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武器と商人と傭兵と
狙いと初依頼でした
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【笑い猫】副団長のサリナト。
口調はキツく、【笑い猫】の中でも数少ない女傭兵で鎖と小剣を使い、相手を痛めつける事が好きで団長のダリカとは長い付き合い。酒に目がない。
【笑い猫】幹部の2人、スナーシとマッカルーイ。
【笑い猫】の切り込み隊長と呼ばれている2人組で長剣を使う。が、それだけではなく毒も使う所を他の団員が見ている。他にも汚い仕事を任される事が多くあるという噂。
カルニがカルセルアに伝えた話はそれだけだった。情報と言うにはあまりに乏しく、かつ正確性はたしかになかった。
【笑い猫】の副団長が女だという情報は周知されていたし、身に付けている物が小剣と腕に巻き付けられた重り付きの鎖のようなものだとカルセルアは入手していた。
ただ、スナーシとマッカルーイに関しては全くの情報が出て来ていなかったこともあり、多少は有益だったと言える。
「まぁ、他にもやれそうな連中はいるだろうが、俺が知っているのはこれだけだ。」
「そうか。お前らのことはこっちで話し合って決める。それまでさっきの話の続きでもしてな。」
カルセルアはそう言うと、イムニトとエルドを連れてそこから離れていった。サイファがいる庭の日当たりの良い所に移動するとカルニが改めて仲間達に謝った。
「お前ら、すまねぇ。俺がバカだったばっかりに・・・。クスル、本当に申し訳なかった。」
「いいんだな!昨日も謝ったんだな!俺達はいつも一緒なんだな!」
「もういいでしょう。そうでしょう。」
「そうさ!俺達は4人で1つさ!」
縛られているため、カルニは頭しか下げられず、キミキがもう気にするなと言い、口調が戻ったカルニも同意し、手だけポーズを決めたケケエは明るく振る舞う。
カルニは仲間を見られずにいたが、仲間達の優しさに地面を濡らしてしまった。
「これからどうなるか分からねぇが、4人でもう1度やり直そうや!今度こそ本当に!」
カルニは顔を上げて快活に言った。その様子に3人は自然と笑顔になり、今回の騒動でどうなるか分からなくても何とかなる、そんな前向きな気持ちになったのだった。
カルニ達が明るくしている一方で、エルド達は緊張感が増している雰囲気だった。
「エルドは今回のことどう見てたんだ?」
「そうですね・・・。あまりにも襲撃が早かったので体勢が整う前にどうにかしたかったのかと見ていましたが、話を聞く限り、相手方の団長が焚き付けて、あの4人が逸って行動を起こしたようですね。
ですが、相手の団長はそれも見越していたのかもしれません。つまり、あの4人はただ伝言を頼まれたのでしょう。次はこんなに簡単に済ませられないぞ、という伝言を私達に示すために。だから、あの4人がこちらに襲撃しに来た時点で相手方の目論見は達成されていると思います。」
「へぇ、エルド、あんた中々、頭切れるんじゃないか?大体、同じ考えだよ。だからこそ、面白くないね・・・。」
「面白くないとはどういうことかな?カルセルアさん。」
エルドは今の段階での自分の予想と考えを述べ、それに同意したカルセルアが発した言葉の意味を黙って聞いていたイムニトが疑問を素直に聞いた。
「こっちは襲撃に備えて、四六時中警戒してなきゃならない。だが、向こうは好きな時に好きな場所で旦那達を襲える。」
「それなら、こちらから【笑い猫】の拠点に打って出ればいいのでは?」
「それを可能にする証拠がこちらにないんだよ、旦那。だから、相手の団証があれば楽だったんだ。それにだ、こっちが何の理由もなく街中の【笑い猫】の拠点を襲撃したら、傭兵は首、仮に【笑い猫】の団員を全て処理できたとしても、こっちも相応の被害がでるし、ましてや外聞が非常に悪くなる。そうなると誰も【繋ぎ手】のことを見向きもしなくなるし、下手しなくても領主案件になっちまうよ。」
(方法がないわけじゃないが、今はまだ打つ手じゃないな・・・。)
