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遡って一年前
遡って一年前編5
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多い。多過ぎる。はっきり言って、食べきる自信がない。
「煮付けは食べてみたね?」
おじさんは、特盛りのご飯を何事も無いように食べながら、私にたずねる。
「いいえ。まだですけど、この魚は、ガヤですか?」
「ん?ガヤ??……ああ。確か、エゾメバルの事ばガヤって北海道の方では言うんやったけね。エゾメバルじゃなかよ。黒メバル。確か、カサゴの事もガヤって北海道の方では言うんやっけ?」
「いえ。私には分かりません。……すみません。」
「いやいや。よかよか。でも、アヤカちゃんが北海道の人やって事は俺には分かったばい。それに、この味噌汁のが、カサゴ。こっちじゃ、ガラカブとかアラカブって言うったい。見た目は悪かばってん、味は一級品ばい。ささ、両方、早よ食べんね。」
おじさんに即され、私は煮付けに手をつける。
はぅ~。甘めに煮つけてあるメバル。……美味しい。臭み消しに入れてあるのかな?刻んだショウガが見える。それに、この豆腐。木綿豆腐じゃなくて、絹豆腐。なんで、匙が置いてあるのかわからなかったけど、箸で取りにくい時の為だったのね……。ツルンとして柔らかく、口に入れたら溶けそう……。はぁ、わは幸せの絶頂に居るのかもしれない……。
「こんメバルはね。俺が昨日から釣りに行って釣って来たとよ。もちろん、下処理に熱湯ば掛けて臭みも……。」
…………。
……。
…。
もはや、おじさんの言葉は私には届いていなかった。遠く、遠く、箸が食器の触れる音より遠かった。
それにしても、このガラカブとやらの味噌汁も出汁が凄く出ていて美味しいし……。見た目の悪いお魚は美味しいとよく言ったものだ。味噌汁ではなかったら、どんな味がするのだろう?他の料理でも食べてみたい。そう思わせるには十分な美味しさだ。
私は一心不乱に食べる。意識は全て食べる事に集中する。
食べれないと思っていた、山盛りのご飯もみるみる減っていく。そして、見事に完食した。
「ごちそうさまでした。」
「おそまつさまでした。」
私の言葉におじさんは、そう返して続けた。
「それじゃあ……そうね。アヤカちゃん、明日の夕方6時にお店へ来れるね?」
「へ?」
私はおじさんの言葉にすっとんきょうに返す。
「ん?明日からバイトに来てくれるとやろ?さっき、俺が確認したら、はい!はい!って答えよったよ??」
え?ええ!?私、そんな返事してたの?!
おじさんはニコニコと微笑み、キラキラと期待に満ちた瞳で私を見つめてくる。
ぐぬ。これはもう、どうしようもない状況??はらをくくるしかないの??仕方ない。
「分かりました。その時間からなら大丈夫です。よろしくお願いします。」
私はおじさんに頭を下げて言う。何か凄い流れでアルバイトが決まってしまった。
「やった!ありがとね。あ、あと、さっきも言ったばってん、良かったら友達も声掛けしてはいよ。」
……そんな事にも、返事していたのか……。我ながら、ちょっとおかしいのかもしれない。
……ユウちゃんに連絡してみよう。丁度、ユウちゃんもアルバイト探している。って言っていたし。
「分かりました。友達の事は期待せずにお願いします。」
私はお礼を言い、お店を後にした。
「煮付けは食べてみたね?」
おじさんは、特盛りのご飯を何事も無いように食べながら、私にたずねる。
「いいえ。まだですけど、この魚は、ガヤですか?」
「ん?ガヤ??……ああ。確か、エゾメバルの事ばガヤって北海道の方では言うんやったけね。エゾメバルじゃなかよ。黒メバル。確か、カサゴの事もガヤって北海道の方では言うんやっけ?」
「いえ。私には分かりません。……すみません。」
「いやいや。よかよか。でも、アヤカちゃんが北海道の人やって事は俺には分かったばい。それに、この味噌汁のが、カサゴ。こっちじゃ、ガラカブとかアラカブって言うったい。見た目は悪かばってん、味は一級品ばい。ささ、両方、早よ食べんね。」
おじさんに即され、私は煮付けに手をつける。
はぅ~。甘めに煮つけてあるメバル。……美味しい。臭み消しに入れてあるのかな?刻んだショウガが見える。それに、この豆腐。木綿豆腐じゃなくて、絹豆腐。なんで、匙が置いてあるのかわからなかったけど、箸で取りにくい時の為だったのね……。ツルンとして柔らかく、口に入れたら溶けそう……。はぁ、わは幸せの絶頂に居るのかもしれない……。
「こんメバルはね。俺が昨日から釣りに行って釣って来たとよ。もちろん、下処理に熱湯ば掛けて臭みも……。」
…………。
……。
…。
もはや、おじさんの言葉は私には届いていなかった。遠く、遠く、箸が食器の触れる音より遠かった。
それにしても、このガラカブとやらの味噌汁も出汁が凄く出ていて美味しいし……。見た目の悪いお魚は美味しいとよく言ったものだ。味噌汁ではなかったら、どんな味がするのだろう?他の料理でも食べてみたい。そう思わせるには十分な美味しさだ。
私は一心不乱に食べる。意識は全て食べる事に集中する。
食べれないと思っていた、山盛りのご飯もみるみる減っていく。そして、見事に完食した。
「ごちそうさまでした。」
「おそまつさまでした。」
私の言葉におじさんは、そう返して続けた。
「それじゃあ……そうね。アヤカちゃん、明日の夕方6時にお店へ来れるね?」
「へ?」
私はおじさんの言葉にすっとんきょうに返す。
「ん?明日からバイトに来てくれるとやろ?さっき、俺が確認したら、はい!はい!って答えよったよ??」
え?ええ!?私、そんな返事してたの?!
おじさんはニコニコと微笑み、キラキラと期待に満ちた瞳で私を見つめてくる。
ぐぬ。これはもう、どうしようもない状況??はらをくくるしかないの??仕方ない。
「分かりました。その時間からなら大丈夫です。よろしくお願いします。」
私はおじさんに頭を下げて言う。何か凄い流れでアルバイトが決まってしまった。
「やった!ありがとね。あ、あと、さっきも言ったばってん、良かったら友達も声掛けしてはいよ。」
……そんな事にも、返事していたのか……。我ながら、ちょっとおかしいのかもしれない。
……ユウちゃんに連絡してみよう。丁度、ユウちゃんもアルバイト探している。って言っていたし。
「分かりました。友達の事は期待せずにお願いします。」
私はお礼を言い、お店を後にした。
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