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第九十六話
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「落ち着きたまえ、平泉君。
ちょっと刺激的な画像を送ったから、君も気が気じゃないのは分かる。
でも大丈夫だよ、緑川君はまだ無事だ。
君が心配するようなことまではされてないよ」
LEDランタンに照らし出された男の声が答えた。
緑川が無事と聞いて、思わず僕は気が抜けその場にへたり込みそうになった。でも、ここでへたり込んで相手に弱みを見せるわけにはゆかない。僕は必死に自分の姿勢を維持しようと努めた。
そして、僕は意を決して、声のする方、つまりLEDランタンに照らし出された方向へ足を進めた。
やがてLEDランタンの無機質な白い光で照らし出される椅子に座る男の姿がはっきりと見えて来た。それはまるでスポットライト浴びた舞台の主役の様だった。
その男の顔を見た瞬間、僕は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
「望月先輩?!」
そう、そこに居たのは間違いなく望月先輩だった。彼は葵高では『超』の付く有名人だ。いくら周りの事には興味を持たない僕でも見間違えるわけがない。
しかも、板額が転校して早々、彼女に公開告白した相手だ。その結果、僕は板額の彼氏であると全校生徒中に公表される形になった。居るか居ないか分からないボッチの僕が一躍有名人になる切っ掛けを作った張本人が望月先輩なのだ。僕があの顔を忘れるわけがない。
「覚えていてくれて光栄だよ、平泉君。
烏丸君と言う美少女だけでなく、
こんな素敵な緑川君まで彼女にしてる君に、
僕の様な取るに足らない男を覚えていてもらえたなんてね」
うそだ、彼の言っていることは全部嘘だ。
たしかに言葉は穏やかで優しい。でもその言葉の裏に、僕は、鋭いナイフの様に研ぎ澄まされた殺気を感じていた。
「なんであなたが……」
僕は思わずそう口にした。
「まあ、こんな僕にもプライドって物があるんでね。
そのプライドを傷つけた者には代償は払ってもらわないと気が済まないんだ」
僕の言葉に、一瞬で望月先輩の雰囲気が変わった。
今度は包み隠すこともなく、その言葉も、表情も、纏う雰囲気も、さっき僕が感じ取った感覚と同じに変わった。
この人は危険だ。
僕はそう直感した。
この人は、板額に公衆の面前で恥をかかされた事を逆恨みし、その復讐をしようとしている。
そうか、その為に、僕が一番知られたくないあの過去を噂として流したのだ、と僕はすぐに気が付いた。
でもそんな事の為に、こんな犯罪行為を成績優秀で頭が良い事でも有名な望月先輩がするなんて、と僕はその一方でまだ納得できないでいた。
まさか! その瞬間、僕の脳裏に最悪の結末が浮かんだ。
自身のプライドを傷つけた僕を、良からぬ噂を流し孤立させ精神的に追い詰める。そして、それでも気が収まらない彼は、さらには僕の彼女であるされている緑川を拉致して、それを餌に僕を呼び出した。そういう、卑劣で狡猾な人間なら次にする事は決まっている。
望月先輩は、僕の目の前で緑川をあの男たち、いや真っ先に自分自身でおもちゃにするつもりだ。そうして僕の心をずたずたにするつもりなのだ。しかも、頭の切れる望月先輩の事、それを動画に撮って僕と緑川の口も塞いでしまおうと考えているに違いない。
いや、それだけじゃない。
その動画を使って僕だけじゃなく緑川をもこれから先ずっと自身の支配下に置くつもりだ。僕は小間使いにされ、物やお金を一生せびられる。そして、緑川はもっと悲惨だ。望月先輩のおもちゃにされ、そして彼が飽きれば、間違いなく、あの一階に居た連中にも投げ与えられる。
僕はどうなっても良い。そうだ。僕はもう人生破滅させられてもしかなたい人間なのだ。これはきっと『白瀬京子の怨霊』がさせた事なんだ。それなら僕はそれを甘んじて受け入れる。
でも、緑川はダメだ。あの真面目で正義感が強く、でも本当は優しくて可愛い性格の緑川が、あんな卑劣な連中にその人生を滅茶苦茶にされるなんて、それだけは耐えられない。いや、何があってそれだけは阻止しなければ、と僕は思った。
『そんなに巴を助けたい?』
その時だった。僕は背中にあの不気味で粘り着く様な冷気を感じた。そして、その囁き声と共に何もかもを凍らせてしまいそうな程冷たい吐息が僕の耳に掛かった。