それにエルドが付け加える。
「領主案件というのは分かりませんが、街中で騒ぎを起こせば衛兵が出て来ます。それを妨げたりすれば、領主の精鋭兵が。それを撃退などすれば、国中から追われるかもしれないでしょう?最悪、そうなれば【繋ぎ手】の皆様は壊滅必至になってしまいます。」
「まぁ、実際はそこまで行かないだろうが、行き着くとこまで行っちまうとそうなるな。」
イムニトは最悪の想定を知ることで、現状、相手に攻め込む意味がないと理解した。
「んで、極めつけが暗殺を出来る奴らが居るってことだ。むこうが暗殺まで視野に入れてるとなると場所すら選ばないことになる。」
カルセルアの言葉で張り詰めた空気に重さが加わってしまう。
が、その雰囲気を意に介さないようにカルセルアが明るく言い放つ。
「悩んでも相手の出方が分かるわけじゃなし、こっちも暗殺がある事を想定して万全の護衛体制にすりゃあ良いだけだ。」
「そうですね、現状、それしか打つ手がないですね。あとはこちらの人員を削られないようにしないといけないことですか。」
「そういうことだな。旦那、そういう方針でいいか?」
「素人の私には分からないから、全てお任せ致します。どうか、家族と商会の皆を・・・。」
そう言うなり、イムニトは再度、腰を折って懇願した。
それを見たエルドは新たに気を引き締め、カルセルアはしっかりと頷いたのだった。
「んで、あの4人はどうすんだ、旦那?」
カルセルアは腕を組んで親指で縄で縛られている塊を指さす。その塊を見て、イムニトは顎を親指で持ち上げるようにして悩んでいた。
「カルセルアさんから見て、あの4人はどう見えました?私にはうだつが上がらないことに焦って道を外したように見えたのだけど?」
イムニトは情報の整理と今後の対応が決まった事で少し落ち着き、口調もいつもの優しいものへと変わった。
それを受けてカルセルアは目を瞑り、先程のやり取りを思い出して所感を述べた。
「そうだなぁ、仲間思いは間違いない。旦那の言った通りだろうと私も思うが、化ける可能性は低いな。傭兵階級D以上には上がれないだろうな。」
「階級がDだと何かいけないのですか?」
「ん?エルドは傭兵になりたてだったな。傭兵はな、階級Cに成れるかどうかでソイツが一端かどうかを判断するんだよ。そして、大抵はDで燻ってる奴が多い。それこそ溢れる程な。」
「なるほど、Cに上がれないと1人前には認めて貰えないと。Cに上がるためには何か必要なことでもあるんですか?」
「あるぞ。どこの傭兵組合でもいいが、そこの組合長と模擬戦なりなんなりして認められるか、一撃お見舞いしてやることだ。んでもって、前提としてヒトを殺せることだな。
まぁ、話はそれたが、アイツらにそれが出来るとは思えない、勘だけどね。ただ、性根は悪くない。そこだけが救いだな。阿呆だが。」
カルセルアは新人傭兵に一人前の階級を教えてやり、あの4人組は一人前にはなれないと感じると、その意見を聞いたイムニトは考えを整理するようにそこら辺を歩き回った。
「よし。彼らは衛兵に突き出しましょうか、傭兵証は預かって。相手方に戻るかもしれないし、仮団員だとはいえ、どこで何されるか分からないからね。」
「旦那は相変わらず優しいねぇ。それでいいなら文句はないよ。どこまでさせるんだい?」
「奉仕活動30日で良いかな。こちらに被害は全くなかったしね。それが終わってもまだ傭兵でいたければ傭兵証を取りに来なさいと伝えて貰えるかな?」
「了解だ。じゃあ、俺が突き出してくる。」
そう言うと、ズカズカと4人組の方へと歩いて行くカルセルアを見送り、エルドはイムニトに尋ねた。
「イムニトさん、私は知らないのですが、襲撃された被害者が罪の重さを決められるのですか?」
「そうだね。この国の方ではやり過ぎでない程度に被害者が罪を決められるんだよ。どれ位の刑が妥当かっていう例はあるよ。ただ、既に被害者が亡くなっている、もしくは殺されている場合は最も重い刑になるけどね。」
この国の刑罰に関して少し知識を得たエルドは、イムニトに傭兵組合に向かうことを告げて、サイファと供にその場から立ち去っていくのだった。
