釣りはじめました

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アジング編

アジング編10

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 もう、流石に行きなれた感が出てきた山下釣具。結局、この前の仕掛けもほとんど減る事もなく釣りが出来たので、気になるワームを二つと何時ものように氷を買って店を出た。
 そして、ここ最近お世話になっている漁港に着いた。
 来る途中、コンビニの旗なんかが風で結構揺れていたから心配したけど、問題無さそうだった。
 ヨシさんから前回と同じアジングタックルを借りて、いざ、釣り開始!
 相変わらず、外灯周りの船だまりは魚がパチャパチャと餌を捕食していた。
 もちろん、狙わない手はない。
 ただ巻きで表層を狙うと……。ほら、きた!!
 ジー!!とドラグが心地よく出る。釣りあがる最後の一瞬、激しく抵抗するが見事に釣れた。
 アジだ。
 今回のは前回より小さいぞ?どうするのだろう?
 ヨシさんに聞いてみよう。そう思い、フィッシュグリップで挟んでヨシさんの所に行こうとしたら、またあのトラ猫がやってきた。
 にゃ~ご。にゃ~ご。足にすり寄ってくる。
 小さいから、持って帰らなくても良いだろうと、その場でトラ猫にあげた。
 安定して、小さめのサイズのアジはよく釣れる。
 そのたび、トラ猫はご馳走にありつく。
 腹一杯食べて満足したのだろう。トラ猫は奥の堤防で寝転んでいた。
 猫が来たということは、タヌキも周りに居るだろうと思い、一匹のアジを投げてみた。案の定、タヌキが二匹、アジに向かって走り寄ってくる。
 ……あの傷だらけのタヌキは居なかった。
 まだどこかに隠れて居るのだろうと思い、またアジを投げる。
 しかし、何回かアジを投げたけど、傷だらけのタヌキは見る事が出来なかった。
 死んじゃったのかな?そう思うと悲しい気分になった。
 いやいや、考えて過ぎるな。これも自然の摂理だと思って割り切らなければ……。
 気分転換しなきゃ。
 僕はアジングタックルから、エギングタックルに持ち替えてイカを狙う事にした。
 アジがいっぱい居るんだから、アジを模したカラーで釣れるんじゃないか?そう思い、アジカラーを投げてみる。
 エギングもだいぶ慣れたのかもしれない。 
 リズムよく釣りをする。
 何投目かに、グーっと持って行くアタリがあった!
 よしゃあ!きたっ!!
 ロッドはグーン、グーンと曲がり、ドラグはジー!ジー!ジー!!と出て行く。これはもしや、大物では!?
 そのドラグ音を聞いてか、ヨシさんがタモを用意してくれた。
 慎重にやりとりをして……。大きい!!
 ドキドキと心臓が高鳴る。慎重に寄せて……。
 ヨシさんの入れてくれたタモにイカが……入った!
 よし!やった!!これは自己新記録だろう!!
 暗いテンションから一気にハッピーな気分になる。
 「うぉ~。ヒロ。やったな!良いサイズじゃないか!早速、重さを計ってみよう。」
 ヨシさんは車から、計量器を持ってきて、量ってくれた。
 920g。
 おっしゃ!自己新記録だ!!
 「やったな!ヒロ!」
 「はい。やりました!ありがとうございます!!」
 「俺もエギに変えようかな?」
 ヨシさんはそう言い、自分の釣り場へ戻って行った。
 凄い充実感。コーヒーでも飲んでこの充実感を満喫しよう。
 そう思い、僕は自動販売機までホットコーヒーを買いに向かった。
 自動販売機の明かりが近くなるにつれて、ある一つの影が辺りをうろついているのが分かった。
 何だろう?と近づく。するとそこには、もう死んだのだろう。と思っていた傷だらけのタヌキがウロウロしていた。
 良かった!死んでなかったんだ!!
 僕はコーヒーを買わずに、急いで釣り場まで戻り、アジを一匹釣ることにした。
 こんな時は焦るもんで、なかなかと釣れない。
 早く釣れろ!早く釣れろ!!その願いは空回りして時間だけが過ぎて行く。
 もう、居ないだろう。諦めた瞬間、釣れた。
 人生は何で上手くいかないだろう。そう嘆くけど、まだ居るかもしれない。という希望は、なぜか消えない。
 アジをフィッシュグリップで掴み、自動販売機へ急ぐ。
 周りを見渡すけど、タヌキの姿は見えなかった。
 やっぱりか……。とうなだれ、視線を上げる時に車の下に光る目と目が合った。あのタヌキだ!!居た!!
 僕は少し離れた所にアジを置いた。
 すると、傷のだらけのタヌキは車の下から出てきて、アジをくわえ、どこかへ走り去って行った。
 何か胸のつかえが取れたような感じでス~ッとした。自己満足だと言う事は分かっているけれど、ハッピーにハッピーが重なり、大ハッピーな気分だ。
 今度こそ、ホットコーヒーを三本買って、晴れやかな気分で釣り場へ戻った。
 ヨシさんと島田社長にそれぞれコーヒーを渡す。
 「おう。すまんね。ありがとう。ん?瀬高?なんか、よかことでもあったと??」
 「いえ。たいした事ではないです。」
 僕がそう言うと、島田社長は続けた。
 「傷だらけのタヌキにアジばやれたとね?」
 「え?」
 「ははは。お前は分かりやすかけんね。ちょっと見れば分かるばい。」
 僕はそう言われ、赤面しながら、釣り場へ帰った。
 
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