取り戻す為、自らのプライドをかなぐり捨てて、その愛する男を奪い去った憎い女に哀願する可愛くて可哀そうな女の子だった。
僕はすごく緑川が愛おしくなった。
そしてここで緑川を救い、恩返しをしたくなった。
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