途中、ジーズーの屋台に立ち寄り、それから傭兵組合にやって来たエルド達は掲示板と書かれている板の前にいた。
掲示板には各階級別に仕切りがしてあり、エルドはC~Eまでの内容をざっと見ていく。そこには街の中での力仕事、港での荷下ろしや商品の護衛、ミースロース近辺の魔物狩り、商人の護衛や盗賊討伐の参加等が報酬と期間が長方形の木片に書いてあった。
(さて、今の階級はDだから、Dを見ていけば良いのかな?1日ないし2日で達成できそうな物にしとかないとな。イムニトさんの事もあるし。)
エルドは今の状況を鑑みつつ、どの依頼がいいのか内容を把握していく。
『なぁ、相棒。魔物狩りついでに外にでて軽く身体でも動かさないか?庭でじっとしとくのも鈍りそうだしな。』
依頼を見ているエルドにサイファが肩慣らしを要求して、エルドは頷いて1枚の木片を取った。それを誰も並んでいない受付に持って行く。
「すみません、依頼を受けるにはこの木片をこちらに持ってくれば良かったのでしょうか?」
エルドは受付にいる女性に木片を出しながら、尋ねた。何かの作業中であった女性は顔を上げてエルドを見ると、訝しげな視線を向ける。
数秒後、その女性はエルドの格好と背丈を見て、何か納得したのか訝しげな顔を止めて笑顔を作り、応対する。
「はい、そうですよ。その依頼板と傭兵証をこちらに渡して下さい。依頼を受けるのは初めてですか?」
「はい、登録の時に説明を受けておりません。なので、どうすれば良いのか分からなかったので木片を持ってこちらに参りました。」
なるほど、とその女性は木片を受け取りつつ言った。
それから何かの冊子を取り出してエルドの前に置いた。
「では、わたしから説明しますね。傭兵の依頼受注の制度は簡単です。傭兵階級に応じた依頼しか受けられません。なので、エルドさんはDの物しか受けられません。この冊子は依頼に関する内容が載っているのですが、そこに規則も載っていますのでそちらを見せながら説明しますね。」
フードを被ったエルドに受付嬢は笑顔を作りながら応対した。
・受けられる依頼は対応する傭兵階級のみ。
・失敗した場合は罰金があり、階級が上がるときにその情報も勘案される。
・依頼達成の報酬は階級が上になればなるほど上がる。
・自分では受けられない依頼であってもパーティーや団に所属している場合、参加可能な依頼がある。
・突発的事件や緊急性のある現象の場合、すべての階級の傭兵に参加させることがある。
・傭兵組合を通さずに依頼人と直接交渉して依頼を受けても罰則はないが、騙される事もあるので、その場合は自己責任。
・傭兵を指名した場合、組合職員・傭兵・依頼人の3者で協議する事が義務づけられている。その場合、依頼人が何人であっても傭兵は断る事が可能。
「と、このような規則があります。もし、忘れても受付にて再度確認できるので、いつでも確認して下さいね。では、ミースロース近辺の狼種の討伐ですね。少々お待ち下さい。」
そう言って受付嬢は冊子を下げて、簡略化した地図を出した。
「狼種が生息していると思われるのはこの辺りですね。」
エルドは受付嬢が指で囲んで示した場所を見ると、ミースロースからさほど離れていない林だった。
「この林から平原付近にて、出会うことが多いとの情報があるので参考にして下さい。街からは徒歩であれば1日かかりますし、今から討伐に向かわれるのであれば、野営の準備もしてたほうが無難ですよ。」
「お気遣いありがとうございます。討伐したら、死体を持ってくればよろしいのでしょうか?」
「それでも構いませんし、狼種であれば、牙・爪などの部位でも討伐の印となるのでそちらでも構いません。死体を持ってこられた方が素材としての換金も可能な場合がありますね。」
(まぁ、だいたいの傭兵は殺す事しか考えてないから、素材としてはダメになってるだろうけど。)
受付嬢は無闇に傷つけて持って帰ってくる傭兵が多い事、素材としてどうしようもないのに文句をつけている傭兵の様子を幾度となく見ている。なので、断定した言い方はしなかった。受付嬢の基本として先輩受付嬢から教えられている事だった。
