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キス釣り編
キス釣り編18
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「あれは、六年前の雨の日…。」
奈緒さんは少し遠い目をする。
あれ?本当は聞いてもらいたかったパターン??
ちびりと酎ハイに口をつけて、奈緒さんは続きを語りだす。
「私は、当時、大学を卒業して入った職場を辞め、実家に戻って、居酒屋でバイトを始めたの。やりたい事もなかったから、好きだった料理に少しでも関わってみたくてね。」
僕とヨシさんは、うんうんと頷く。
「そこに、パパがお店へやってきたの。まだ、当時は髪の毛もあったけど、凄く愛嬌のある人だとしか思わなかったわ。最初はただのお客さんだとしか思ってなかったし。」
またも、僕とヨシさんはうんうんと頷く。
「元々、パパはその居酒屋さんの常連だったから少しは話した事があったんだけど、その程度の関係だったの。でも、六年前のある雨の日。まあ、正確に言えば途中から雨が降ったのよね。丁度、私が休みの日にね。長年、飼っていた猫の『クロ』が車に跳ねられて亡くなっちゃったの。その時、何かの知らせか、壁に紐で掛けていたぬいぐるみの紐が突然切れて落ちたのよ。」
またまた、僕とヨシさんは、うんうんと頷く
「私はね、クロの身に何か起こったんだわ!って、一瞬で理解して家を走って出たの。その日は、朝から曇りで、天気予報で昼から大荒れの天気になるって言っていたのに、傘も持たずに……。クロは元々、あまりお外が好きなタイプの猫ではなかったのよね。だから、バイト先とかからの家までの途中にクロに会った事はなかったの。だから、私はどこにクロが居るか検討もつかず必死に探したの。猫が行きそうな場所を……。」
またまたまた、僕とヨシさんは、うんうんと頷く。
「そして、見つけたのクロを……。実家より少し離れた、車通りの多い道の端で。まだ、少しあたたかかった。本当に跳ねられたの?っていうくらいに綺麗な身体だったけど、口からは血を流して、ピクリと動かなかった。」
僕とヨシさんは、何も言えなくなった。
「私は、その場で泣き崩れちゃってね。それと同時に雨がポツリポツリと降り出して、降り出したかと思ったら直ぐに凄い豪雨になったの。車の視界も悪かったと思うわ。現に、車は私に気付きはするけど、凄い水しぶきを浴びせていたもの。私もクロもべちょべちょ。私も跳ねられてもおかしくない状態だったと思うわ。でも、クロを撫でるだけで私は動けなかったの。」
僕とヨシさんは無言で頷く。
「その時に、パパが偶然通り掛かって、動けなくなった私達を乗せて、家まで送り届けてくれたの。濡れた私だけじゃなくて、クロも綺麗にタオルで拭いてくれてね。でも、それだけじゃなくて、家に帰ってドライヤーまでかけてくれたの。『天国に行ってまで風邪引いちゃかわいそうだ』って、私は泣くだけしかできなかったのに。その日は家に誰も居なかったから、両親が帰って来るまで一緒に居てくれて、別に優しい言葉を掛けてくれたわけではないけど、とても嬉しくて、安心出来たんだ。そこからは、私の猛アタックよ。うちのお父さんとの方が年も近かったけどね。そんなの関係ないと思って。」
僕は「島田社長、凄いですね。」と口に出していた。
「それでね。結婚した後に聞いた話なんだけど、あの日、あの視界が悪い中、パパは私だって分かったんだって。うずくまっていた私とその周りが光って見えて、あっ、奈緒ちゃんだって。」
奈緒さんは嬉しそうに言いい、続ける。
「あっ、そうそう。私はパパの全てを愛せるワケじゃないわよ。頭はハゲちゃったし、お腹はたっぷんたっぷんになったし、直ぐ家族置いて釣りに行くし!ルックスなら、ヒロくんの方がタイプだわ。」
照れ隠しだろう。でも、この後に言った奈緒さんの言葉が僕の胸に響いた。
「それでも、私はパパの事を愛してる。愛しぬけるポイントが一つあるの。パパがどんなルックスになっても、それは変わらないと思ってるから。私には一つだけで良いの、ずっとパパを愛し続けれるポイントが一つあるから。」
流石のヨシさんもそのポイントについては聞かなかった。いや、聞かないでも分かっているのだろう。僕にすらも分かっているのだから。
島田社長は照れくさそうに、焼酎を一気に飲み、氷ば入れなんと言いながら席を立った。
そして、席に戻った島田社長はびっくりしていた。
「瀬高!お前、なんば泣きよっとか!?」
えっ!?僕は全然気が付かなかったが、どうやら、涙が流れていたらしい。奈緒さんの言葉に感動して。
それを見た、奈緒さんもなぜか泣きはじめていた。
しかも、ヨシさんまで……。
「も、もう一度、が、がんば~い!」
ヨシさんは涙声で音頭をとり、グラスを出して、みんなで、乾杯した。
こうやって、その日の夜は遅くまで宴は続いた。
僕は、島田社長夫婦みたいな家庭を作りたいと思った。
まあ、まだ彼女もいないけど……。
奈緒さんは少し遠い目をする。
あれ?本当は聞いてもらいたかったパターン??
