釣り人居酒屋『魚んちゅ~』

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やっぱり夏は夜釣りがいいよね?

やっぱり夏は夜釣りがいいよね?2

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 「ア~ヤ~カちゃん♪♪」
 フーコさんは日頃とは違う呼び方で私を呼ぶ。その声はどこか楽しそうで、どこか不気味だった。
 「ドウカイタシタノデスカ?フーコさん??」
 私は不気味だと思っていることを悟られないように、至って普通に返事をした。
 「明日の夜は、お暇~ぁ??」
 やはり、不気味だ。自分の両手を胸の前で祈るように重ね、目をパチクリさせ、可愛げのある女の子を演出しながら、フーコさんは声色まで変えて言う。
 正直に言うなら……アイスを食べながら、クーラーの効いた部屋で過ごす。至福の時間を堪能する。私にはそれ以外、何の予定もないけれど……。ここは正直に答えるべきか……。
 「フーコさん。アヤカちゃんは、明日、DVDや動画を見て過ごすって言ってましたよ。」
 ユウちゃんは魚んちゅ~の裏口から出てきた途端、そう、フーコさんに言う。
 お……おぉ………。
 ユウちゃん。それはワザとかね?確かに学校でそう言ったけれども……。私の至福の時間を……。
 それを聞いて、フーコさんは変わらずにニコニコともう一度、同じ言葉を言った。
 「明日の夜は、お暇~ぁ??」
 もう、言い逃れは出来ない。
 「はい。お暇です。」
 私は素直にそう答えた。
 「なら、明日の夜。釣りに行きましょう。」
 え?釣り??夜に??
 「え?夜にですか??」
 夜に釣りって……灯りを照らして船の上でイカでも狙うのだろうか??
 「そうだよ。夜釣りってやつ。」
 フーコさんは何時もの喋り方に戻っていた。
 「船に乗るんですか?」
 「いや?今回は堤防だよ。」
 堤防?何を釣るのだろうか??
 「何を釣るんです?」
 「タコだよ。マダコ。」   
 え?タコって、堤防で釣れるの??
 「え?タコって堤防で釣れるんですか?」
 「ああ。釣れるよ。居れば意外と簡単に。」
 そ、そうなのか……。
 「釣って、日曜日にたこパしようよ~。たこパ」
 タコパ?
 「タコパ?」
 「ああ。たこ焼きパーティーよ。釣ったタコ使って作るたこ焼きは最高だよ。」
 あ、たこ焼きパーティの事か……。それは美味しいかもしれない。でも、たこ焼きなんて作れるのだろうか??まあ、フーコさんの事だから、どうにかしてくれるのかもしれない……。クーラー様のご活躍なさる中、アツアツのたこ焼きを頬張るのもいいかもしれない……。アイスはその時に食べればいいし……。
 食欲がDVDや動画を上回った。
 「分かりました。行きます。でも、私と二人ですか?」
 「いや?もちろん、ユウも一緒だよ。」
 あれ?ユウちゃんは何か予定があるとか言ってなかったっけ??……まあ、いいか。
 「分かりました。」
 「なら、夕方の五時くらいには迎えに来るから。あ、そうそう。アヤカ。あんた、さっき私の事、警戒したろ?」
 え?なぜ、バレた??
 私の顔を見て確信に変わったのか、フーコさんは続ける。
 「どうかいたしたのですか?じゃないよ。まったく。言い方も片言っぽくなってたし。」
 そ、そうなのか。それは気をつけないとだな……。
 こうやって、私は土曜日の夜に夜釣りに行くことになった。
 

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