「分かりました。素材として有用な部分があれば、報酬が増えるということでいいのでしょうか?」
「そうですね、有用な部分があれば報酬も増えるかと。ただ、解体費用はかかりますので。では、傭兵証をお返しします。気を付けて下さいね。」
「分かりました。ありがとうございました。」
受付嬢はエルドに再度、笑顔を向け、エルドは受付嬢にお礼を言って頭を下げて、その場を去って行った。
(あの子が通達のあった子か~。礼儀正しい傭兵なんて珍しいからすぐに分かると言われたけど、本当にその通りだったなぁ。無事に帰ってきますように。)
エルドはそんな受付嬢の心配を余所に軽い足取りで傭兵組合を出て、街の入口へと向かっていく。衛兵に滞在証を返して、傭兵組合で教えられた林を目指して走って行った。
「サイファ、とりあえず討伐を終えてからでいいですか?そこまで時間も掛からないでしょう。」
「そうだな、やる事終わらせてから肩慣らししようや。それはそうと早く、この従魔証ってのを外してくれ。鬱陶しいにも程がある。」
「ダメですよ。私だって傭兵証下げているんですから。貴方も従魔証は下げたままですよ。」
「外にいる間は外してくれる約束じゃねぇか!」
「街からまだ近いのでダメですよ、他の方にも見られるかもしれませんし。」
賑やかに話しながらサイファはエルドに要求し、エルドは相棒なのだからと要求を断るということを繰り返していた。
そして、依頼の狼種を必要数の頭部を貫いて仕留め、腕輪に仕舞い。サイファと軽い訓練を平原で行うのだが、突然舞う土煙に、その付近を通った傭兵と冒険者が慌てて逃げたり、腰を抜かしたりしたということを2人は知らない。
その日の夕方。
ミースロースへ戻り、傭兵組合にて依頼を達成し、その綺麗な狼種の死体を見て対応した受付嬢を驚かせることになるのだが、エルドとサイファは冷静なままで報酬を受け取り、イムニト邸へと戻っていった。
口調はキツく、【笑い猫】の中でも数少ない女傭兵で鎖と小剣を使い、相手を痛めつける事が好きで団長のダリカとは長い付き合い。酒に目がない。
【笑い猫】幹部の2人、スナーシとマッカルーイ。
【笑い猫】の切り込み隊長と呼ばれている2人組で長剣を使う。が、それだけではなく毒も使う所を他の団員が見ている。他にも汚い仕事を任される事が多くあるという噂。
カルニがカルセルアに伝えた話はそれだけだった。情報と言うにはあまりに乏しく、かつ正確性はたしかになかった。
【笑い猫】の副団長が女だという情報は周知されていたし、身に付けている物が小剣と腕に巻き付けられた重り付きの鎖のようなものだとカルセルアは入手していた。
ただ、スナーシとマッカルーイに関しては全くの情報が出て来ていなかったこともあり、多少は有益だったと言える。
「まぁ、他にもやれそうな連中はいるだろうが、俺が知っているのはこれだけだ。」
「そうか。お前らのことはこっちで話し合って決める。それまでさっきの話の続きでもしてな。」
カルセルアはそう言うと、イムニトとエルドを連れてそこから離れていった。サイファがいる庭の日当たりの良い所に移動するとカルニが改めて仲間達に謝った。
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「いいんだな!昨日も謝ったんだな!俺達はいつも一緒なんだな!」
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縛られているため、カルニは頭しか下げられず、キミキがもう気にするなと言い、口調が戻ったカルニも同意し、手だけポーズを決めたケケエは明るく振る舞う。
カルニは仲間を見られずにいたが、仲間達の優しさに地面を濡らしてしまった。
「これからどうなるか分からねぇが、4人でもう1度やり直そうや!今度こそ本当に!」
カルニは顔を上げて快活に言った。その様子に3人は自然と笑顔になり、今回の騒動でどうなるか分からなくても何とかなる、そんな前向きな気持ちになったのだった。