ちびりと酎ハイに口をつけて、奈緒さんは続きを語りだす。
「私は、当時、大学を卒業して入った職場を辞め、実家に戻って、居酒屋でバイトを始めたの。やりたい事もなかったから、好きだった料理に少しでも関わってみたくてね。」
僕とヨシさんは、うんうんと頷く。
「そこに、パパがお店へやってきたの。まだ、当時は髪の毛もあったけど、凄く愛嬌のある人だとしか思わなかったわ。最初はただのお客さんだとしか思ってなかったし。」
またも、僕とヨシさんはうんうんと頷く。
「元々、パパはその居酒屋さんの常連だったから少しは話した事があったんだけど、その程度の関係だったの。でも、六年前のある雨の日。まあ、正確に言えば途中から雨が降ったのよね。丁度、私が休みの日にね。長年、飼っていた猫の『クロ』が車に跳ねられて亡くなっちゃったの。その時、何かの知らせか、壁に紐で掛けていたぬいぐるみの紐が突然切れて落ちたのよ。」
またまた、僕とヨシさんは、うんうんと頷く
「私はね、クロの身に何か起こったんだわ!って、一瞬で理解して家を走って出たの。その日は、朝から曇りで、天気予報で昼から大荒れの天気になるって言っていたのに、傘も持たずに……。クロは元々、あまりお外が好きなタイプの猫ではなかったのよね。だから、バイト先とかからの家までの途中にクロに会った事はなかったの。だから、私はどこにクロが居るか検討もつかず必死に探したの。猫が行きそうな場所を……。」
またまたまた、僕とヨシさんは、うんうんと頷く。
「そして、見つけたのクロを……。実家より少し離れた、車通りの多い道の端で。まだ、少しあたたかかった。本当に跳ねられたの?っていうくらいに綺麗な身体だったけど、口からは血を流して、ピクリと動かなかった。」
僕とヨシさんは、何も言えなくなった。
「私は、その場で泣き崩れちゃってね。それと同時に雨がポツリポツリと降り出して、降り出したかと思ったら直ぐに凄い豪雨になったの。車の視界も悪かったと思うわ。現に、車は私に気付きはするけど、凄い水しぶきを浴びせていたもの。私もクロもべちょべちょ。私も跳ねられてもおかしくない状態だったと思うわ。でも、クロを撫でるだけで私は動けなかったの。」
僕とヨシさんは無言で頷く。
「その時に、パパが偶然通り掛かって、動けなくなった私達を乗せて、家まで送り届けてくれたの。濡れた私だけじゃなくて、クロも綺麗にタオルで拭いてくれてね。でも、それだけじゃなくて、家に帰ってドライヤーまでかけてくれたの。『天国に行ってまで風邪引いちゃかわいそうだ』って、私は泣くだけしかできなかったのに。その日は家に誰も居なかったから、両親が帰って来るまで一緒に居てくれて、別に優しい言葉を掛けてくれたわけではないけど、とても嬉しくて、安心出来たんだ。そこからは、私の猛アタックよ。うちのお父さんとの方が年も近かったけどね。そんなの関係ないと思って。」
僕は「島田社長、凄いですね。」と口に出していた。
「それでね。結婚した後に聞いた話なんだけど、あの日、あの視界が悪い中、パパは私だって分かったんだって。うずくまっていた私とその周りが光って見えて、あっ、奈緒ちゃんだって。」
奈緒さんは嬉しそうに言いい、続ける。
「あっ、そうそう。私はパパの全てを愛せるワケじゃないわよ。頭はハゲちゃったし、お腹はたっぷんたっぷんになったし、直ぐ家族置いて釣りに行くし!ルックスなら、ヒロくんの方がタイプだわ。」
照れ隠しだろう。でも、この後に言った奈緒さんの言葉が僕の胸に響いた。
「それでも、私はパパの事を愛してる。愛しぬけるポイントが一つあるの。パパがどんなルックスになっても、それは変わらないと思ってるから。私には一つだけで良いの、ずっとパパを愛し続けれるポイントが一つあるから。」
流石のヨシさんもそのポイントについては聞かなかった。いや、聞かないでも分かっているのだろう。僕にすらも分かっているのだから。
島田社長は照れくさそうに、焼酎を一気に飲み、氷ば入れなんと言いながら席を立った。
そして、席に戻った島田社長はびっくりしていた。
「瀬高!お前、なんば泣きよっとか!?」
えっ!?僕は全然気が付かなかったが、どうやら、涙が流れていたらしい。奈緒さんの言葉に感動して。
それを見た、奈緒さんもなぜか泣きはじめていた。
しかも、ヨシさんまで……。
「も、もう一度、が、がんば~い!」
ヨシさんは涙声で音頭をとり、グラスを出して、みんなで、乾杯した。
こうやって、その日の夜は遅くまで宴は続いた。
僕は、島田社長夫婦みたいな家庭を作りたいと思った。
まあ、まだ彼女もいないけど……。
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