ちょっと刺激的な画像を送ったから、君も気が気じゃないのは分かる。
でも大丈夫だよ、緑川君はまだ無事だ。
君が心配するようなことまではされてないよ」
LEDランタンに照らし出された男の声が答えた。
緑川が無事と聞いて、思わず僕は気が抜けその場にへたり込みそうになった。でも、ここでへたり込んで相手に弱みを見せるわけにはゆかない。僕は必死に自分の姿勢を維持しようと努めた。
そして、僕は意を決して、声のする方、つまりLEDランタンに照らし出された方向へ足を進めた。
やがてLEDランタンの無機質な白い光で照らし出される椅子に座る男の姿がはっきりと見えて来た。それはまるでスポットライト浴びた舞台の主役の様だった。
その男の顔を見た瞬間、僕は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
「望月先輩?!」
そう、そこに居たのは間違いなく望月先輩だった。彼は葵高では『超』の付く有名人だ。いくら周りの事には興味を持たない僕でも見間違えるわけがない。
しかも、板額が転校して早々、彼女に公開告白した相手だ。その結果、僕は板額の彼氏であると全校生徒中に公表される形になった。居るか居ないか分からないボッチの僕が一躍有名人になる切っ掛けを作った張本人が望月先輩なのだ。僕があの顔を忘れるわけがない。
「覚えていてくれて光栄だよ、平泉君。
烏丸君と言う美少女だけでなく、
こんな素敵な緑川君まで彼女にしてる君に、
僕の様な取るに足らない男を覚えていてもらえたなんてね」
うそだ、彼の言っていることは全部嘘だ。
たしかに言葉は穏やかで優しい。でもその言葉の裏に、僕は、鋭いナイフの様に研ぎ澄まされた殺気を感じていた。
「なんであなたが……」
僕は思わずそう口にした。
「まあ、こんな僕にもプライドって物があるんでね。
そのプライドを傷つけた者には代償は払ってもらわないと気が済まないんだ」
僕の言葉に、一瞬で望月先輩の雰囲気が変わった。
今度は包み隠すこともなく、その言葉も、表情も、纏う雰囲気も、さっき僕が感じ取った感覚と同じに変わった。
この人は危険だ。
僕はそう直感した。
この人は、板額に公衆の面前で恥をかかされた事を逆恨みし、その復讐をしようとしている。
そうか、その為に、僕が一番知られたくないあの過去を噂として流したのだ、と僕はすぐに気が付いた。
でもそんな事の為に、こんな犯罪行為を成績優秀で頭が良い事でも有名な望月先輩がするなんて、と僕はその一方でまだ納得できないでいた。
まさか! その瞬間、僕の脳裏に最悪の結末が浮かんだ。
自身のプライドを傷つけた僕を、良からぬ噂を流し孤立させ精神的に追い詰める。そして、それでも気が収まらない彼は、さらには僕の彼女であるされている緑川を拉致して、それを餌に僕を呼び出した。そういう、卑劣で狡猾な人間なら次にする事は決まっている。
望月先輩は、僕の目の前で緑川をあの男たち、いや真っ先に自分自身でおもちゃにするつもりだ。そうして僕の心をずたずたにするつもりなのだ。しかも、頭の切れる望月先輩の事、それを動画に撮って僕と緑川の口も塞いでしまおうと考えているに違いない。
いや、それだけじゃない。
その動画を使って僕だけじゃなく緑川をもこれから先ずっと自身の支配下に置くつもりだ。僕は小間使いにされ、物やお金を一生せびられる。そして、緑川はもっと悲惨だ。望月先輩のおもちゃにされ、そして彼が飽きれば、間違いなく、あの一階に居た連中にも投げ与えられる。
僕はどうなっても良い。そうだ。僕はもう人生破滅させられてもしかなたい人間なのだ。これはきっと『白瀬京子の怨霊』がさせた事なんだ。それなら僕はそれを甘んじて受け入れる。
でも、緑川はダメだ。あの真面目で正義感が強く、でも本当は優しくて可愛い性格の緑川が、あんな卑劣な連中にその人生を滅茶苦茶にされるなんて、それだけは耐えられない。いや、何があってそれだけは阻止しなければ、と僕は思った。
『そんなに巴を助けたい?』
その時だった。僕は背中にあの不気味で粘り着く様な冷気を感じた。そして、その囁き声と共に何もかもを凍らせてしまいそうな程冷たい吐息が僕の耳に掛かった。
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