カルニ達が明るくしている一方で、エルド達は緊張感が増している雰囲気だった。
「エルドは今回のことどう見てたんだ?」
「そうですね・・・。あまりにも襲撃が早かったので体勢が整う前にどうにかしたかったのかと見ていましたが、話を聞く限り、相手方の団長が焚き付けて、あの4人が逸って行動を起こしたようですね。
ですが、相手の団長はそれも見越していたのかもしれません。つまり、あの4人はただ伝言を頼まれたのでしょう。次はこんなに簡単に済ませられないぞ、という伝言を私達に示すために。だから、あの4人がこちらに襲撃しに来た時点で相手方の目論見は達成されていると思います。」
「へぇ、エルド、あんた中々、頭切れるんじゃないか?大体、同じ考えだよ。だからこそ、面白くないね・・・。」
「面白くないとはどういうことかな?カルセルアさん。」
エルドは今の段階での自分の予想と考えを述べ、それに同意したカルセルアが発した言葉の意味を黙って聞いていたイムニトが疑問を素直に聞いた。
「こっちは襲撃に備えて、四六時中警戒してなきゃならない。だが、向こうは好きな時に好きな場所で旦那達を襲える。」
「それなら、こちらから【笑い猫】の拠点に打って出ればいいのでは?」
「それを可能にする証拠がこちらにないんだよ、旦那。だから、相手の団証があれば楽だったんだ。それにだ、こっちが何の理由もなく街中の【笑い猫】の拠点を襲撃したら、傭兵は首、仮に【笑い猫】の団員を全て処理できたとしても、こっちも相応の被害がでるし、ましてや外聞が非常に悪くなる。そうなると誰も【繋ぎ手】のことを見向きもしなくなるし、下手しなくても領主案件になっちまうよ。」
(方法がないわけじゃないが、今はまだ打つ手じゃないな・・・。)
それにエルドが付け加える。
「領主案件というのは分かりませんが、街中で騒ぎを起こせば衛兵が出て来ます。それを妨げたりすれば、領主の精鋭兵が。それを撃退などすれば、国中から追われるかもしれないでしょう?最悪、そうなれば【繋ぎ手】の皆様は壊滅必至になってしまいます。」
「まぁ、実際はそこまで行かないだろうが、行き着くとこまで行っちまうとそうなるな。」
イムニトは最悪の想定を知ることで、現状、相手に攻め込む意味がないと理解した。
「んで、極めつけが暗殺を出来る奴らが居るってことだ。むこうが暗殺まで視野に入れてるとなると場所すら選ばないことになる。」
カルセルアの言葉で張り詰めた空気に重さが加わってしまう。
が、その雰囲気を意に介さないようにカルセルアが明るく言い放つ。
「悩んでも相手の出方が分かるわけじゃなし、こっちも暗殺がある事を想定して万全の護衛体制にすりゃあ良いだけだ。」
「そうですね、現状、それしか打つ手がないですね。あとはこちらの人員を削られないようにしないといけないことですか。」
「そういうことだな。旦那、そういう方針でいいか?」
「素人の私には分からないから、全てお任せ致します。どうか、家族と商会の皆を・・・。」
そう言うなり、イムニトは再度、腰を折って懇願した。
それを見たエルドは新たに気を引き締め、カルセルアはしっかりと頷いたのだった。
「んで、あの4人はどうすんだ、旦那?」
カルセルアは腕を組んで親指で縄で縛られている塊を指さす。その塊を見て、イムニトは顎を親指で持ち上げるようにして悩んでいた。
「カルセルアさんから見て、あの4人はどう見えました?私にはうだつが上がらないことに焦って道を外したように見えたのだけど?」
イムニトは情報の整理と今後の対応が決まった事で少し落ち着き、口調もいつもの優しいものへと変わった。
それを受けてカルセルアは目を瞑り、先程のやり取りを思い出して所感を述べた。
「そうだなぁ、仲間思いは間違いない。旦那の言った通りだろうと私も思うが、化ける可能性は低いな。傭兵階級D以上には上がれないだろうな。」
「階級がDだと何かいけないのですか?」
「ん?エルドは傭兵になりたてだったな。傭兵はな、階級Cに成れるかどうかでソイツが一端かどうかを判断するんだよ。そして、大抵はDで燻ってる奴が多い。それこそ溢れる程な。」
