釣りはじめました

出逢いは突然に、だけど必然に？

出逢いは突然に、だけど必然に？16

　ラーメンというのは色々ある。
　白濁したスープの上には、黒いマー油が掛かっており、チャーシュー、ネギなど乗っかっている。揚げニンニクはセルフで自分好みに出来るようだ。
　美味しそうな匂いがする。
　「「いただきます。」」
　僕は揚げニンニクを入れて、麺から食べる。
　古木さんはまずはスープ派のようだった。
　「……おいしい。見た目ではこってりしてるんだろうな？って思ったんですけど、くどくなく、あっさりしていて美味しいです。」
　「ですね。ここのラーメンはあっさり系ですね。この、ニンニク入れると味が変わって、また美味しいですよ。」
　「そうなんですか？いいな。……でも、この後、お見舞いに行かないといけないですし……。」
　あっ。そうだった。エチケットの問題もあったな。……僕とした事が。
　「ふふふ。気にしなくていいですよ。今度、ご一緒する時は、ニンニク、いっぱい入れちゃいます。」
　僕が気にした事が分かったのか、古木さんは明るく振る舞う。
　いい子だ。やっぱり、いい子だ。
　「熊本のご飯って本当に美味しい物が多いですよね。会社の歓迎会で連れて行ってもらった居酒屋の料理も美味しかったですし、家族で行ったお店も美味しかった。刺身なんかも新鮮で、馬刺の種類もいっぱいあって、みんな美味しかった。もちろん、このラーメンもとても美味しい……。私、こっちに来て良かったと思います。最初の頃は、戸惑っていましたけど。瀬高さんにも出会えましたし……。」
　最後の方は、声が小さくてよく聞こえなかった。でも、古木さんがこっちに来てくれて良かったと僕は思った。
　そして、古木さんは何かを思い出したかのように僕に言った。
　「あっ、そうだ。瀬高さん。良かったら、28日か29日に、釣り納めに行きませんか？」
　まさか、古木さんから誘われると思っていなかった。ん？でも、28、29日は何か予定があったような……。
　ん～。思い出せない。思い出せないないとなると、たいした用事ではないのだろう。
　「ダメですか？」
　古木さんは少し悲しそうに僕にたずねる。
　「いや、大丈夫ですよ。何を狙いに行きますか？」
　僕の返答を聞いて、古木さんは嬉しそうに言う。
　「私、またアオリイカちゃんを釣りたいです。あの、魚とは違う感覚をまた味わいたいです。」
　僕は古木さんと釣り納めに行く事になった。