「なるほど、Cに上がれないと1人前には認めて貰えないと。Cに上がるためには何か必要なことでもあるんですか?」
「あるぞ。どこの傭兵組合でもいいが、そこの組合長と模擬戦なりなんなりして認められるか、一撃お見舞いしてやることだ。んでもって、前提としてヒトを殺せることだな。
まぁ、話はそれたが、アイツらにそれが出来るとは思えない、勘だけどね。ただ、性根は悪くない。そこだけが救いだな。阿呆だが。」
カルセルアは新人傭兵に一人前の階級を教えてやり、あの4人組は一人前にはなれないと感じると、その意見を聞いたイムニトは考えを整理するようにそこら辺を歩き回った。
「よし。彼らは衛兵に突き出しましょうか、傭兵証は預かって。相手方に戻るかもしれないし、仮団員だとはいえ、どこで何されるか分からないからね。」
「旦那は相変わらず優しいねぇ。それでいいなら文句はないよ。どこまでさせるんだい?」
「奉仕活動30日で良いかな。こちらに被害は全くなかったしね。それが終わってもまだ傭兵でいたければ傭兵証を取りに来なさいと伝えて貰えるかな?」
「了解だ。じゃあ、俺が突き出してくる。」
そう言うと、ズカズカと4人組の方へと歩いて行くカルセルアを見送り、エルドはイムニトに尋ねた。
「イムニトさん、私は知らないのですが、襲撃された被害者が罪の重さを決められるのですか?」
「そうだね。この国の方ではやり過ぎでない程度に被害者が罪を決められるんだよ。どれ位の刑が妥当かっていう例はあるよ。ただ、既に被害者が亡くなっている、もしくは殺されている場合は最も重い刑になるけどね。」
この国の刑罰に関して少し知識を得たエルドは、イムニトに傭兵組合に向かうことを告げて、サイファと供にその場から立ち去っていくのだった。
途中、ジーズーの屋台に立ち寄り、それから傭兵組合にやって来たエルド達は掲示板と書かれている板の前にいた。
掲示板には各階級別に仕切りがしてあり、エルドはC~Eまでの内容をざっと見ていく。そこには街の中での力仕事、港での荷下ろしや商品の護衛、ミースロース近辺の魔物狩り、商人の護衛や盗賊討伐の参加等が報酬と期間が長方形の木片に書いてあった。
(さて、今の階級はDだから、Dを見ていけば良いのかな?1日ないし2日で達成できそうな物にしとかないとな。イムニトさんの事もあるし。)
エルドは今の状況を鑑みつつ、どの依頼がいいのか内容を把握していく。
『なぁ、相棒。魔物狩りついでに外にでて軽く身体でも動かさないか?庭でじっとしとくのも鈍りそうだしな。』
依頼を見ているエルドにサイファが肩慣らしを要求して、エルドは頷いて1枚の木片を取った。それを誰も並んでいない受付に持って行く。
「すみません、依頼を受けるにはこの木片をこちらに持ってくれば良かったのでしょうか?」
エルドは受付にいる女性に木片を出しながら、尋ねた。何かの作業中であった女性は顔を上げてエルドを見ると、訝しげな視線を向ける。
数秒後、その女性はエルドの格好と背丈を見て、何か納得したのか訝しげな顔を止めて笑顔を作り、応対する。
「はい、そうですよ。その依頼板と傭兵証をこちらに渡して下さい。依頼を受けるのは初めてですか?」
「はい、登録の時に説明を受けておりません。なので、どうすれば良いのか分からなかったので木片を持ってこちらに参りました。」
なるほど、とその女性は木片を受け取りつつ言った。
それから何かの冊子を取り出してエルドの前に置いた。
「では、わたしから説明しますね。傭兵の依頼受注の制度は簡単です。傭兵階級に応じた依頼しか受けられません。なので、エルドさんはDの物しか受けられません。この冊子は依頼に関する内容が載っているのですが、そこに規則も載っていますのでそちらを見せながら説明しますね。」
フードを被ったエルドに受付嬢は笑顔を作りながら応対した。
・受けられる依頼は対応する傭兵階級のみ。
・失敗した場合は罰金があり、階級が上がるときにその情報も勘案される。
・依頼達成の報酬は階級が上になればなるほど上がる。
・自分では受けられない依頼であってもパーティーや団に所属している場合、参加可能な依頼がある。
・突発的事件や緊急性のある現象の場合、すべての階級の傭兵に参加させることがある。
・傭兵組合を通さずに依頼人と直接交渉して依頼を受けても罰則はないが、騙される事もあるので、その場合は自己責任。
・傭兵を指名した場合、組合職員・傭兵・依頼人の3者で協議する事が義務づけられている。その場合、依頼人が何人であっても傭兵は断る事が可能。
「と、このような規則があります。もし、忘れても受付にて再度確認できるので、いつでも確認して下さいね。では、ミースロース近辺の狼種の討伐ですね。少々お待ち下さい。」
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「この林から平原付近にて、出会うことが多いとの情報があるので参考にして下さい。街からは徒歩であれば1日かかりますし、今から討伐に向かわれるのであれば、野営の準備もしてたほうが無難ですよ。」
「お気遣いありがとうございます。討伐したら、死体を持ってくればよろしいのでしょうか?」
「それでも構いませんし、狼種であれば、牙・爪などの部位でも討伐の印となるのでそちらでも構いません。死体を持ってこられた方が素材としての換金も可能な場合がありますね。」
(まぁ、だいたいの傭兵は殺す事しか考えてないから、素材としてはダメになってるだろうけど。)
受付嬢は無闇に傷つけて持って帰ってくる傭兵が多い事、素材としてどうしようもないのに文句をつけている傭兵の様子を幾度となく見ている。なので、断定した言い方はしなかった。受付嬢の基本として先輩受付嬢から教えられている事だった。
「分かりました。素材として有用な部分があれば、報酬が増えるということでいいのでしょうか?」
「そうですね、有用な部分があれば報酬も増えるかと。ただ、解体費用はかかりますので。では、傭兵証をお返しします。気を付けて下さいね。」
「分かりました。ありがとうございました。」
受付嬢はエルドに再度、笑顔を向け、エルドは受付嬢にお礼を言って頭を下げて、その場を去って行った。
(あの子が通達のあった子か~。礼儀正しい傭兵なんて珍しいからすぐに分かると言われたけど、本当にその通りだったなぁ。無事に帰ってきますように。)
エルドはそんな受付嬢の心配を余所に軽い足取りで傭兵組合を出て、街の入口へと向かっていく。衛兵に滞在証を返して、傭兵組合で教えられた林を目指して走って行った。
「サイファ、とりあえず討伐を終えてからでいいですか?そこまで時間も掛からないでしょう。」
「そうだな、やる事終わらせてから肩慣らししようや。それはそうと早く、この従魔証ってのを外してくれ。鬱陶しいにも程がある。」
「ダメですよ。私だって傭兵証下げているんですから。貴方も従魔証は下げたままですよ。」
「外にいる間は外してくれる約束じゃねぇか!」
「街からまだ近いのでダメですよ、他の方にも見られるかもしれませんし。」
賑やかに話しながらサイファはエルドに要求し、エルドは相棒なのだからと要求を断るということを繰り返していた。
そして、依頼の狼種を必要数の頭部を貫いて仕留め、腕輪に仕舞い。サイファと軽い訓練を平原で行うのだが、突然舞う土煙に、その付近を通った傭兵と冒険者が慌てて逃げたり、腰を抜かしたりしたということを2人は知らない。
その日の夕方。
ミースロースへ戻り、傭兵組合にて依頼を達成し、その綺麗な狼種の死体を見て対応した受付嬢を驚かせることになるのだが、エルドとサイファは冷静なままで報酬を受け取り、イムニト邸へと戻っていった。
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※※※
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表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
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